Vol. 21

レプトスピラ症

夏になると、多くの人々が夏休みを取って海外に行きます。そして、自然を満喫し、異国を十分に楽しんでから帰国します。ただ、汚れた河川で泳いだり、素足で歩いたりすることは避けてほしいと思います。レプトスピラ症が心配だからです。レプトスピラ症はブラジルなどの中南米、フィリピンやタイなどの東南アジアなど、熱帯や亜熱帯の国々で発生している感染症です。特に、東南アジアで7~10月頃の雨期から収穫期にレプトスピラ症が多くみられることが知られています。レプトスピラ症は海外から日本に持ち込まれる輸入感染症として認識されていますが、日本でもレプトスピラ症が発生しているので注意が必要です。台風のあとの濁った湖でのトライアスロンによって感染したという報告があるのです。

レプトスピラ症はレプトスピラという病原体によって引き起こされる感染症で、人獣共通感染症(人間のみならず動物でも発症する感染症)です。レプトスピラはドブネズミなどの腎臓に感染し、尿中に排出されます。その尿で汚染された水や土壌からレプトスピラが人間の口から入り込んだり、皮膚を通過して体内に侵入するのです。

レプトスピラ症の症状は様々です。感冒様症状のみのこともありますが、黄疸、出血、腎障害を伴って重症になることもあります。潜伏期間は5~14日であり、発熱、悪寒、頭痛、筋痛、腹痛、結膜充血などで発症します。その後、4~6日程度が経過すると黄疸や出血傾向がみられます。レプトスピラ症を診断することはかなり困難ですが、動物の尿に汚染された水に接触したとか、流行地域へ旅行したなどの情報があると診断しやすくなります。

自然のなかでのレジャーを楽しんでいる人は数多く、ゴムボートで急流を下るラフティングなどを好んでいる人もいます。しかし、台風のあとなどの濁流や湖に入り込むのは避けてほしいと思います。世界三大瀑布であるブラジルのイグアスの滝は茶褐色の大量の水が大地を切り裂くようになだれ落ちています。その直下近くまでモーターボートにのってゆくツアーがあり、観光客は全身が水浸しになっています。このようなところでもレプトスピラが気になります。

レプトスピラ症の流行地域では不用意に水に入らないこと、特に台風やサイクロンのあとには河川に絶対に入らないことが予防には重要です。万が一、濁った河川に入ったり、レプトスピラ症の流行地域に旅行に行ったあとに、発熱や悪寒などがみられたら医療機関に受診してください。そのときには、渡航歴や河川レジャーなどについて担当医に伝えるようにしましょう。