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インフルエンザの予防接種。その効果とは?

2022.11.28| 感染症・消毒

1回だけでも効果があるの?

予防接種をしていても、インフルエンザにかかってしまったという話はよく聞きます。はたして、インフルエンザの予防接種には、どのくらいの効果が期待できるのでしょうか。ここでは、インフルエンザの予防接種の効果について、その接種回数との関係性も含めて解説します。

インフルエンザの予防接種はなぜ必要?

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感染力のない状態に処理したインフルエンザウイルスを不活性ワクチンといいます。その不活性ワクチンをあらかじめ体内に接種することで、インフルエンザが流行する前に体に抗体をつくらせようというのが、インフルエンザの予防接種です。インフルエンザウイルスには種類があり、毎年流行する型を予想してワクチンを作っています。年齢や体質によって、どの程度の抗体ができるのかには差がありますが、一度ウイルスの型を覚えさせておくことによって、インフルエンザにかかっても重症化を防ぐことができます。また、多くの人が予防接種することによって、インフルエンザの流行を防ぎ、予防接種ができない人たちにとっても感染しにくい環境がつくれます。なお、予防接種によって獲得した抗体は3~5ケ月程度で薄れていくのに加えて、ウイルスは変異しやすい性質を持っており毎年流行するウイルスのタイプが異なるため、毎年の予防接種が必要になってきます。

インフルエンザの予防接種の効果とは?1回だけでも効果が出る?

前述した通り、インフルエンザの予防接種の効果は、年齢や体質によって異なります。たとえば、1回の接種で抗体がしっかりできる確率は、子どもや老人に比べて成人の方が高いことがわかっています。このため、13歳以上の健康な男女の場合、インフルエンザの予防接種の回数は1回が推奨されています。逆に、13歳以下の子どもの場合には、1回だけの接種では抗体をうまく作ることができないため、2回の接種となっています。また成人であっても、老人のように免疫機能が低下している場合などは2回の接種が推奨されることもあります。

 

インフルエンザの予防接種の効果の出方

残念ながら、インフルエンザの予防接種によって、インフルエンザへの感染を完全に防ぐことはできません。しかし、重症化や合併症を防ぐ効果は確認されており、特に高齢者の場合には接種することによって死亡のリスクを5分の1に、入院のリスクを約3分の1~2分の1にまで減少させることが期待できます。また乳幼児においては、免疫の働きがまだ十分ではないため、予防接種をすることによってインフルエンザにかかる可能性を下げる効果は2~3割程度と考えられています。しかし乳幼児期のインフルエンザの重症化や合併症は、命に関わることも少なくないため、それらを防ぐ効果を加味してインフルエンザの予防接種をする意味はあると考えられています。

インフルエンザの予防接種の効果に対する考え方

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厚生労働省の考え方

インフルエンザは、インフルエンザウイルスが口や鼻や眼の粘膜から体内に侵入して増殖した結果、潜伏期間を経て発熱やのどの痛みといった症状が出現する病気です。インフルエンザワクチンによる予防接種は、抗インフルエンザ薬のようにウイルスが体内に侵入して増殖することを直接抑える働きはありませんが発熱やのどの痛みといった症状を緩和する効果が一定程度あると考えられています。風疹や麻疹の予防接種のような高い発病予防効果はないものの、インフルエンザに罹患した後に重症化したり合併症を起こしたりする確率を下げる効果が高く、特に重症化するリスクが高い人にとっては予防接種をするメリットが大きいと考えられています。

CDC(Centers for Disease Control and Prevention)の考え方

インフルエンザの予防接種を受けても感染の可能性はあるものの、接種したワクチンが地域で流行するウイルスの型と類似していれば、ワクチンの有効性はより高まります。ただし、接種したワクチンが流行している型と合致しない場合であっても、ワクチンに反応して産生された抗体は、異なる型のインフルエンザウイルスに対しても、一定程度で防御反応を起こすことができると考えられています。その他にもワクチンの有効性は、年ごとによっても年齢によってもその他の基礎疾患などのリスクの有無によっても異なるため、その点も考慮する必要があります。

WHO(World Health Organization)の考え方

インフルエンザの予防接種は、インフルエンザウイルスに起因する感染症や重症化に伴う合併症などを防ぐ最も効果的な方法として考えられています。特に妊娠によって免疫力が落ちるため感染すると重症化しやすい妊娠中の女性や、6~59ケ月までの小児、高齢者、感染すると重症化しやすい慢性疾患を持つ人、ウイルスへの感染リスクが高く感染の媒体になりやすい医療従事者に対して、優先的にインフルエンザの予防接種を推奨しています。

※厚労省:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

※CDC:https://www.cdc.gov/flu/protect/keyfacts.htm

※WHO:http://www.who.int/influenza/vaccines/en/

 

まとめ

インフルエンザの予防接種が感染予防にどのくらいの効果があるかは、年齢や体質、妊娠や病気の有無、抗体の有無などによっても大きく変わってきます。厚生労働省の予防接種に対する考え方などを参照しながら、予防接種を受けるかどうか、またその接種回数などを判断すると良いでしょう。

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