【医師監修】インフルエンザ予防のため免疫力を上げるには?具体的な方法を解説します
2022.11.28| 感染症・消毒
インフルエンザはインフルエンザウイルスによって感染しますが、インフルエンザウイルスが体内に入ったからといって必ずしもインフルエンザに感染するわけではありません。
インフルエンザに感染するかどうかは、免疫力によっても左右されます。免疫力が高いとインフルエンザウイルスが体内に侵入しにくくなるだけでなく、体内に侵入しても感染しにくくなります。
では、免疫力はどのようにつけることができるのでしょうか。免疫力を高める5つの方法について詳しく見ていきましょう。
免疫力を上げるとインフルエンザに感染しない?
免疫には、身体にウイルスや細菌を侵入させない働きと、侵入したウイルスなどと戦う働きがあります。もちろん、免疫によってウイルスなどが絶対に体に侵入しない、ウイルス感染しないということはありませんが、免疫力が高ければ、インフルエンザなどのウイルスが侵入しにくく、侵入しても感染しにくくなります。
●免疫の仕組み
目や鼻、気管支、腸管などの粘膜には「粘膜免疫」があります。粘膜免疫は免疫機能の第一段階で、病原体が体内に侵入することを防ぐ働きを担います。例えば、インフルエンザウイルスが粘膜に付着すると、粘膜免疫がウイルスを体外に排出しようとします。
病原体が粘膜免疫をすり抜けて体内に侵入した場合には、全身免疫が働きます。全身免疫は病原体が増殖する前に捕えて排除しようとするため、例えばインフルエンザウイルスが体内に入ったとしても、インフルエンザには感染しにくくなります。
インフルエンザの予防のために!免疫力アップの5つの方法
インフルエンザを予防するためにも、免疫力アップを目指しましょう。ここからは、免疫力を高める5つの方法を紹介します。
●免疫力アップに良い食べ物を意識的に食べる
食べ物の中には、免疫力アップによいと言われているものがあります。栄養バランスの取れた食事をすることも意識しながら、そういった食べ物も積極的に取り入れるようにしましょう。
例えば、全粒穀物やカテキンが含まれる食べ物は免疫力を高めるとの研究報告があります。精製された小麦でできているパンではなく全粒穀物のパンを選ぶ、ほうじ茶も良いけれど緑茶も飲むなど、普段の生活で無理なく取り入れていけるでしょう。
また、ビタミンAやビタミンC、食物繊維も免疫力を高める効果があると言われています。ビタミンたっぷりのフルーツや食物繊維の多い野菜を摂ることで、栄養バランスが良くなるだけでなく、免疫力アップも期待できるでしょう。
そのほかにも、乳酸菌には粘膜免疫を高める働きがあるという研究報告もあります。乳酸菌が含まれるヨーグルトやキムチなどを食べる習慣をつけてみてはいかがでしょうか。
●睡眠時間を確保する
睡眠時間を確保することも大切です。しっかりと休養を取ることは免疫力を高めることにつながるので、睡眠をおろそかにしないようにしましょう。
ところで、睡眠時間さえ確保すれば、身体が休まり、免疫力がアップするのではありません。免疫力を高め、インフルエンザにかかりにくくするためには、良質な睡眠をとることが必要になります。
例えばベッドに横になっても30分以上寝付けないのでは、しっかりと眠れたと感じにくいでしょう。また、夜中に何度も目が覚める場合や、居眠りや昼寝など細切れの睡眠が多く、まとまった眠りが短い場合も、しっかりと眠れたと感じにくくなります。
すっと眠りに入ってすっきりとした目覚めを得るためにも、眠る前にテレビやスマートフォンなどの強い光を発するものを見ないようにしましょう。また、朝起きたら窓を開けて太陽の光を浴びることなども意識してみましょう。
●適度に運動する
毎日運動することでも、免疫力を高める効果を期待できます。ただし、激しすぎる運動は免疫力を落とすことになるので、汗をかく程度の軽めの運動がおすすめです。
