【医師監修】インフルエンザの予防接種は筋肉注射?皮下注射?それぞれの違いも解説あり
2022.11.28| 感染症・消毒
予防接種は、感染の流行時期前にあらかじめワクチンを体内に接種することで、感染に備えるものです。基本的には注射で行いますが、その接種方法は数種類に分類されており、それぞれの病原ウイルスにより注射部位が異なることもあります。
今回は予防接種を受ける前の予備知識として、インフルエンザの予防接種について詳しく紹介していきます。
インフルエンザの予防接種は、基本的に皮下注射
予防接種の注射には、皮下注射、筋肉注射、皮内注射、静脈注射、動脈注射などがあります。日本で主に行われているのは、【筋肉注射】および【皮下注射】です。
インフルエンザワクチンの場合は、上腕部の皮膚をつまみ上げた場所に注射を行う【皮下注射】が基本です。皮下注射は、筋肉注射と比較すると接種効果などが穏やかであると言われています。
筋肉注射と皮下注射の特徴
筋肉注射と皮下注射は、実際にどのように使い分けられており、それぞれどのような特徴があるのかについて、下記で解説していきます。
筋肉注射
名前のとおり筋肉内に注射を行います。筋肉にはたくさんの血管が通っているため、接種されたワクチンの吸収が速いという特徴があります。
基本的に筋肉の大きい場所へ接種することが多いため、上腕部や、小さい子供の場合は太ももに接種します。筋肉まで針を届かせるため、皮膚に対して90°の角度で注射します。筋肉には多くの神経も通っていますので、痛みを強く感じることもありますが、他の注射方法に比べ局所部位への痛みや腫れが少ない傾向にあるとも言われています。
皮下注射
皮下注射は、皮膚と皮下組織をつまみ上げて皮膚に対して約45°の角度で注射します。皮膚の下にある脂肪の層に注射するため、打った箇所にワクチンがしばらくとどまってくれます。ゆっくりと吸収されるため、体内でおだやかに効果を示すように働いてくれます。
このような理由からか、日本の予防接種の多くが皮下注射で行われている現状があります。注射した箇所が腫れやすい、痛みが出やすい傾向にあるということは、接種前に知っておくと良いかもしれません。
インフルエンザの予防接種が皮下注射で行われる理由
インフルエンザワクチンは病原性のあるインフルエンザウイルスを不活化した“不活化ワクチン”を体内に接種することで、体内に免疫力(抗体)を獲得します。
米国などでは、インフルエンザワクチンは筋肉注射にて行われています。その理由として、米国では不活化ワクチンの接種は基本的に筋肉内への接種として規定がされているためです。
一方日本では、昭和23年に公布された予防接種法により、皮下注射で実施することが決められています。それぞれの国において、安全性・有効性などのデータから総合的に判断し、最適な接種方法が選択されているものと考えられます。
インフルエンザの予防接種後に腫れやすいのは、なぜ?
注射した箇所にワクチンがしばらくとどまるので、接種した局所が腫れたり、痛みが出たりすることがあります。
また、ワクチンに過剰に反応してしまう体質の方、卵アレルギーの方は特に腫れやすい傾向にあるといわれています。通常2~3日中に消失することが多いとされており、極端に激しい発赤やかゆみがなければ経過観察にて対応します。場合によっては、抗炎症薬を使用することもあります。
インフルエンザワクチン接種後に腫れた場合の対処法
もし予防接種後に腫れたり、痛みが出たりした場合の対処法を以下で紹介します。腫れがひどい場合や痛みが引かない場合は、医療機関を受診するようにしてください。
腫れた患部を冷やす
患部が熱を持っていることが多いので、冷やしたタオルや保冷剤などをタオルで巻いて患部を冷やしてください。かゆみを伴う場合もありますが、引っ掻いたり硬くなった患部をもみほぐしたりはしないでください。小さいお子様の場合は特に注意が必要です。
インフルエンザの予防接種は、筋肉注射ではなく皮下注射!
現在、予防接種の多くが注射によるものです。注射と聞くとどうしても不安になってしまう事はありますが、事前にしっかりと調べることでその不安も軽減できるものではないでしょうか。
予防接種は自身が感染しないため以外にも、免疫力の低い周りの方へうつしてしまわないようにするという集団予防の考えに基づいたものです。まれに体質やその時の体調により、副反応が現われてしまうケースもありますが、万が一症状が現れた際の対処法を確認しておき、感染シーズン前には接種を心掛けるようにしましょう。
監修者
医師:工藤孝文
内科医・糖尿病内科・統合医療医・漢方医。
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。
現在は、自身のクリニック:みやま市工藤内科で地域医療に力を注いでいる
専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など多岐にわたる。
テレビ・ラジオなどのメディアでは、ジャンルを問わず様々な医療の最新情報を発信している。
NHK「ガッテン!」では、2018年度の最高視聴率を獲得した。
著書は15万部突破のベストセラー「やせる出汁」をはじめ、50冊以上に及ぶ。
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
工藤医師よりコメント
予防接種による腫れや痛みなどの副反応は誰にでも起こる可能性があります。上記の対処法を正しく実践して、それでも症状が治まらない場合は、接種してもらった医療機関に早めに相談して下さい。