Vol. 25
帯状疱疹
帯状疱疹は体の皮膚の一部に水疱と発赤がみられ、疼痛を伴う感染症です。これは過去に水痘に罹患した人において、ウイルスが知覚神経の神経節のなかに長期間眠っていて、抵抗力が低下したり、ストレスがかかってきたりしたときに、目を覚まして帯状疱疹となるのです。
若い人が帯状疱疹になることもありますが、年齢とともに帯状疱疹に罹患することが多くなり、50歳以降では急増します。増加するのは帯状疱疹の頻度のみではなく、神経痛がみられたり、日常生活の活動性が低下する頻度も高くなります。一般人の約15~30%が生涯に帯状疱疹を経験しますが、この割合は平均余命の増加に従って増えてゆくと推測されます。
帯状疱疹に罹患するのを防ぐために、また、神経痛で苦しむのを避けるために、米国では帯状疱疹ワクチンが利用されています。このワクチンは水痘ワクチンと同じウイルスを用いて製造されていますが、ウイルス量が異なっています。帯状疱疹ワクチンは水痘ワクチンの14倍のウイルス量で作成されていて、米国では60歳以上の成人は帯状疱疹ワクチンを接種するように推奨されています。ただ、このワクチンの効果は永続性があるのではなく、最初の5年で減少し、5年以降の効果は明確ではありません。それでも帯状疱疹ワクチンを接種したい人はどうしたらよいのでしょうか?米国から輸入するのでしょうか?実は、日本の水痘ワクチンには帯状疱疹ワクチンの基準を超えるウイルスが入っています。そのため、理論的には水痘ワクチンを帯状疱疹ワクチンとして利用できるかもしれません。
既に述べたように、帯状疱疹は高齢者での頻度が高くなるのですが、水痘のように空気感染することも知っていただきたいと思います。帯状疱疹の水疱部分には高濃度のウイルスが含まれており、その部分を引っ掻いたりしたときに、空気中に浮遊してくるのです。そのため、帯状疱疹に罹患した人が滞在している部屋の空気にはウイルスが浮かんでいる可能性があるのです。そこへ入室すると、空気中のウイルスを吸いこむことになるので、水痘への免疫を持っていない人や抵抗力の低下している人は水痘に罹患する可能性があるのです。水痘と帯状疱疹の感染力を比較すると水痘の方が感染力が強いといえます。それでも、抗がん治療をして抵抗力が低下している人は帯状疱疹に罹患した人には接触しないようにしましょう。感染すると重篤な感染症となり、死亡することがあるからです。