Vol. 02

石鹸

手洗いすることは感染を予防するために大変重要なことです。そして、適切な手洗いをするためには、石鹸が必要です。水道水だけで手洗いしても、かなりの汚れが手指に残ってしまうからです。

石鹸には液体石鹸と固形石鹸があります。液体石鹸はボトルに入った状態で販売されていますが、詰め替え用の液体石鹸も同時に売られているので、ボトルが空になったときに詰め替えることができます。そうすれば、ボトルを毎回廃棄することがなくなるので、ゴミを減らすことができます。しかし、このような詰め替えでは大切なことがあります。それは、空になったボトルにそのまま液体石鹸を注ぎ込むのではなくて、詰め替えの前にはボトル内部を水洗いして、乾燥させる必要があることです。

ボトルの水洗いと乾燥をせずに詰め替えしつづけてゆくと、ボトルの中に水分が溜まってきます。そのような状況では、緑膿菌のような細菌が増殖するのです。緑膿菌は栄養要求性が低い細菌なので、栄養分が不十分な環境であっても、水分があれば増殖できます。緑膿菌は抗菌薬に耐性であり、抵抗力のない人々が感染すれば、重篤な感染症を引き起こすことがあります。詰め替える前に、ボトルの中を水洗いして、汚れや細菌を洗い流し、そして、乾燥することによって殺菌するのです。緑膿菌は乾燥に弱い細菌だからです。

お風呂場のシャンプーも同様です。そのまま詰め替えをつづけてゆくと、ボトルのなかに緑膿菌が繫殖します。そのようなシャンプーを使用している方々は毎日、緑膿菌で頭を洗っていることになります。一般の健康な方々が緑膿菌を含んだ液体石鹸やシャンプーで体や髪の毛を洗っても何もおこりません。しかし、抗がん剤治療をしているとか、手術をして間もない方々がそのようなものを利用することは是非とも避けたいものです。

それでは固形石鹸はどうなのでしょうか? 固形石鹸の場合には「石鹸ケースや石鹸台」が問題となります。ここが濡れたままですと、やはり緑膿菌に繁殖の場を与えてしまいます。そのため、常に乾燥させることが適切です。可能であれば、大きな石鹸をそのまま利用するのでなく、石鹸を何分割かに切り分けておいて、小さな石鹸として使用するのが望ましいと思います。そして、石鹸が汚れたり、表面がヌルヌルしてきた場合には廃棄して、別の小さな石鹸を用いるのです。

手洗いは感染を予防するためにとても大切なことですが、病原体で汚染している石鹸を使用するのでは、何のための手洗いかわからなくなってしまいます。やはり、清潔に管理した石鹸やシャンプーを用いて、身体の清潔を保つことが大切なのです。