【医師監修】インフルエンザが抜け毛の原因になるってホント? インフルエンザと抜け毛の関係について
2022.11.28| 感染症・消毒
全身の倦怠感に加え、38℃を上回る高熱が続くことも珍しくないインフルエンザ。そのつらい症状によるストレスは、毛髪にも大きな影響を与えることがあるといわれています。今回は、インフルエンザになった後にみられる抜け毛の症状や対処法などについて紹介します。
インフルエンザによる高熱が抜け毛の原因に?
髪の毛が抜けて、量が少なくなる「脱毛症」には、円形脱毛症をはじめさまざまな種類があります。その中で「インフルエンザにかかった後、大量に髪の毛が抜けた」という場合は、「中毒性脱毛症」の可能性が考えられます。
中毒性脱毛症について
中毒性脱毛症は、強い身体的または精神的なストレスを受けることで引き起こされる脱毛症のことです。例えば、手術が必要になるほどの重い病気にかかった時や、ダイエットによって体重を急激に落とした時などに、突然抜け毛がみられるケースが当てはまります。
そもそも頭髪は、脱毛と成長を繰り返す「毛周期」と呼ばれるサイクルに従って生え変わります。しかしながら強いストレスを受けると、この周期が乱れ、髪の毛の成長が一時的に止まってしまうことがあるのです。そうして成長が止まった髪は、そのまま抜け落ちていくと考えられています。抜け方の特徴としては、全体的に髪の毛が抜けたり、円形脱毛症のように一部分に集中して大量に抜けたりと、人により差があり、男性も女性も年齢を問わず起こり得ます。中毒性脱毛症による抜け毛は、ストレスが解消されれば次第に治まり、髪の毛も自然と生えてくることが多いと考えられています。過度な心配はかえってストレスを高め、さらに抜け毛を進行させることにもなりかねないので、なるべくストレスを抱え込まないことが解決の近道といえるでしょう。
インフルエンザと中毒性脱毛症
インフルエンザにかかった後にも抜け毛がみられるケースがありますが、実はこれも中毒性脱毛症の可能性があると考えられています。この場合、インフルエンザによる高熱がストレスとなっているようです。ただし実際に抜け毛がみられるのは、高熱から数日後の場合もあれば、3カ月後の場合もあるなど、個人差が大きく、インフルエンザが原因と気づきにくいケースも少なくありません。基本的には熱が下がり、体調が回復するにつれて、抜け毛の症状を引き起こす心身のストレスも軽減していくと考えられていますが、髪の成長には個人差があるため、心配しすぎないようにしましょう。
抜け毛がみられたら、どうしたらいい?
中毒性脱毛症の解消をはじめ、なるべく抜け毛を増やさないためにはどうすればよいのでしょうか?その対策法を紹介します。
① ストレスを避ける
先に紹介した中毒性脱毛症は、病気やダイエットなどによる大きなストレスが要因となって起こると考えられていますが、日常的なストレスも抜け毛を増やす要因となります。ストレスによって交感神経に異常が生じたり、頭皮の血管が収縮されて血行が悪くなったりすることで、髪の成長に必要な栄養や酸素の運搬を滞らせることがあるのです。そのため、適度に体を動かしたり、趣味に没頭する時間を設けたりするなどして、日頃からストレスをためないことが重要です。
② バランスのよい食事をとる
栄養の偏った食事は、自律神経のバランスを乱し、抜け毛を進行させる原因となるため、バランスのよい食事をとることが大切です。髪の主成分であるタンパク質は、特に意識して摂取するとよいでしょう。
③ 良質な睡眠をとる
良質な睡眠も髪の成長には欠かせません。睡眠時には「成長ホルモン」が分泌されますが、これは、頭皮のダメージを回復させて髪の毛の成長を助ける働きを持つといわれています。そのため、十分に睡眠をとらないでいると、成長ホルモンの分泌が行われにくくなり、髪の成長が滞ることがあるのです。同様に、睡眠の質を上げることも重要です。就寝前4時間は、コーヒーや紅茶などカフェインの摂取は控えるようにしましょう。また、スマホやパソコン、テレビなどの光は脳を興奮状態にさせ、眠りの妨げとなるので、就寝前の使用も控えましょう。快適に眠れる寝具を選ぶのもオススメです。
④ 頭皮のケアを行う
