Vol. 04
園芸と破傷風
破傷風という感染症があるということは、どなたもご存じのことと思います。また、破傷風が極めて重篤な感染症であることも知られています。しかし、破傷風に対する予防について、多くの方々が不十分な状況であることは殆ど知られていません。
まず、破傷風がどのような感染症かについて説明したいと思います。これは破傷風菌という細菌が産生する強力な毒素によって発症します。潜伏期間は3 ~21 日です。病気の進行によって、第1期から第4期があります。第1期は口が開かなくなります。第2期は破傷風顔貌となります。これは前額に「しわ」がみられ、唇は横に拡がって少し開いて歯を露出し、苦笑するような痙笑となります。第3期になると、頸部から背部が硬くなり、全身に発作的に痙攣がみられるようになります。殆どの場合、呼吸ができなくなり、人工呼吸器に何週間もつながれることになります。第4期で、諸症状は次第に軽快してきます。破傷風に罹患した人が死亡する確率は20 ~50%といわれています。
破傷風菌は土壌に潜んでいて、怪我をしたり、園芸や農作業などで土に触れているときに創部から体内に侵入します。怪我をしていなくても、古い釘を運んだだけで破傷風に罹患した人もいます。このような破傷風を防ぐためには破傷風トキソイドというワクチンを接種しておくことが大切です。しかし、1968年以前に生まれた方々の殆どは接種がされていません。そのため、破傷風に罹患する危険性があるのです。
破傷風菌は小さな傷から、体内に侵入することがあるので、園芸のように土に頻回に接触している人は是非とも破傷風トキソイドを接種していただきたいと思います。生まれて初めて接種する方は3回の接種が必要です。この場合、1回接種し、その1か月後と6カ月以降に接種します。それ以降は10年毎に1回接種していきます。1968年以降に生まれた方であっても、過去10年間に接種されていなければ、1回接種します。そして、10年毎に1回接種していくのです。
怪我をしてから接種すればよいのではと思う方もいるかもしれません。しかし、1968年以前に生まれた方々では3回接種してから免疫を獲得できるので、怪我をしたときに1回接種したからといって破傷風から身を守れないのです。怪我をしてからではなく、怪我をする前から接種することが大切なのです。
園芸や農作業をするならば、破傷風トキソイドを接種してからにしましょう。また、登山や釣りなどのレジャーを楽しむなら、接種することをお勧めします。