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【医師監修】ノロウイルス予防に効果的な手洗い方法「衛生的手洗い」を実践しよう! [ノロウイルスなど感染症予防について]

2022.11.28| 感染症・消毒

感染症予防の基本は手洗いであると、よく耳にします。しかし、ノロウイルスなどのウイルスや細菌は目に見えないため、手洗いによる効果を感じにくく、ついおろそかになってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、ノロウイルスの感染予防に対する手洗いの有効性や、効果的な手洗い方法などについて解説します。

ノロウイルス感染予防に手洗いは必須

ノロウイルスの感染を予防するには、汚染された食物の生食を避けたり、患者の嘔吐物を適切に処理したりすることが重要ですが、これらに加えて推奨されているのが、こまめな手洗いです。というのも、ノロウイルスは手指に付着したウイルスを介して感染するというケースも少なくないからです。特にドアノブや手すりといった多くの人が触れる場所にはウイルスが付着している可能性が高く、そこに触れた手指で口や鼻などに触れると、体内にウイルスが侵入し、感染してしまう可能性があります。こうした感染を防ぐため、手洗いによって手指に付着したウイルスを物理的に取り除くことが大切なのです。実際、その効果を証明するものとして、感染症学雑誌に以下の調査結果が報告されています。

この結果から、手に付着したウイルスを取り除くのに手洗いは有効であり、その効果はただ流水での手洗いを短時間行うよりも、石けんを使ったり、時間をかけたりした時の方が高いことが分かります。さらに注目したいのは、④の60秒間しっかりもみ洗いするよりも、⑤の10秒のもみ洗いと15秒のすすぎを2回繰り返す方が、ウイルスを除去する効果が高いという点です。手洗いの方法によってウイルスの残存数は変わってくるため、より効果的な手洗いを実践しましょう。

感染予防に効果的な「衛生的手洗い」を実践しよう

ノロウイルスの感染を予防するには、手洗いが重要だということが分かりました。それでは、どのような方法で手洗いするのがよいのでしょうか。これについて参考にしたいのが、医療現場で患者のケアの前後に行われる、「衛生的手洗い」です。患者のケアの前後には、手に付いた菌やウイルスを最大限、除去するために手洗いが必須ですが、慌ただしい医療現場で、ケアのたびに数十秒も入念に手洗いをすることは簡単ではありません。そのため、ポイントを押さえて手早く洗い、十分に水気を拭った後、仕上げにアルコール剤で消毒する方法が採用されています。以下で、<洗う・拭く・消毒>の3ステップ別に「衛生的手洗い」の手順を紹介しますので、これを参考に実践してみてください。

衛生的手洗いの手順

●洗う
① 手指を流水で濡らし、適量の石けん液を手の平に取り出す
② 手の平と手の平をこすり合わせ、石けん液を十分に泡立てる
③ 手の甲をもう片方の手の平でもみ洗う。逆の手も同様に行う
④ 両手の指を組み、指の間をもみ洗う
⑤ 親指をもう片方の手の平で包み、もみ洗う。逆の手も同様に行う
⑥ 指先をもう片方の手の平にこすりつけるようにして、爪の間を洗う。逆の手も同様に行う
⑦ 両手首まで洗い残しのないよう、丁寧にもみ洗いをする
⑧ 流水で十分にすすぐ

①~⑦までを20~30秒かけて行うのが理想的ですが、先に解説した感染症学雑誌の調査結果を鑑みると、10秒程度であっても、この作業を2回繰り返すことで十分な効果が得られると考えられます。流水によってウイルスを洗い流すため、⑧のすすぎは15秒程度かけて、しっかり行いましょう。

なお、手洗いに使用する流水は、温水が使える環境であれば、ぬるま湯がよいでしょう。ノロウイルスが流行する冬季は、冷たい水だと手洗いがつらいため、洗い方が不十分になってしまう可能性があるからです。温水が使える場合には、ぬるま湯で手洗いをしましょう。

●拭くペーパータオルでしっかり手の水分を取りきる
感染予防のためには、複数の人で共用する布タオルの使用は望ましくありません。家庭であっても、ペーパータオルを使用しましょう。また、仕上げに使用するアルコール消毒剤は、水で薄まると十分な効果が得られません。水気が残らないよう、しっかり丁寧に拭きましょう。

●消毒手指用のアルコール消毒剤をすり込むように両手になじませる
アルコール消毒剤には様々な種類がありますが、エタノールを主成分としたものであれば、ジェルタイプでもスプレータイプでも構いません。消毒剤が両手のすみずみまで届き渡るよう、たっぷりの量を使いましょう。

ノロウイルスの感染を効果的に予防する、手洗いのタイミング

効果的な手洗いの方法が分かりました。それでは、どのタイミングで手洗いを行うのが望ましいのでしょうか。続いて、手洗いのタイミングについて詳しくみていきましょう。

●嘔吐物や糞便に触れた後
用便後や嘔吐物の処理後は、手指にノロウイルスが大量に付着している可能性があります。トイレの後や嘔吐物の処理後、乳幼児のおむつの処理後は2度洗いを徹底しましょう。

●調理の前後
ノロウイルスは目に見えないため、調理する人の手指に、無意識のうちに付着している場合があります。また、調理に使う食材が万が一ノロウイルスに汚染されていた場合、食材を触ることで、ノロウイルスが手指に付着することもあるでしょう。その手で調理器具に触れると、そこにもノロウイルスをうつしてしまいます。こうした状態で調理を行うと、食事にノロウイルスが含まれてしまう可能性が高いです。そのため、調理する人は調理の前後に、2度洗いすることが望ましいです。作業開始前、食品に触れた後、配膳の前など、こまめなタイミングで行いましょう。

このほか、帰宅後や食事の前、ごみを処理した後なども手洗いは必須ですが、この場合は1度洗いでもよいでしょう。なお、手洗いの後は、保湿剤でケアすることも大切です。というのも手洗いを頻繁に行うことで皮脂が取り除かれてしまうため、手荒れを引き起こす場合があります。手荒れの症状自体もつらいですが、手が荒れると、皮膚の表面の凹凸が大きくなり、そのすき間にノロウイルスが入り込んでしまうため、手洗いによって十分に取り除くことが難しくなってしまうのです。ハンドクリームや保湿剤を携帯し、外出先でも、手洗いのたびにしっかりケアを行いましょう。

まとめ

日常生活の中で、無意識のうちにさまざまな場所に触れる手指は、ノロウイルスが付着しやすい部位です。だからこそ、手洗いによって物理的にウイルスを取り除くことが、感染予防において大切なのです。手洗いの効果をより高めるためには、「衛生的手洗い」の手順に沿った、効率的な手洗いが有効です。今回紹介した内容を、ノロウイルスの感染予防に役立ててくださいね。

木村医師よりコメント

流水で手洗いするだけでも、ウイルス量を約1%まで軽減できますが、石鹸を使いしっかり流水で流すことで手についたウイルスは、ほぼいなくなります。その一方、手洗いを繰り返すと手が荒れやすくなります。手が荒れてしまうと、皮膚バリアが破壊され、感染にも弱い状態になってしまうため、手洗いとあわせて、ハンドクリームなどでの保湿ケアも心がけるようにしてください。

監修者

医師:木村眞樹子

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

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