【医師監修】インフルエンザの予防接種をしたのに感染する可能性はある?
2022.11.28| 感染症・消毒
インフルエンザの予防接種を受けたにも関わらず、インフルエンザに罹ってしまった経験はありませんか。
インフルエンザに罹ると、高熱や強い倦怠感で辛い思いをしますし、学校や仕事を1週間程度休まなければなりません。また、予防接種してもインフルエンザにかかるなら、予防接種を受ける必要があるのかと疑問に思ってしまうかもしれません。
今回は、インフルエンザの予防接種をしてもインフルエンザに罹る理由とワクチンの効果、そして予防接種を受けても実践してほしい基本的な感染予防策を解説していきます。
インフルエンザの予防接種をしても感染することはある?
インフルエンザワクチンは「感染」を予防するものではありません。なぜなら、ワクチンはインフルエンザウイルスが鼻などの粘膜から体内に入り込み、細胞に侵入して増殖する状態、いわゆる「感染」を完全に防ぐものではないからです。
そのため、インフルエンザの予防接種をしてもインフルエンザウイルスに感染することはあると認識しましょう。
ワクチンを接種すると、インフルエンザに対する「一定の予防効果」を期待できます。ウイルスに感染した後に、高熱や強い倦怠感などの症状が低減するほか、発病した場合の重症化や、肺炎やインフルエンザ脳症などの合併症をある程度防いでくれます。国内の研究(※)によれば、発病を60%ほど、死亡を80%程度、それぞれ防ぐ効果が期待できると報告されています。
注意すべき点は、インフルエンザワクチンは風疹ワクチンなどのように高い発病予防効果は期待できないため、予防接種を受けていても発病する場合があるということです。これは、インフルエンザウイルスが変異を繰り返しているためで、ワクチンの型が流行株と異なると、それだけ予防効果も低くなるわけです。
そうは言っても、高齢者や基礎疾患を抱えている方などでは重症化や合併症のリスクが高いため、ワクチンの接種が推奨されています。
なお、インフルエンザワクチンを接種すると、副反応として倦怠感や発熱がみられる場合があることを頭に入れておきましょう。
ワクチン接種の副反応は、通常2~3日後に消失することが多いのですが、ワクチンを接種した数日後に熱や倦怠感がみられた場合は、実際にインフルエンザにかかった場合との区別がつけにくいと言えるでしょう。
インフルエンザにかかったかも?と思ったら、副反応の可能性も含め、医療機関を受診することが大切です。
※引用:厚生労働省ホームページ
インフルエンザの予防接種をしてからの効果期間
インフルエンザワクチンは身体のなかでウイルスに対する抗体をつくるのが目的です。抗体はワクチンを接種したらすぐに効果がでるわけではなく、ワクチンを接種してから2週間程度経って効果があらわれてきます。そしてワクチンの持続期間は接種してから5ヶ月程度と考えましょう。では、予防接種を受けると良い時期はいつでしょうか?
インフルエンザの予防接種をする適正な時期
予防接種は12月中旬までに終わらせるとよいでしょう。というのも、インフルエンザの流行時期は例年1月上旬~3月上旬で、流行のピークは1月下旬から2月上旬。ワクチンの効果がこの流行時期をカバーするように、そして流行初期に間に合うようにするのが望ましいと言えます。
ただし、健康状態によってはワクチンが打てない場合もあるため、心配な方は早めに医師に相談するようにしましょう。
インフルエンザの予防接種は何回?
インフルエンザワクチンは年齢によって接種回数が異なります。日本感染症学会が公開している「2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方」(最終更新日2021年9月29日)によると、13歳以上は1回接種、12歳以下は2回接種です。
なお、13歳以上でも医師の判断によってはワクチンを2回接種する場合もあったり、小児では欧米に準じた基準で9歳以上を1回接種にする医療機関があったりします。そのため、予防接種を検討している方は、かかりつけ医によく相談したり、接種予定の医療機関のHPなどを事前に確認したりしておきましょう。
インフルエンザの予防接種以外の予防方法
インフルエンザは基本的な対策をとることで感染を防ぐことができます。せっかく予防接種をしたのに辛い症状に悩まされたと後悔しないためにも、基本的な感染予防策を以下で解説するので、ぜひ実践していきましょう。
流行シーズンは混雑する場所を避ける
インフルエンザの主な感染経路として「飛沫感染」があります。ウイルスを含む飛沫が口や鼻の粘膜を介して体内に入り、感染してしまう様式です。
人混みで混雑した場所では当然、至近距離で人と人がすれ違ったり、同じ空間に多くの人が居合わせたりするでしょう。マスクをしていない感染者が咳やくしゃみをしたらどうでしょうか?混雑した場所では飛沫感染の可能性が高いことは想像に難しくなく、インフルエンザの流行シーズンには人混みを避けるよう行動しましょう。
室内の空気を換気する
マスクをしていない感染者がくしゃみなどをすると、インフルエンザウイルスを含む飛沫が一気に空間中に放出されます。このとき、ウイルスは空気中をある程度漂うことがあります。そのため、室内の空気は定期的に換気しましょう。換気のために窓を開ける場合は空気の流れをつくることができる2ヶ所以上の窓を開けるのが理想的。
換気をすることで、ウイルスを室外に放出したり、一定空間を漂うウイルス量を下げたりして、感染リスクを下げられます。
インフルエンザの流行期は空気が乾燥しています。湿度が低いと気道粘膜の防御機能が弱まってしまうため、換気と併せて室内の加湿も行いましょう。
手洗いや手指消毒を徹底する
主な感染経路には他に「接触感染」があります。ウイルスが付着した手指で目や鼻をこすったりすると、ウイルスが粘膜から体内に入り込んで感染してしまう様式です。この接触感染を防ぐポイントは、手指に付着したウイルスを除去することです。
外出先から返ってきたら、石けんを使って手洗いし、手指に付着したウイルスを洗い流しましょう。
アルコール消毒薬による手指消毒も効果的。アルコール消毒によって、手指に付着したウイルス量を十分に減らせるからです。石けんによる手洗いが難しい外出先では、携帯用のアルコール消毒薬を活用しましょう。十分量のアルコール消毒薬を手に取り、アルコールが乾くまで手指の隅々を消毒しましょう。特に指先、親指、指と指の間、手の甲、手首の消毒は入念に。
予防接種していても日頃からインフルエンザ対策をしよう!
予防接種をしてもインフルエンザにかかるケースは珍しくありません。ワクチンだけに頼らず、普段から紹介したインフルエンザ予防策を併せて行うことが大切です。
ワクチンは流行時期前に接種を終わらせるのが望ましいと言えます。予防接種を検討している方は12月中旬までに済ませておくとよいでしょう。
監修者
医師:佐藤留美
内科医・呼吸器科医・感染症科医・アレルギー科医。 久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科・呼吸器・感染症・アレルギー等の専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器科部長として勤務。
佐藤医師よりコメント
インフルエンザの予防接種をしていても、インフルエンザに感染することがあります。 そのため、ワクチンだけに頼らず、インフルエンザに感染しないように日頃から予防を行っていきましょう。