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妊婦でもインフルエンザの予防接種は受けていいの?

2022.11.28| 感染症・消毒

妊娠中にインフルエンザの予防接種を受けても大丈夫? と、心配に思う人も多いでしょう。そこで今回は、妊娠中のインフルエンザの予防接種について詳しく解説します。

妊婦と薬について

日本で使われているインフルエンザワクチンは、病源体となるウイルスの感染力を失わせたものを使用した不活化ワクチンです。予防接種による胎児への特別な影響は見られないという研究結果もあり、妊婦の予防接種も問題ないといわれています。厚生労働省や日本産科婦人科学会では、万一妊婦がインフルエンザになった場合に重症化してしまうリスクを配慮し、流行前の予防接種を勧めています。

 

予防接種が妊婦に勧められる理由

免疫力の低下

妊娠中はインフルエンザをはじめとした感染症にかかりやすくなっています。というのも、お母さんの体が赤ちゃんを異物として攻撃しないようにするため、免疫力が落ちるためです。加えて、つわりで食事が充分にとれない、子宮に圧迫されて心肺機能がいつもより低下するなどの条件も重なって、普段より抵抗力がなくなり、インフルエンザにかかりやすくなるのです。

 

インフルエンザが重症化しやすい

妊婦がインフルエンザにかかってしまうと、合併症を起こして重症化するリスクが高くなります。たとえばインフルエンザになって心肺機能が悪化し入院するリスクは、産後の妊娠していない状態に比べて、妊娠14~20週で1.4倍、27~31週で2.6倍、37~42週になると4.7倍に跳ね上がるという報告もあり、妊娠と重症化の関係は決してあなどれません。このことから、妊娠中インフルエンザの予防接種を受けることには、重症化を防ぐという意味もあるのです。

 

■ワクチンは実物ではありません。イメージ写真としてご利用ください。

妊娠中、インフルエンザの予防接種は受けても大丈夫?

基本的には、インフルエンザになってしまった場合のリスクの方が、予防接種によって起こることのある副反応(副作用)のリスクよりも大きい場合に予防接種を行います。体質や感染しやすい環境にいるかどうかなどによっても判断は変わるため、以下のようなメリットとデメリットがあることを確認した上で、接種するかどうか主治医と話し合って決めましょう。

メリット

・インフルエンザにかかる可能性を下げる

・インフルエンザにかかってしまっても重症化するリスクを下げる

・お母さんが予防接種をすることで、抗体が胎盤を通して赤ちゃんにも移行するため、出産後に赤ちゃんがインフルエンザにかかりにくくなる

デメリット

・ワクチンによる副反応(副作用)が起こる可能性がある

・抗体ができるまでに約2~4週間の時間がかかる

 

特に注意が必要なケース

ぜんそくや卵アレルギーなどのアレルギーがある人や、以前インフルエンザの予防接種でアナフィラキシーショックを起こした経験のある人は、ワクチンによる副反応(副作用)が起こる可能性がそうでない人よりも大きくなります。このような場合は、主治医と相談の上、接種した方がよいか、見合わせたほうがよいか判断しましょう。予防接種が受けられない場合には、身近な人にインフルエンザの予防接種をしてもらい、家の中にインフルエンザのウイルスを持ち込まないよう協力してもらいつつ、自分自身も手洗いなどの予防に努めると良いでしょう。

 

インフルエンザの予防接種の時期について

★まだ妊娠はしていないが、妊娠を希望しているケース

→妊娠前に予防接種をしておき、抗体を作っておくのがおすすめです。

★予防接種をした直後に妊娠が発覚したケース

→特にアレルギーなどがなければ、お腹の赤ちゃんに悪い影響が出ることはほとんどないので、心配する必要はありません。

★妊娠初期

→妊娠がわかってからまだ安定期に入っていない時期の予防接種については、他の時期に比べて母体に悪い影響があるというデータはなく、特に受けてはいけないという注意もありません。しかし不安定な時期なので、念のため避ける人もいるようです。

★妊娠安定期

→体調に問題がなければ、インフルエンザの予防接種に適した時期です。

★授乳期

→母乳を赤ちゃんにあげている時期の予防接種も問題はありません。

 

もしも妊婦がインフルエンザにかかってしまったら?

ウイルスそのものより、症状に注意

ウイルス自体が直接赤ちゃんに影響を及ぼす可能性は低いので、まずはインフルエンザで起こる熱や咳などの症状からくる影響を最小限にする対策を最優先にします。

★38度以上の発熱→羊水の温度が上がり、赤ちゃんの心拍数が早くなります。医師に相談の上、妊娠中に飲める解熱剤を飲むなどして、赤ちゃんへの負担を減らしましょう。

★激しい咳→腹圧が高くなり、お腹が張りやすくなります。咳をとめるためにどのようにすべきか主治医に相談しましょう。

★胸の痛みや呼吸が苦しい→肺炎になっている可能性があります。母体が危険な状態なので早急に主治医に相談してください。

 

病院に行くときには…

インフルエンザかもしれないと思ったら、重症化しないうちにすぐに病院に行きましょう。その際、突然産婦人科を訪ねるのは、他の妊婦に感染を広げる恐れがあるためNGです。妊娠していることと、インフルエンザの疑いがあることをあらかじめ電話で告げて、かかりつけの内科を受診するのがベストです。その際も感染を広げないためにマスクをつけていきましょう。

 

薬の処方について

インフルエンザの症状が出てから48時間以内に抗インフルエンザ薬を使うと、ウイルスの増殖を抑えて、インフルエンザの長期化や重症化が防げるといわれています。抗インフルエンザ薬は、症状が治まった後も決められた量を決められた期間しっかり服用するのがポイントです。医師と相談の上、以下の抗インフルエンザ薬を使用して、重症化を防ぎましょう。

★タミフル

粉薬とカプセルの2種類があり、1歳から9歳までの子どもや、20歳以上の大人が服用できる薬です。1日2回を5日間連続して服用することになっています。妊娠中でも授乳中でも、治療によって得られるメリットが危険性を上回ると判断される場合に服用可能です。ただし腎臓に何らかの問題がある人にとっては、注意が必要な薬です。また微量ながら母乳にも移行します。授乳中に服用する場合には、一時授乳を中止することが推奨されています。

★リレンザ

吸入するタイプの抗インフルエンザ薬です。しっかり吸い込むことのできる5歳以上の子どもや大人に使われ、1日2回、1回につき2度の吸入を、5日間連続で行います。妊娠中でも授乳中でも、治療によって得られるメリットが危険性を上回ると判断される場合に服用できますが、乳製品にアレルギーがある人や喘息持ちの人は注意が必要な薬です。また微量ですが母乳に移行するため、使用中は一時授乳を中止することが推奨されています。

★イナビル

リレンザと同じく吸入するタイプの抗インフルエンザ薬です。10歳以上の子どもや大人は、40㎎の粉末状の薬剤を1回吸い込むだけで終了(20㎎を1日1回、2日にわけて吸入することも可能)です。妊娠中は、本剤を使用するメリットが使わないメリットを上回った時にのみ使うことになっています。また微量ながら母乳に移行するため、授乳中に吸引する場合には、一時授乳を中止することが推奨されています。

 

まとめ

妊婦にとって、インフルエンザは罹患しやすく重症化しやすいという特徴があります。インフルエンザにかかった場合のリスクの方が、予防接種による副反応のリスクよりも大きいことを知り、自分の体質や流行の時期なども考慮した上で、上手に予防接種をとりいれてみてください。

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