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【医師監修】赤ちゃんがノロウイルスに感染したらどうすればいい? 対処法や予防対策について [ノロウイルスなど感染症予防について]

2022.11.28| 感染症・消毒

大人が感染してもつらいノロウイルスが、万が一、赤ちゃんに感染したらどうしよう…? 流行期には気が気でないママも多いのではないでしょうか。大切な赤ちゃんをノロウイルスから守るためにも、何ができるのか、きちんと知っておきたいですよね。そこで今回は、赤ちゃんがノロウイルスに感染した際の対処法や予防対策などについて解説します。

赤ちゃんがノロウイルスにかかった時の症状

赤ちゃんがノロウイルスに感染すると、大人と同様に感染性胃腸炎を発症するケースが多く、突発的な嘔吐や下痢、発熱などの症状が現れます。発症から回復までの期間も大人と同様で、1、2日から数日程度で治癒する場合がほとんどです。軽症で済むケースが多いですが、体の生理機能が未発達な乳幼児の場合、嘔吐や下痢から脱水症状を引き起こし、命に関わる重篤な事態を招くことも少なくありません。赤ちゃんは体の不調を言葉で説明できないからこそ、周囲の大人が経過観察をしっかり行い、適切に対処することが大切です。

赤ちゃんがノロウイルスにかかった時の対処法

赤ちゃんがノロウイルスにかかった場合、どのように対処するのがよいのでしょうか。それを考える大前提として、まず、赤ちゃんの異変にいち早く気づくことが大事です。赤ちゃんは自らSOSを発することができないため、ママや周囲の大人が体調の変化に気が付かなければ、どんどん症状が悪化してしまいます。赤ちゃんに熱があり、嘔吐や下痢が繰り返される場合は、ノロウイルスをはじめ、何らかの感染症にかかっている可能性が高いです。これらの症状がみられたら、速やかに医療機関を受診しましょう。受診すれば、簡単な検査でノロウイルスにかかっているかどうかの鑑別が可能です。

検査の結果、ノロウイルスに感染していることが分かったら、対処療法で回復を目指します。というのも、現段階ではノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤がまだないため、赤ちゃん自身が下痢や嘔吐によって体内からウイルスを排出し、自然に治癒することを待つしか手段がないためです。前にも解説したとおり、ノロウイルスによる感染症は比較的軽症で済むことが多く、後遺症の心配もありませんが、赤ちゃんの場合、下痢や嘔吐が続くと脱水症状を引き起こす可能性があるため、こまめに水分補給を行いながら、注意深く経過を観察してください。与える飲料は、白湯を冷ましたものや麦茶のほか、症状によっては、体に吸収されやすく、脱水症状を効果的に防いでくれるイオン飲料や経口補水液を与えるよう医師から指導される場合もあるようです。いずれの飲料も少量を数回に分けて、こまめに与えるようにしましょう。

なお、こまめに水分補給をしても、下痢や嘔吐の症状がひどかったり、赤ちゃんが飲料を受けつけなかったりすると、脱水症状が進行してしまう場合があります。水分補給を行っているにもかかわらず、赤ちゃんに元気がなく、おしっこの量が少ないなど様子がおかしいと感じたら、すぐに医療機関へかかりましょう。場合によっては、点滴などの処置が行われます。

赤ちゃんがノロウイルスにかかった時、母乳はあげてもいい?

赤ちゃんがノロウイルスに感染し、嘔吐や下痢の症状がある時、母乳をあげていいものか悩んでしまうママも多いでしょう。結論からいえば、母乳をあげること自体は問題ありません。母乳は赤ちゃんの胃腸への負担が少なく、胃腸が弱っている状態でも消化吸収されやすいと考えられているからです。とはいえ、胃腸の機能は低下しているため、いつもと同程度の量を与えることは望ましくありません。一度の授乳で与える母乳の量は、通常よりも少なめがよいでしょう。

さらにもう一点、授乳の際に注意したいことがあります。それは、ママの二次感染予防です。授乳をする際、ママと赤ちゃんは体を密着させます。この状態で赤ちゃんが嘔吐や下痢をしてしまうと、それらに含まれたウイルスがママの衣服や手などに付着し、二次感染を引き起こす可能性があります。授乳する際は、使い捨てのマスクやエプロンを着用し、汚れたらすぐに取り換えましょう。また授乳の都度、入念に手洗いを行ってください。

ママがノロウイルスにかかっている時に母乳をあげてもいい?

