インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変異しながら、私たち人間に感染しています。ウイルスが変異する理由はさまざまな要因が考えられますが、毎年流行するインフルエンザを予防することは可能です。
今回は「インフルエンザウイルスが変異する理由」や「インフルエンザの種類」「予防方法」について詳しく紹介します。インフルエンザの感染を防ぎたい方は、ぜひ参考にしてください。
インフルエンザウイルスは毎年変異する
インフルエンザウイルスは、毎年小さい変異を繰り返しています。インフルエンザはほかのウイルスと比較すると変異が早いといった特徴があります。そのため、今後も病原性が変化するかどうかなどを踏まえて厚生労働省が流行状況を把握する「サーベイランス体制」を構築しているようです。
通常、インフルエンザはウイルスに感染したり、予防接種を受けたりするとインフルエンザウイルスに対する免疫力がつきます。
しかし、人によってはウイルス変異に追いつかず、毎年のようにインフルエンザに感染する場合があります。感染経験がある方やワクチンを打っている方もウイルスに感染する可能性があるので注意しましょう。
インフルエンザウイルスが変異する理由
インフルエンザウイルスは、もともと渡り鳥の腸内で増殖するウイルスだったと考えられています。
渡り鳥から豚やアヒルなどの家畜にウイルス感染が広がったことで、人間にも感染するウイルスへと変異したと言われています。
ウイルスが変異する理由の1つとして、ウイルスが生存するために自らが宿主を変えながら変異を繰り返しているといった説があります。そのため、毎年インフルエンザに感染する傾向にある方は、変異したウイルスに免疫力が追い付いていない可能性が考えられます。
一般的に突然変異を起こしたインフルエンザウイルスを「新型インフルエンザ」と呼び、鳥インフルエンザに感染しただけでは、新型インフルエンザとは呼びません。
人に感染するインフルエンザウイルスの型は主に3種類
人間に感染するインフルエンザは、大きく分けてA型、B型、C型の3種類があります。
種類 | 特徴 |
---|---|
A型 | ・A型インフルエンザは144種 ・哺乳類にも感染するため、ウイルス変異が起こりやすい ・ほかの型と比べて、高熱の症状が出やすい |
B型 | ・B型インフルエンザは山形型とビクトリア型の2つ ・感染症状はA型ほぼ同じ |
C型 | ・C型インフルエンザはヒトにのみ感染する ・1度感染すると免疫ができるため、再感染はないと考えられている |
一般的に流行するのはA型インフルエンザとB型インフルエンザです。どちらも世界中で流行するウイルスで、冬場に大流行する傾向にあります。
38度以上の高熱や関節痛、全身の倦怠感や頭痛などが主なインフルエンザの症状なので、感染が疑われる方は早めに医療機関を受診しましょう。
毎年流行するインフルエンザを予防する方法
インフルエンザに感染しないためには、日頃からきちんと予防することが大切です。インフルエンザウイルスの感染予防方法を詳しく紹介します。
予防接種を毎年受ける
インフルエンザワクチンは、ある程度の感染を防ぐ効果に期待ができるほか、ウイルスに感染しても重症化を防ぐ効果に期待ができます。
高齢者や基礎疾患をお持ちの方はインフルエンザに感染すると重症化する可能性があるため、リスクを軽減するためにも毎年予防接種を受けることが大切です。
予防接種はインフルエンザが流行のピークを迎える前に行いましょう。予防接種を受ける時期は10~11月頃が目安です。
年齢や医学的な理由によりワクチンを2回打つのが望ましい方もいるので、インフルエンザが流行する前に予防接種のスケジュールを組んでおくと安心です。
こまめに手洗いや手指の消毒をする
インフルエンザの感染経路は、接触感染が多い傾向にあります。接触感染とは、ウイルス感染者が触れた手すりやドアノブなどのモノを介した感染経路です。
インフルエンザ感染者が咳やくしゃみを手で押さえた場合、手にはたくさんのウイルスが付着しています。
そのまま手を洗ったり消毒したりしないままモノに触れると、ウイルスが付着してしまいます。
インフルエンザの非感染者がモノに付着したウイルスに触れ、そのまま食べ物を口にしたり目を擦ったりするとウイルスに感染する可能性があります。
インフルエンザを予防するためにも、外出後はきちんと手洗いや手指消毒を行いましょう。外出先でもこまめに手洗いや手指消毒を行い、感染予防に努めてください。
人混みを避ける
インフルエンザの流行時期は、極力外出を控えるなどして感染を予防することも大切です。インフルエンザは飛沫感染する可能性もあるため、人混みやたくさんの人が集まるイベントへの参加を控えるなどしながら予防しましょう。
飛沫感染はインフルエンザ感染者の咳やくしゃみなどの飛沫を介した感染経路です。人が多い場所では飛沫感染のリスクも高まるため、ウイルス感染が心配な方は外出を控えるようにしてください。
生活用品の買い出しなど、必要不可欠な外出時は外出先でこまめに手洗いや手指消毒を行うと良いです。
最近では、携帯用の手指消毒グッズも多数販売されているため、上手に活用しながら感染対策をしましょう。
栄養バランスのとれた食事を心がける
インフルエンザに感染しないためにも、免疫力を高める食生活を心がけましょう。たとえば、全粒穀物やカテキンは免疫力をアップさせる効果に期待ができるため積極的に食事に摂り入れると良いです。
普段から食事のお供に緑茶をプラスするなどしながら、免疫力をアップさせる食生活を意識してください。
また、乳酸菌も粘膜免疫を高める効果に期待ができるため、ヨーグルトやキムチなどの発酵食品も食事にプラスしてみると良いでしょう。
特定の食材や料理を繰り返し食べるのではなく、バランスの良い食事を心掛けることが大切です。ウイルス感染を防ぐためにも、この機会にぜひ食生活の見直しをしてみてください。
室内の加湿や換気を行う
インフルエンザウイルスは室内で増殖する可能性があります。ウイルス感染を防ぐためにも、こまめに換気を行いましょう。
また、空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザに感染しやすくなります。空気を乾燥させないためにも、普段から室内の湿度をチェックしましょう。
室内の湿度は50~60%が理想です。加湿器や部屋に濡らしたタオルを干すなどしながら適度な湿度を保ってください。
インフルエンザはウイルスの種類に限らず予防をすることが大切
インフルエンザウイルスは変異を繰り返しているため、過去に感染の経験があったり予防接種を受けたりしていてもインフルエンザに感染する可能性はあります。
感染対策は予防接種だけに頼らず、こまめに手洗いや手指消毒を行ったり、室内の換気や加湿を行ったりしながらウイルス感染を防ぎましょう。
インフルエンザの流行時期はなるべく外出を控え、普段の食生活を見直しながら感染予防を行うことも大切です。インフルエンザの感染が心配な方は、紹介した予防方法を参考に感染対策を行ってください。
インフルエンザウイルスは変異を繰り返しています。過去にインフルエンザ感染の既往があっても、またワクチン接種をしていても感染する可能性があります。そのため、感染予防がとても大切です。
監修者
医師:佐藤留美
内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。
久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。