重曹はお菓子作りや掃除に使われることが多いアイテムです。よく用いられる身近なものですが、どのような物質なのか詳しく知らない方もいるかもしれません。
重曹は、ベーキングパウダーと似たような働きをするため、比較されることもあります。共通する特徴を持ちますが、それぞれ異なる物質のため、違いを理解して適切に使い分けることが望ましいです。
今回は重曹とは何か、特徴や役割、用途を中心に、ベーキングパウダーとの違いも踏まえて詳しく説明します。
重曹とは?
重曹は炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃)のことで、重炭酸塩、ベーキングソーダとも呼ばれます。白い粉末状の弱アルカリ性の物質で、胃に入ると水、塩、二酸化炭素となります。
重曹は、料理用と掃除用に分かれており、精製度が異なります。掃除用の重曹は料理用より精製度が低いため、用途に合わせて選び分ける必要があります。
どちらにも使用できるタイプも販売されていますが、用途に関してはパッケージの表示を必ず確認しましょう。
また、2種類とは別に薬品用の重曹(胃腸薬)もあり、精製度が最も高いです。精製度の違いにより価格にも差があります。一般的には、精製度の高い薬品用が最も高価で、精製度の低い掃除用が最も安価です。
重曹とベーキングパウダーの違い
重曹もベーキングパウダーも、料理に使用されるアイテムです。主にお菓子・パン作りの材料として、ケーキやパンの生地を膨らませるために使われます。
膨張剤としての役割は共通していますが、両者にはさまざまな違いがあります。重曹とベーキングパウダーはどのような点が異なるのか、詳しく見ていきましょう。
成分の違い
ベーキングパウダーは、重曹(炭酸ガスの発生源)に酸性剤や分散剤を加えたものです。
酸性剤とは、分解スピードやガス発生開始温度を調整するためのもので、助剤とも呼ばれます。
具体的には、酒石酸・クエン酸・ミョウバンなどが該当します。分散剤とは、保存中の反応を避けベーキングパウダーの保存性を高めるために配合されたものです。コーンスターチなどが該当し、遮断剤とも呼ばれます。
ベーキングパウダーに使用される酸性剤や分散剤の種類は、製品により異なります。酸性剤の組み合わせ方により、即効性・持続性・遅効性といった異なる種類のものを作り出せます。
ベーキングパウダーの選び方が、パンやお菓子の仕上がりに影響するため、用途により細かく使い分けられます。
性質・特徴の違い
まず、重曹とベーキングパウダーでは、生地に加えたときの膨らみ方が異なります。重曹は横に膨らみ、ベーキングパウダーは縦に膨らむ性質のため、ベーキングパウダーのほうが焼成後のボリュームはより出やすいです。
また、お菓子・パン作りで重曹を加える際に使用量が多いと、特有の苦味やアルカリ臭が気になることがあります。
さらに、焼き色が濃く黄色っぽい仕上がりになるため、重曹で作ったお菓子やパンは色が濃い傾向があります。
このような重曹特有の苦味やにおい、色味におけるデメリットをカバーするために作られたのが、ベーキングパウダーです。ベーキングパウダーは、重曹を改良したものという位置づけと考えると良いでしょう。
重曹は、水と熱を加えることで膨張する性質を持ちます。一方、ベーキングパウダーは少量の水分のみでも反応し、膨張がはじまります。
ベーキングパウダーの場合、加熱前にも炭酸ガスが発生するため、重曹とは異なり早めに焼成する必要がある点に注意が必要です。
用途の違い
前述の性質・特徴の違いから、重曹は色の濃い素朴な和菓子(甘食、どら焼きなど)に、ベーキングパウダーは風味の良い洋菓子(バターを使用したマフィンやケーキなど)に適しています。
なお、ベーキングパウダーは料理にのみ使用されます。一方、重曹は料理だけでなく掃除などにも役立ち、生活の中で幅広く使用される点が大きく異なります。
重曹はベーキングパウダーの代用品として使える?
