インフルエンザになったら飛行機に乗れる? 判断基準とキャンセルの方法について
2022.11.28| 感染症・消毒
「もうすぐ旅行なのにインフルエンザに!飛行機に乗れなかったらどうしよう…」。インフルエンザにかかった場合、飛行機の搭乗について具体的な決まりがあるのか、万が一キャンセルしたら料金は戻ってくるのか、など様々な疑問が頭をよぎります。今回はインフルエンザにかかった場合の搭乗について、判断基準やキャンセルの方法を見ていきましょう。
インフルエンザにかかったら飛行機に乗れる?
基本的には搭乗できない
インフルエンザにかかった場合、基本的には飛行機に乗ることはできません。その対応について、各航空会社では国内線・国際線に共通する規定を設けており、その基準となっているのが、学校保健安全法における出席の停止期間です。原則として「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児にあたっては3日)を経過するまで」は搭乗できないと定めているケースが多いです。
機内はインフルエンザウイルスにとって好環境?
このような規定の背景には、インフルエンザウイルスと機内の環境が大きく関係しています。というのも、インフルエンザウイルスは寒冷乾燥を好み、高温多湿に弱いため、部屋の温度は20℃以上、湿度は40~60%にしておくことが感染予防には理想、といわれています。ところが機内の湿度は20%とかなり低い状態で、これはインフルエンザウイルスにとっては好環境。さらに空気中の水分が少ない中では、咳やくしゃみによる飛沫が拡散しやすく、その上、乾燥した環境では喉や鼻の防御機能が低下しているため、感染の可能性が高まるのです。このような環境であるため、ウイルスを放出する恐れのある人の搭乗は認められていません。
発症翌日には平熱に! こんな時は飛行機に乗れる?
最近は、インフルエンザウイルスの検出検査の精度が上がり、抗インフルエンザ薬の種類も増えたことから、発熱後、すぐに熱が下がることがあります。体調だけで判断すれば、搭乗できそうと感じるかもしれませんが、発症から1週間はウイルスを放出しているため、周りへの感染拡大が心配されます。また、解熱後しばらくは体力や免疫力が低下しているので、他の感染症にかかりやすくなっています。周囲のためにも自分のためにも、発症後5日、かつ解熱後2日が経過するまでは、搭乗は控えてください。
なお、「熱があっても、ばれなければ飛行機に乗ってもよいのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、各国の検疫制度によって、発熱している人は渡航先で上陸を拒否されることがあります。日本の場合、入国および帰国するすべての人に対して検疫を行っており、自己申告はもちろん、体の表面温度をモニタリングするサーモグラフィーを用いて発熱の有無を確認しています。外国で上陸を拒否されると入国が認められず、すぐに帰国しなければならないケースもあるので、注意してください。
インフルエンザになって飛行機に乗れない! キャンセル料はどうなる?
急な病気には特例が設けられている
通常、自己都合により航空券をキャンセルする場合、「キャンセル料」と「払戻手数料」の2種類の費用がかかります。しかしながら、急な病気やけがによってキャンセルせざるを得ない場合、航空会社によっては特例が設けられていることがあります。この場合、医師の診断書を提出すれば、キャンセル料や払戻手数料がかからない可能性があるのです。この特例は本人だけではなく、同行者にも適用されます。
また、通常のキャンセルでは、便が出発するまでにキャンセルの手続きをしなければいけませんが、病気によるキャンセルの場合は「航空券の有効期間内および有効期間満了日(予約変更ができない航空券の場合、搭乗予定便の出発日)の翌日から10日以内」とされているのが一般的です。
特例の適用を受けられないケースとは?
基本的には、国内線では急病によるキャンセル時の特例が適用されますが、国際線ではこうした特例がない航空会社も多いようです。最近は、早期割引特典付き航空券やキャンペーン料金、LCC路線など、キャンセルや便変更ができないことを条件にプライスダウンされた航空券も増えているので、急病時のキャンセルについて事前に確認してから予約をするとよいでしょう。また、旅行会社で申し込んだ場合には「前日キャンセルは旅行代金の50%」「当日キャンセルは旅行代金の100%」など、旅行会社によってキャンセル時の規約が異なります。いずれにしても、旅行の直前にインフルエンザにかかったら、できるだけ早く航空会社や旅行会社に連絡をしてキャンセル時の対応について問い合わせましょう。急病時の特例が適用されない場合に備えて、国内旅行や海外旅行の「キャンセル費用補償保険」に入っておくのも手です。
費用がかかる医師の診断書。書いてもらう前に確認を
なお、特例の適用を受ける場合、医師の診断書が必要です。診断書の費用は、健康保険の対象とならず全額自己負担となるため、2,000~5,000円程度の費用がかかり、この金額は医療機関によって異なります。もし診断書を書いてもらう費用が、航空券のキャンセル手数料と払戻手数料の金額よりも高くなる場合は、病気によるキャンセル扱いにしてもらわずに、通常のキャンセルとして処理としてもらった方が、結果的に費用がかからないケースも。どちらがお得かを調べてからキャンセルしてもよさそうですね。
飛行機の中でインフルエンザの感染を予防するには?
先に述べたように、多くの人が閉ざされた空間で過ごす飛行機の中は、乾燥しており、感染のリスクが高い場所となっています。そこで、機内での感染を防ぐポイントについて紹介しましょう。
① マスクの着用
マスクを付けることで、喉や鼻の粘膜を乾燥から守ることができます。また、ウイルスが付着した手で、無意識のうちに自分の鼻や口を触ることによる接触感染も防げます。
② 水分補給をしっかりと行う
喉や鼻の粘膜にある「線毛(繊毛)」には、ウイルスや細菌を体内から排出させる役割があります。しかし、体内の水分量が減ると線毛は乾燥してしまい、その働きは鈍くなってしまいます。こまめに水分補給を行い、線毛の乾燥を防ぎましょう。また、水分を摂ることで、粘膜に付いたウイルスを消化器官へ流して不活性化させる、という効果もあります。こまめな水分補給でウイルスの侵入を防ぎましょう。
③ 身体を冷やさない
「冷えは万病のもと」という言葉がありますが、体が冷えて血流が悪くなると、ウイルスや細菌が体内に入り込んでいないかチェックする白血球がうまく働かなくなり、免疫力が低下してしまいます。寒いと感じたら機内の毛布を借りたり、手持ちの上着をかけたりするなど、温かくして免疫力をキープしましょう。
④ 食事前の手洗い・うがい
機内でトイレに行くのは面倒かもしれませんが、食事の前に手洗い・うがいをすることで経口感染を防げます。席から立ちあがりにくい場合は、ハンド用の除菌ジェルやシートを利用するのもよいでしょう。
まとめ
旅行の直前にインフルエンザにかかってしまっても、キャンセル料や払い戻し料がかからずに取り消すことができる特例があることが分かりました。一方で、キャンセルができないことで割引率が高い航空券も増えてきています。インフルエンザの流行期に旅行に行く場合には、予約時にキャンセルの条件について調べておくことが、万が一の場合に慌てないコツですね。