ママが感染していても、母乳にウイルスが含まれることはないため、母乳をあげても問題ないとされています。むしろ、母乳をあげることが望ましいとの考え方もあるようです。なぜなら、ノロウイルスに感染したママの体には抗体が作られるので、母乳を通じて赤ちゃんに抗体が与えられることで、感染予防になると考えられているからです。ただし、前にも解説したとおり、授乳の際、ママと赤ちゃんは密着するため、ママの衣服や手に嘔吐物が付着していると、赤ちゃんにウイルスがうつってしまう可能性があります。ノロウイルスに感染したママが授乳する際は、嘔吐物が付着している可能性のある衣服は着替え、しっかり手を洗い、マスクを着用したうえで授乳しましょう。もちろん、授乳がつらい時は、無理は禁物です。一時的に粉ミルクを利用するなどして乗り切りましょう。

赤ちゃんをノロウイルスから守る、感染予防法は?

大切な赤ちゃんをノロウイルスから守るには、感染経路を断つことが有効です。ノロウイルスの主な感染経路は、何らかのかたちでウイルスが口から侵入する経口感染といわれており、具体的には次の4つのケースがあると考えられています。

① 感染者の嘔吐物の飛沫を吸いこむ
② 感染者が調理をすることで、食品や食器、調理器具にウイルスが付着し、それらを介してウイルスが体内に侵入する
③ ノロウイルスに汚染された食品や飲料を口にする
④ ノロウイルスの付着したものに触れた手指で口に触れる

これらのいずれも、赤ちゃん自身が対策を講じることはできないため、家族みんなで環境を整え、ノロウイルスから赤ちゃんを守りましょう。その対策として、以下の方法が有効です。

感染者の嘔吐物を適切に処理する

ノロウイルスは適切に消毒しなければ、感染力を持ったまま数日間、生存すると考えられています。感染者の嘔吐物が床や絨毯に付着した場合、しっかり消毒をしていなければ、赤ちゃんがその上をハイハイして通ることで感染する可能性があります。床や絨毯に付着した嘔吐物を処理する際は、ペーパータオルで取り除いた後、0.02%濃度に希釈した次亜塩素酸ナトリウムで浸すように拭き、仕上げに水拭きを行います。使用後のペーパータオルなどはビニール袋に入れ、0.02%濃度に希釈した次亜塩素酸ナトリウムを浸すほど入れてから密閉し、廃棄しましょう。

赤ちゃんのために使う調理器具や、口に入るものを消毒する

離乳食を作る鍋やボウルなどの大きな物は、食器用の洗剤で十分に洗浄した後、0.02%濃度に希釈した次亜塩素酸ナトリウムを浸したペーパータオルで拭き、仕上げに水拭きをします。哺乳瓶やスプーンなどの小さな物は、85度以上の熱湯で1分間以上加熱して消毒しましょう。赤ちゃんは興味のあるものを口にするため、お気に入りのおもちゃや手に取りやすい物も、同様に消毒を行うのが望ましいです。

まとめ

小さな赤ちゃんが下痢や嘔吐を繰り返すと、とても心配になってしまいますよね。ノロウイルスはいつ、どこで感染するか分からないため、万が一に備えて、症状や対処法を正しく理解しておきましょう。また、自分で自分の身を守ることができない赤ちゃんは、周りの大人がしっかり環境を整えて、守ってあげなければなりません。今回紹介した予防法を参考に、ノロウイルス対策を徹底して行いましょう。木村医師よりコメント
赤ちゃんの体は大人にくらべて水分が占める割合が多いため、脱水になりやすい傾向にあります。下痢や嘔吐が続くことで消耗し、脱水にもかかわらず水分を摂る体力すらない、という場合もあるかもしれません。「赤ちゃんのおしっこが出ない」これは脱水のサインです。母乳は消化がよく、赤ちゃんの補水としてはとてもよいと考えられていますが、赤ちゃんに授乳する力がなく、全然飲めていない、ということがないように気をつけてください。脱水が改善できない場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。

木村医師よりコメント

赤ちゃんの体は大人にくらべて水分が占める割合が多いため、脱水になりやすい傾向にあります。下痢や嘔吐が続くことで消耗し、脱水にもかかわらず水分を摂る体力すらない、という場合もあるかもしれません。「赤ちゃんのおしっこが出ない」これは脱水のサインです。母乳は消化がよく、赤ちゃんの補水としてはとてもよいと考えられていますが、赤ちゃんに授乳する力がなく、全然飲めていない、ということがないように気をつけてください。脱水が改善できない場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。

監修者

医師:木村眞樹子

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

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