どの程度の運動が適切か分かりにくいときは、「運動をしながら楽しく会話ができること」を目安にすると良いかもしれません。運動がつらいと感じるときや、息が上がって会話を楽しむ余裕がないときは、運動の強度が高すぎると考えられます。
また、心拍数を測ることでも、適度な運動の目安を知ることができます。(220-年齢)×0.6または0.7の数字を心拍数の目安にすれば、運動の強度が高くなり過ぎたり、反対に低すぎたりすることを防げるでしょう。例えば65歳の方なら、心拍数が93~109程度になるように運動を調整してみましょう。
●ストレスを溜めないように楽観的に生きる
研究により、ストレスによってさまざまな病気になりやすくなることが分かっています。日頃から、ストレスを溜めないように楽観的に物事を考えるようにしましょう。また、笑いも免疫力を高める効果を期待できます。インフルエンザの予防のためにも、楽しく生活するようにしましょう。
●身体を温める
低体温の状態では免疫細胞の働きが低下します。お腹周りや腰回りなどの冷えが気になる部分は、湯たんぽを使用したり、マッサージをしたりして温めるようにしましょう。
また、最近はシャワーだけで済ませる方も増えていますが、身体をしっかりと温めるには入浴が欠かせません。適度な温度のお湯にゆっくりと浸かり、身体を温めましょう。入浴によって気持ちがほぐれ、ストレス解消も期待できます。
免疫力を上げる以外のインフルエンザ予防
免疫力を上げること以外にも、インフルエンザの予防対策があります。インフルエンザが流行っているときはもちろんのこと、年中意識したい予防対策を2つ紹介します。
●手洗いとうがい、マスクの着用
インフルエンザに感染している人の咳やくしゃみ、鼻水にはインフルエンザウイルスが含まれていることがあります。例えばインフルエンザ感染者がくしゃみを押さえた手でドアノブを触ると、次にドアノブを触った人の手にインフルエンザウイルスが付着するかもしれません。その手で食べ物を食べると、インフルエンザウイルスは体内に侵入してしまうでしょう。
どこでどんな人がどのような行動をしたのか予想することは難しいため、外出から帰ったらすぐに手洗いとうがいをして、手などについた可能性のあるインフルエンザウイルスをしっかりと落としましょう。
また、外出するときにマスクをすることも、インフルエンザの予防対策になります。くしゃみや咳は場合によっては5m以上飛ぶこともあるため、近くにインフルエンザ感染者がいないときもマスクを着用し、十分に用心する必要があります。
●加湿と換気
湿度が低いときは、気道粘膜の免疫効果が低下します。免疫効果を正常に作用させるためには50~60%程度の湿度が必要なため、加湿器などで室内の湿度を適切に維持するようにしましょう。
また、インフルエンザウイルスは空気中にも浮遊しています。室内のインフルエンザウイルスを外に出すためにも、こまめに換気をするようにしましょう。
免疫力を上げてインフルエンザを予防しよう
免疫力を上げることは、インフルエンザの予防につながります。また、インフルエンザウイルスだけでなく、そのほかの感染症の予防効果も期待できるでしょう。
ただし、免疫力は一朝一夕には向上しません。免疫力向上によいと言われている食事をすることや良質な睡眠をとること、適度な運動をすること、ストレスを溜めない生活を心掛けること、身体を冷やさないようにすることのいずれも、インフルエンザのシーズンだけでなく普段から心掛けるようにしましょう。
監修者
医師:中島由美
金沢医科大学医学部を卒業後、大学病院で小児科、市中病院で内科医として勤務。皮膚科、美容皮膚科でも研鑽を積み、2018年クリスタル医科歯科クリニックにて内科、アレルギー科、美容皮膚科を開設。内科院長として勤務。
中島医師よりコメント
インフルエンザウイルスに感染しないためには、普段から自分の免疫を高めておくことがとても大切です。食事、睡眠、適度な運動、ストレスをためないことなど日常生活で気をつける他、ビタミンCやビタミンDなどのサプリメントも取り入れるとより効果的です。