ベーキングパウダーの代わりに重曹を使うこともできますが、代用の際は注意点があります。
前述のとおり、ベーキングパウダーと重曹では、膨らみ方や仕上がりの色味、においなどが異なります。違いがあることを踏まえて使用しましょう。
また、重曹を代用する場合、ベーキングパウダーとは分量が異なる点に注意が必要です。重曹は、ベーキングパウダーの約1/2量に調整しましょう。成分の違いにより発生する炭酸ガス量が異なるからです。
重曹の代わりにベーキングパウダーを使う場合は、反対に約2倍量にしてください。
重曹の特徴でもあるアルカリ性による苦味を出したくない場合は、中和させることでカバーできます。ヨーグルトやレモンなど、酸性の食材を加えると良いでしょう。
掃除で役立つ重曹の役割と使い方
料理のほか、掃除でも役立つのが重曹のメリットです。重曹は弱アルカリ性のため、酸性の汚れに使うと、中和反応や研磨、鹸化などの作用総合的な働きが起き、汚れを落としやすいという特徴があります。
また、研磨作用があるため、こびり付いた汚れを落とすのにも使えます。主に、以下のような汚れを落としたい場合に適しています。
- ・キッチン(油汚れ・焦げつき・ぬめり・手垢汚れなど)
- ・フローリングの床や壁(皮脂汚れや油汚れなど)
- ・トイレ、浴室(黒ずみ、皮脂汚れや湯垢、水垢汚れなど)
キッチンの換気扇や電子レンジ、コンロの五徳、グリルには、油汚れや焦げつきが残りやすいです。焦げつきには重曹を直接振りかけて擦ると落とせます。シンクや排水口のぬめりを落としたい場合も同様です。
また、電子レンジで重曹水を加熱し、温度が十分に下がったら庫内を布で拭くときれいになります。家電に付着した手垢汚れも、重曹水をスプレーして布で拭き取ると良いでしょう。
重曹を使った電子レンジの掃除方法は、以下もあわせてご覧ください。
「 電子レンジの汚れは重曹(炭酸水素ナトリウム)で落とそう!掃除方法や頻度目安も紹介」
フローリングの床や壁には、食べこぼしによる油汚れや裸足で歩く際に付着する皮脂汚れ、手垢汚れが残りやすいです。これらの汚れも、重曹水をスプレーして布で拭き取るときれいに落とせます。
トイレでは、とくに便器の黒ずみ落としに重曹が効果的です。気になる部分に粉末をかけて擦りましょう。また、浴室の皮脂汚れ、湯垢は重曹水をかけて拭き取ると良いでしょう。鏡に付着した水垢汚れも、研磨作用により落とせます。
また、重曹には補助的な役割で消臭効果も期待できます。粉末状の重曹を容器に入れて冷蔵庫内に置いたり、生ごみに振りかけたりすると、不快なにおいを取り除けます。
重曹を使う際の注意点
重曹は多様な場所やものの掃除に使えますが、素材によっては重曹の使用が適さないケースもあるため注意が必要です。
アルミ製品、漆器、天然繊維、白木などに重曹水を使用すると、変色する場合があります。研磨作用により製品が傷つくこともあるため、これらの素材への使用は避けましょう。
また、肌への刺激は強くありませんが、重曹の継続的な使用で手荒れを起こす可能性があります。そのため、重曹を継続的に使う場合は、ゴム手袋を着用して作業することが望ましいです。
重曹の濃度や保管場所にも注意しましょう。重曹の量が多すぎると掃除後に白い跡が残ってしまうことがあります。重曹水は濃度1%ほどに調整し、掃除後の跡が気になる場合は仕上げに水拭きをすると良いでしょう。
重曹は湿気を吸いやすいため、密封して保存する必要があります。重曹水や重曹ペーストはその都度作り、作り置きは避けてください。
掃除用の重曹はどこに売っている?
重曹は、ドラッグストアやホームセンター、スーパー、100円ショップなど、多様な店舗で購入できるアイテムです。ネットショップでの取り扱いもあり、簡単に入手できます。
前述のとおり、市販の重曹には、料理用、掃除用など用途が限定されているものや、どちらにも使えるものなど、複数の種類があります。用途に合わせたものを選ぶようにしましょう。
重曹は気軽に使用できて値段も手頃なため、自宅に常備しておくと便利です。
重曹を常備して生活に役立てよう
重曹とは炭酸水素ナトリウムのことで、水と混ぜ合わせて加熱すると炭酸ガスが発生する物質です。その特性を生かし、さまざまな用途で利用されます。
膨張剤としての役割はベーキングパウダーと共通ですが、成分や細かい性質に違いがあります。重曹に酸性剤や分散剤を加えたものがベーキングパウダーで、焼き菓子やパンの風味や色に影響が出やすい重曹の改良品として作られた膨張剤です。
重曹をベーキングパウダーの代用品とする場合は、使用量を約半量に調整する必要があります。性質の違いを踏まえて代用しましょう。
また、重曹は料理だけでなく、掃除にも使えて便利なアイテムです。とくに、酸性の汚れ落としに効果的で、油汚れや焦げつきなどを除去したい場合に役立ちます。粉末のまま、水と混ぜ合わせるなど、落としたい汚れに合わせて使い分けると良いでしょう。
体にも環境にもやさしく多様な使い方ができる重曹は、自宅に常備するのがおすすめです。身近な店舗やネットショップでも気軽に購入できますので、ぜひ活用して生活に役立てましょう。