抜け毛を防ぐためには、頭皮環境を整えることも重要です。心臓から遠い頭皮は、もともと血流が滞りやすい場所。指の腹を使って頭皮を大きくもみほぐす頭皮マッサージで頭皮の血行を促しましょう。それにより、髪の成長にとって重要なタンパク質やビタミンなどの栄養やホルモン、酸素などが頭皮に届きやすくなります。シャンプーをする際も、頭皮を指の腹でやさしくマッサージするように洗ってください。また、頭皮ケアに特化したシャンプーやブラシなどのケア商品も多く市販されているので、自分の頭皮の状態に合うものを選んで使うのもよいでしょう。
⑤ 育毛剤を活用する
抜け毛の予防だけでなく、今すでにある髪の毛の成長を促進することを目的とする育毛剤の使用も、抜け毛対策に有効といえます。育毛剤には、頭皮の血行を促進するタイプや、髪を生成する細胞を活性化させるタイプなど多くの種類があり、価格帯もさまざまです。商品の特徴や使用説明書を事前によくチェックして、自分の肌質や症状に合ったものを選びましょう。
⑥ 頭髪専門のクリニックや病院へ相談する
中毒性脱毛症は、強いストレスが解消されれば自然に改善することが多いとされていますが、抜けた髪の毛が再び生えそろうまでには、数カ月~1年程度はかかるといわれます。抜け毛の状態が気になったり、毛髪の回復が遅いと感じたりするようなら、頭髪専門のクリニックや皮膚科などを受診し、医師に相談するとよいでしょう。ただし、皮膚科に相談する場合は、症状によっては対応してもらえない病院もあるため、事前に電話で問い合わせてから受診するのが無難です。
インフルエンザにならないための予防策
インフルエンザによる高熱が抜け毛を引き起こす可能性があるとすれば、日々の抜け毛対策と同様にインフルエンザの予防に努めることも大切です。インフルエンザの予防策には、以下のような方法があります。
① 予防接種を受ける
インフルエンザワクチンには、「発症する可能性を低くする効果」と、「万が一発症してしまった際の重症化を予防する効果」があると考えられています。ただ、ワクチンの効果が持続するのは接種後5カ月程度とされているので、毎年、流行が始まる前までに接種を済ませておくのがオススメです。
② 手洗いや手指の消毒の習慣化
ウイルスが体内に侵入するのを防ぐためには、こまめな手洗いや手指の消毒が有効です。外出先から帰ってきた時や食事前など、普段から手洗いを徹底して行うように心がけましょう。また、インフルエンザウイルスに対して効果が高いといわれるアルコールタイプの手指消毒剤も便利です。不特定多数の人が触る公共施設のドアノブや、電車のつり革を触った後や、外出先ですぐに手洗いできない時など、さまざまなシーンで気軽に活用できます。
③ 人混みを避け、外出時にはマスクをする
インフルエンザの流行時期には、人が多く集まる場所への出入りは極力避けるのが無難です。どうしても外出が必要な場合には、不織布製のマスクを着用し、飛沫感染を防ぐようにしましょう。
④ 健康管理に努める
睡眠不足や栄養バランスの偏った食事、過労などは免疫力を弱める原因となります。十分な休養とバランスのよい食事で生活習慣を整えて、免疫力の強化を図りましょう。
まとめ
一見、関係のないように思えるインフルエンザと抜け毛ですが、インフルエンザによる高熱がストレスとなり、抜け毛が引き起こされることがあるようです。ただし、基本的には症状が治まり、ストレスが解消されると、抜け毛も改善されていくと考えられています。過度な心配は抜け毛を助長する要因となりかねないので、正しい知識を持って、落ち着いて対処するようにしてください。
監修者
医師:木村眞樹子
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。
木村医師よりコメント
強いストレスは脱毛の原因になります。インフルエンザは強い倦怠感や関節痛、高熱を引き起こしますが、これは身体がウイルスと戦っている反応そのもの。強い症状が出るということは、それだけ身体にとっては強いストレスがかかっている状態といえます。ワクチン接種などで感染症を予防することも大切ですが、日頃から感染症に負けない身体作りをしていくことで脱毛症の予防にもなるでしょう。