【医師監修】インフルエンザ対策を始めよう! 5つの具体策と症状を見分けるポイント
2022.11.28| 感染症・消毒
インフルエンザは毎年流行するウイルス性の気道感染症です。症状は一般的な風邪に似ていますが、重くなりやすい病気のため多くの方が感染への不安を抱いています。
インフルエンザにかからないためにも、流行時期はきちんと対策をとることが大切です。そこで今回は、「インフルエンザの対策法」を紹介します。
後半ではインフルエンザの主な症状についても詳しく解説しますので、ウイルスに感染したかどうか悩む際は、A型やB型の主な症状を参考にしてください。
インフルエンザが流行る時期はいつ?
インフルエンザは例年11月下旬~12月上旬に感染者数が増え始め、翌年1~2月頃にピークを迎えて4~5月頃に減少していきます。
冬~春にかけて乾燥しやすい時期に流行するので、インフルエンザ対策も冬~春の長期間おこなう必要があります。
インフルエンザ感染を防ぐための対策5つ
インフルエンザの予防につながり、簡単に実施できる5つの対策を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
流行する前にワクチンを接種する
インフルエンザのワクチンを接種することで、次の2つの効果が期待できます。
発症する可能性を低減させる
発症した場合、重症化を防止する
インフルエンザのワクチンを接種しても、インフルエンザに感染しないようにすることはできません。しかし、接種することで、感染したとしても発症を抑えたり、感染・発症したとしても重症化を防止したりする効果が期待できます。
特に、高齢の方や基礎疾患のある方はインフルエンザにかかると重症化するリスクが高いとされています。重症化を予防するためにも、インフルエンザが流行する前にワクチンを接種することが望ましいでしょう。
人ごみを避ける
インフルエンザを予防するためには、インフルエンザウイルスに感染しないようにすることが大切です。インフルエンザウイルスは咳やくしゃみによる飛沫感染で広がっていくので、不特定多数の人がいる繁華街やイベント、席が近い飲食店などの人ごみを避けることである程度は感染を予防できます。
特に高齢の方や基礎疾患のある方、また、妊婦や体調が優れない方も重症化を避けるために、混雑する場所への外出は控えてください。
手洗い・アルコール手指消毒を習慣化する
インフルエンザウイルスは飛沫感染だけでなく接触感染することもあります。手にインフルエンザウイルスが付いているかもしれないので、石鹸による手洗いでしっかりと落としましょう。
また、アルコール消毒薬による手指衛生もインフルエンザウイルスの除去に効果があります。玄関にアルコール消毒薬を置いておき、外出から帰ったらすぐに使用する習慣をつけることで、家庭内にインフルエンザウイルスを持ち込まないようにしていきましょう。
免疫力をつける
どんなに対策してもインフルエンザウイルスに感染してしまうことはあります。しかし、感染しても免疫力が高ければ、発症を回避できたり、発症後の重症化を抑えられたりすることがあります。免疫力を高めるためには、普段から十分に休養を取り、バランスのとれた栄養摂取を心がけましょう。
また、腸には全身の6割以上の免疫細胞や抗体が存在することから、腸の健康を意識することも大切です。便秘になると腸に老廃物が溜まってしまうので、ヨーグルトや漬物などの発酵食品や食物繊維が多く含まれた食品を意識的に摂取し、健康な腸を維持していきましょう。
室内を加湿する
冬場はエアコンなどの空調機器や暖房機器を使用する機会が増えるため、室内が乾燥しやすくなります。しかし、空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。加湿器などを使って、室内の湿度を50~60%程度に保つようにしましょう。
抗インフルエンザウイルス薬とは?
「抗インフルエンザウイルス薬」とは、インフルエンザの予防として処方される内服薬のことです。例えばタミフル(一般名オセルタミビル)はインフルエンザにかかったときの治療薬として処方されることがありますが、予防目的で処方されることもあります。
インフルエンザに感染して発症した場合、発症から48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、発熱期間が短縮されることや、鼻水や咳などの症状を緩和できることがあります。症状を緩和するためにも、インフルエンザの発症が認められた場合は48時間以内に医療機関を受診して、適切な治療を受けるようにしましょう。
インフルエンザの症状が出てから48時間を経過して抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、症状緩和などの効果を期待することが難しくなります。また、抗インフルエンザウイルス薬の用量や服用期間は必ず守り、正しく服用するようにしましょう。
インフルエンザの主な症状
インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型の3つの型があります。毎年ヒトの間で流行するのは主にA型とB型で、それぞれ症状が異なります。
A型の症状
A型は症状が激しく、また、感染力も高いため世界的に流行することもあります。38℃を超える高熱や関節痛、筋肉痛などの症状だけでなく、肺炎や脳炎などの深刻な合併症を引き起こすこともあります。
また、A型はウイルスの変異も激しく、ワクチンの予測が立てにくいインフルエンザです。そのため、一度A型にかかっても、別の型にかかる可能性があるため、免疫が機能しにくい傾向にあります。
B型の症状
B型も毎年流行する感染力の高いインフルエンザですが、A型とは異なり、世界的な流行にはなりにくいです。症状はA型と比べると穏やかで、腹部の痛みや下痢を起こすことがあります。
A型の中にもいくつも型がありますが、B型の中にもいくつもの型があります。そのため、同じ型でも複数回かかったり、異なる型にかかったりすることがあります。
インフルエンザワクチンはAとBどちらも対策できる?
以前はA型2種、B型1種の「3価ワクチン」でしたが、現在インフルエンザの予防接種で使われているのは「4価ワクチン」と呼ばれるものです。
4価ワクチンは、A型株(H1N1株とH3N2株の2種類)及びB型株(山形系統株とビクトリア系統株の2種類)の4つの型に対応しています。
ただし、あくまでもワクチンは「インフルエンザに感染しても、重症化を防げる」いった理解を持っておきましょう。
65歳以上の高齢者や、妊婦、基礎疾患をお持ちの方は、インフルエンザによる重症化が懸念される「ハイリスク群」に該当するため、心配な方は流行前にワクチン接種を検討しましょう。
インフルエンザが流行する前に対策を始めよう
インフルエンザの感染が心配な方は、普段から対策を意識して生活しましょう。規則正しい生活を心掛けたり、インフルエンザの流行時期は人の集まる場所へ出掛けるのを控えたりしながら感染を予防してください。
手洗いを徹底するほか、アルコール消毒薬を活用するなどしながらウイルスを自宅に持ち込まない努力も大切です。アルコール消毒薬はインフルエンザ対策効果に期待ができるため、出先でも使えるように携帯用を準備しておくのもおすすめです。
インフルエンザの症状が見られる方は、医療機関で診察を受けるようにしましょう。
監修者
医師:佐藤留美
内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。
久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。
佐藤医師よりコメント
インフルエンザ感染を防ぐためには、可能な方はワクチンを接種する、外出を控えて人ごみを避ける、手指衛生をこまめにする、規則正しい生活を行い免疫力をつける、室内の加湿を行うことが大切です。しかし、このような対策を行っていても、感染することがあります。もし、感染したと思うような症状を自覚した際は、48時間以内に医療機関を受診し適切な治療を受けるようにしましょう。