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【医師監修】インフルエンザ予防に納豆が効果的?「S-903納豆菌」の可能性について

2022.11.28| 感染症・消毒

「納豆どきの医者いらず」ということわざをご存じでしょうか?昔は納豆を秋から冬にかけて食べる習慣があったため、「納豆の仕込みがはじまると、毎日のように納豆が食卓に上るので、体力が充実してきて病気への抵抗力も強くなり、医者にかかる人も少なくなってしまう」という意味だそうです。日本の伝統的な発酵食品「納豆」は、その栄養価の高さが古くから認められている、まさに「体力強化食」。さらに、最近ではインフルエンザ予防への効果も期待できるといわれています。今回は、納豆が持つさまざまな健康価値のなかから、特に「抗インフルエンザ効果」に注目して詳しく紹介します。

インフルエンザ予防に納豆

納豆は、よく煮た(蒸した)大豆に少量の納豆菌をふりかけ、保温し寝かせることで発酵を進ませて作る食品です。納豆を作るための種菌(たねきん)である「納豆菌」は、わらなどに付着している枯草菌(こそうきん)という細菌の一種で、採取された環境によって多くの種類が存在し、その種類ごとに出来上がる納豆の風味や栄養、健康作用に違いがあるといわれています。
そんな数ある納豆菌の中で、特に注目を集めているのが「S-903納豆菌」。これは、納豆メーカーが長い年月をかけて収集・研究し、性質を明らかにしてきた2,200種以上の納豆菌の中から、免疫に対する高い機能性を持つ納豆菌株の選抜を行って発見したという、いわば「スーパー納豆菌」なのです。このS-903納豆菌を「インフルエンザに感染する一週間前からマウスに投与する」という実験から得られた結果によると、インフルエンザの予防に関して一定の効果が確認できたというのです。

「S-903納豆菌」には、こんな効果が期待できる⁉

ひきわり納豆

●抗インフルエンザ効果
先に紹介した研究によるとS-903納豆菌には、インフルエンザウイルスの増殖を抑え、抗体の生産量を高める効果が期待できることが確認されました。また、一般的な納豆菌と比べて免疫に対する機能性が約1.5倍もあることも分かったそうです。
なお、S-903に限らず、納豆菌は乳酸菌をはじめ腸内で活動するさまざまな善玉菌を活性化させたり、悪玉菌の増殖を抑えたりする整腸作用が期待できるといわれています。胃腸が弱ると体力も低下してインフルエンザにも感染しやすくなるとされていますから、注目すべき作用といえるでしょう。また、大豆が納豆菌によって発酵する際に、ジピコリン酸などの酵素を生成することも分かっています。これらは強い抗菌・抗ウイルス作用を持ち病原菌の増殖を抑える効果が期待されるため、インフルエンザ予防にも有効ではないかと考えられます。
さらに、大豆にもともと含まれる栄養成分の中には、納豆菌による発酵の過程において、増加するものもあるといわれています。たとえば、疲労の回復や肝臓機能の向上にも効果が期待できるといわれるビタミンB2もそのひとつです。また、免疫力の強化にもつながるといわれるビタミンB1は水に溶けやすく熱に弱い特徴がありますが、そのまま食べられる納豆であれば、効率的に補給することができるでしょう。

●ノロウイルスや大人風邪(ライノウイルス)の予防にも!
S-903納豆菌はインフルエンザだけでなく、ノロウイルスや大人風邪の原因菌のひとつとされるライノウイルスの予防効果も期待できるといわれています。ノロウイルスは、感染すると激しい吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などの症状を引き起こすうえ、非常に強い感染力も持つ病原体です。またライノウイルスは、頭痛やのどの痛み、鼻づまりなど、風邪の症状を起こすウイルスで、大人の風邪の20~30%はこのウイルスが原因という報告もあります。
マウスによる実験では、S-903納豆菌がノロウイルスの増殖を抑え、ノロウイルスの発症予防と感染症状の緩和が期待できることが明らかになったそうです。また、ライノウイルスに対しては、同じくマウスによる実験で感染力を中和する働きを持つ抗体価が高まったことから、大人風邪の発症予防と感染後の症状軽減に効果が期待できると考えられています。ノロウイルスもライノウイルスも、現在まだワクチンがないだけに、S-903納豆菌を味方につけて感染予防に役立ててみてはいかがでしょうか?

オススメの納豆レシピ

納豆

インフルエンザウイルスをはじめ、ノロウイルスやライノウイルスの感染予防にも、S-903納豆菌が効果的であることが分かりました。また納豆は、大豆そのものが持つ健康効果も期待できます。良質のたんぱく質を豊富に含み、優れた抗酸化作用が期待されるイソフラボンや大豆サポニン、免疫機能の維持に役立つといわれる亜鉛などのミネラルといった、健康維持のために取り入れたい栄養素が手軽にまとめて摂取できるのもうれしいですよね。
そんな健康効果の高い食品だからこそ、毎日継続して摂取したいものです。白米にかけて食べるのはもちろん、ここでは少しアレンジを加えた楽しみ方をご紹介しましょう。

●材料(1人分)
ニラ 1/4束
納豆 1パック
しょうゆ 小さじ2
ごま油 少々
ニンニク ひとかけ

●作り方
1. ニラを細かく刻む
2. しょうゆとすりおろしたニンニクを容器に入れ、細かく刻んだニラを加えて混ぜる
3. 2に納豆を入れ、ごま油を垂らして混ぜる

<オススメポイント>
「納豆×ニラ×ニンニク」という、栄養満点の食材がタッグを組んだ、簡単にできる納豆レシピです。クセの強い味を想像するかもしれませんが、食べてみるとご飯がどんどん進む、なんともおいしい一品です。数日間は保存できるので、多めに作って冷蔵庫に常備しておくのもオススメです。

まとめ

私たちが健康を維持するためには、「5大栄養素」と呼ばれる「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「ビタミン」「ミネラル」が必要不可欠です。そのすべてが含まれる納豆は、日本が世界に誇る健康食。特徴のあるにおいや粘り気の強さなどから敬遠する人もいますが、最近は、においを抑えた商品も販売されています。ぜひ、毎日の食卓に登場させて、その健康パワーを体感してみてください。

木村医師よりコメント

納豆は日本に根付く伝統的な食品で、「健康にいい発酵食品」としても認知している方も多いのではないでしょうか。近年では、納豆を多く取っているほうが、死亡率が低い、心臓病のリスクが低い、骨折を減らすといった報告もされており、これからも、まだまだ知られていない納豆の効果が発表されるかもしれません。医食同源という言葉が示すとおり、食事は健康を維持するために大きな働きを持っています。その方法のひとつとして、納豆の力を借りるのもいいかもしれません。

監修者

医師:木村眞樹子

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

 

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