【医師監修】インフルエンザで筋肉痛になる理由は?原因と痛みの対策まで解説
2022.11.28| 感染症・消毒
インフルエンザは突発的に高熱が出て、ひどい悪寒や頭痛も伴うことがあります。ほかにも、腰や手足の関節に痛みを感じたり、腕や脚に筋肉痛のような痛みが出たりした経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
この筋肉痛は、インフルエンザウイルスとそれを追い出そうと私たちの体が戦っているときに起きる痛みと言われています。
そこで、今回はインフルエンザで筋肉痛が起きる理由と、痛みの対処法を解説していきます。インフルエンザによる筋肉痛で悩んでいる方は、ぜひご一読ください。
インフルエンザの主な症状や特徴、インフルエンザの予防方法も合わせてお伝えしていますので、インフルエンザかもしれないと悩んでいる方も確認していきましょう。
インフルエンザの主な症状は?
インフルエンザの主な症状は、38度以上の高熱や全身のだるさ、筋肉痛、関節痛、喉の痛み、咳などです。初期症状として、急な発熱や頭痛が生じ、その後、喉の痛みや咳、鼻水などの症状が遅れて出る場合もあります。
その他にも、食欲不振や吐き気、嘔吐など、消化器系の症状が見られることもあります。
一般的な風邪と比較すると、症状の進行が早く、ほとんど前兆がないまま、ひどい悪寒を感じたり、高熱が出てきたりするのがインフルエンザの特徴です。
ただし、インフルエンザのワクチンを接種していると、比較的軽症で済むパターンが多く、熱が出ないこともあります。
インフルエンザは初期症状として、全身症状が出やすい病気なので、筋肉痛や関節痛、全身の節々の痛みがよく起きます。
全身症状には個人差がありますが、膝や腰などの一部に鋭い痛みを感じる場合もあり、高熱と並行して発症すると辛く感じる方も多いかもしれません。
インフルエンザで筋肉痛が起きるのはなぜ?
インフルエンザで筋肉痛が起きる原因は、体内で分泌される「プロスタグランジン」が関連していると言われています。
体内にウイルスが侵入すると、白血球から「サイトカイン」という物質が分泌されます。サイトカインは、過剰に分泌されると臓器の機能不全を引き起こす可能性がありますが、プロスタグランジンは、このサイトカインの過剰分泌を抑える働きをしています。
この他にも、プロスタグランジンは血管を拡げて血流を良くしたり、体を発熱させてウイルスの増殖を防いだりしており、その際に筋肉痛を伴うことがあります。
インフルエンザによる節々の痛みや腰痛も、このプロスタグランジンが原因だと言われています。
インフルエンザによる筋肉痛を和らげる方法
38度以上の高熱やひどい頭痛、悪寒などを伴うインフルエンザで、全身症状である筋肉痛まで起きるととても辛く感じます。その辛い筋肉痛を和らげる方法を紹介します。
筋肉痛は、体の免疫がウイルスを抑えようとして発生するものなので、インフルエンザ自体が治癒することで治まっていきます。
しかし、筋肉痛がひどい場合やなかなか痛みが治まらない場合は、医療機関へ相談するようにしてください。
患部を冷やす
筋肉痛を緩和する方法の1つは、患部を冷やすことです。アイス枕や保冷剤をタオルに包んで痛みを感じる部分を冷やします。
インフルエンザによる筋肉痛は、冷やして血管の拡張を抑えることで、痛みの緩和が期待できます。
ただし、患部を冷やすときは冷却材を直接当てず、必ずタオルなどで包んで冷やすようにして、1箇所を長時間冷やすことも避けましょう。
解熱鎮痛剤を服用する
痛みがひどい場合は、解熱鎮痛剤を服用する方法もあります。
ただし、市販の解熱鎮痛剤は、インフルエンザ脳症を引き起こす原因となり得る成分が入っているものもありますので、自己判断せずに、服用する前には医療機関に相談し、医師の指示に従いましょう。
インフルエンザにかからないようにするためには?
毎年、寒い時期に流行するインフルエンザの主な感染経路は、「接触感染」と「飛沫感染」の2つと言われており、適切な予防法もわかっています。
接触感染は、ウイルスが付着したものに触れた手で、鼻や目などの粘膜を触ることで感染することを指します。それに対し、飛沫感染は、ウイルスに感染した人の咳やくしゃみで飛散した唾液などを吸い込むことで、他者に感染することを言います。
インフルエンザがどのように感染するのかを理解し、しっかり対策することで、インフルエンザに感染するリスクを軽減できますので、その方法を紹介していきます。
手洗い・手指の消毒
手洗いと手指のアルコール消毒は、接触感染を防ぐ方法です。とくに、アルコールによる手指の消毒は効率的かつ手軽な予防方法で、インフルエンザウイルスを短時間で不活性化することができると言われています。
さまざまな場所に触れる手は、ウイルスが付着しやすいので、外出先でもこまめにアルコール消毒することで接触感染を予防しましょう。
また、帰宅時には、家のものを触ってしまう前に手洗いをするようにしてください。指先や手首、指の間を意識して、石けんで洗ってから、しっかり流水で洗い流すようにしましょう。
部屋の加湿と換気
空気が乾燥すると、気道粘膜が正常に働かなくなり、ウイルスが体内に侵入しやすくなります。さらに、大気の湿度が低いと、インフルエンザウイルスは活動性を保つとも言われています。
ウイルスの活動性を下げるためにも、部屋の湿度は50~60%を目安に加湿器を使ったり、濡れたタオルを部屋干ししたりして、加湿をすると良いでしょう。
インフルエンザの流行時期は、例年12~3月までの寒い季節ですが、定期的に窓を開けて換気するようにしてください。
免疫力を高める
私たちの体にウイルスや細菌が侵入した際に、それを排除しようとする力が「免疫力」です。この免疫力が高いとウイルスにかかりにくくなると言われており、インフルエンザも例外ではありません。
免疫力は、睡眠不足やストレス、疲れ、食生活の乱れが原因で低くなると言われていますので、日頃から、免疫力を上げるために生活習慣を整え、リラックスできる時間を設けるのも良いでしょう。
また、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動をするのも免疫を高めることにつながるとされています。
食事は、ビタミンAを多く含む緑黄色野菜、ビタミンCを多く含む果物、腸内環境を整え免疫の活性化につながると言われている発酵食品、免疫細胞を作るとされるタンパク質を中心にバランスよく摂るようにしてください。
インフルエンザによる筋肉痛がつらいときは、医療機関へ
インフルエンザのときに起きる筋肉痛は、体の免疫がウイルスを抑えようとして、白血球が分泌するプロスタグランジンによって発生する症状です。
体がウイルスと戦っている証拠なので、インフルエンザが治れば、自然に治まっていきますが、痛みがひどい場合は、重症化する可能性もあります。
痛みがひどい場合、インフルエンザの症状が変化した場合は、我慢せずに医療機関を受診し、医師の指示を仰ぐようにしてください。
監修者
医師:佐藤留美
内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。 久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。
佐藤医師よりコメント
インフルエンザは、発熱、悪寒や頭痛以外にも筋肉痛が見られることがあります。それは、体の免疫がウイルスを抑えようとして、白血球が分泌するプロスタグランジンによって発生する症状です。インフルエンザが治まれば、自然に治まっていきます。しかし、筋肉痛がひどい場合や長く続く場合は、医療機関を受診するようにしましょう。