【医師監修】ノロウイルスの消毒に最適! 次亜塩素酸ナトリウムの効果と、用途別の消毒方法
2022.11.28| 感染症・消毒
ノロウイルスの予防対策として、身の回りの消毒は有効です。しかしノロウイルスは薬物耐性の高いウイルスとして知られているため、確実に消毒するには優れた殺菌作用を持つ次亜塩素酸ナトリウムを含んだ消毒液の使用が推奨されています。今回は、そんな次亜塩素酸ナトリウムの効果や、有効な消毒の方法を解説します。
ノロウイルスの感染力を取り除く、優れた消毒剤・次亜塩素酸ナトリウム
●次亜塩素酸ナトリウムの効果
次亜塩素酸ナトリウムは、高い殺菌力を持つ消毒剤です。微生物の呼吸を阻害して活動を止める殺菌作用があるため、インフルエンザウイルスやサルモネラ菌といった比較的消毒剤が効きやすい微生物だけでなく、薬物耐性の高いノロウイルスなどの消毒にも適しています。
さらに次亜塩素酸ナトリウムには漂白作用もあるので、家庭用の塩素系漂白剤にも用いられています。市販されている家庭用漂白剤の次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、5%程度に調整されていますが、そのまま使用するには濃度が濃すぎて手や布を傷める恐れがあるため、用途に応じて水での希釈が必要です。また、手軽に入手できる家庭用漂白剤のほかには、医薬品もあります。医薬品の濃度は2%や6%などさまざまですが、目的に合わせて水で希釈するといった使い方は変わりません。感染症に備えて、日頃から常備しておくとよいでしょう。
ノロウイルスに汚染された衣類の洗濯方法
ノロウイルス感染者の嘔吐物や便には大量のウイルスが含まれており、これらが付いた衣服やベッドリネンなどは、二次感染の原因になるため、速やかに洗う必要があります。ただし、通常の洗濯方法ではノロウイルスを殺菌することができないため、次亜塩素酸ナトリウムを用いて消毒洗いを行いましょう。まずは正しい洗濯手順や準備を紹介します。なお、どうしてもすぐに洗濯できない場合は、ウイルスが飛散しないようにビニール袋に入れて密閉した状態で保管し、できるだけ早く洗うようにしましょう。
●洗濯に必要なもの
・使い捨てマスク
・使い捨て手袋(ゴムまたはビニール製のもの)
・使い捨てのガウンやエプロン(ビニール製で、膝まで隠れる長さのもの)
・次亜塩素酸ナトリウムを含む漂白剤 ※洗濯用の酸素系漂白剤は不可
・水(適量)
・ペーパータオルまたは新聞紙
・ゴミ袋
・バケツまたは洗濯桶
●洗濯する人の装備
ノロウイルスが身体に付着しないよう、使い捨てのマスク、エプロン(ビニール製)を装着します。髪が長ければ後ろで一つにまとめ、前髪はピンなどで留めましょう。また、消毒液は装飾品を傷める可能性もあるため、腕時計や指輪などは外し、ゴム手袋を二重に装着してください。
●洗濯の手順
1.消毒液を作る
まずは衣類の消毒に適した、0.02%濃度の次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒液を作ります。家庭用漂白剤であれば、次亜塩素酸ナトリウムの濃度は5%なので、水1Lあたり4mlの原液を混ぜることになります。医薬品の場合も、原液の濃度に応じて水の量を適宜調整してください。なお、家庭用漂白剤も医薬品も、原液に直接触れると皮膚がただれることがあるため、取扱いには十分注意しましょう。
2.衣類についた嘔吐物を取り除く
ペーパータオルや新聞紙に消毒液を浸して、嘔吐物が飛散しないよう、静かに取り除きます。使用したペーパー類はすぐにゴミ袋に入れ、しっかり密閉してから処分しましょう。
3.下洗いをする
衣類から嘔吐物を取り除いた後、水を張ったバケツや洗濯桶で下洗いします。この時、汚れた箇所を手でゴシゴシすり合わせるのではなく、衣類の端をつまんで水の中で揺らすようにして、汚れを洗い落としましょう。
4.衣類を消毒
下洗いした衣類を絞って水気をきったら消毒を行います。嘔吐物が付着していた箇所を中心に、その周囲を含む広い範囲に消毒液をかけて浸透させてください。0.02%濃度の消毒液で衣類を除菌する場合、推奨されている浸透時間は5分です。5分以下では効果が下がるので注意しましょう。
5.洗濯機で洗濯
消毒が完了したら、洗濯機で普段通りに洗濯します。その際、万が一残っていたウイルスがほかの衣類に付着すると二次感染の原因となるため、通常の洗濯物とは分けて洗いましょう。またノロウイルスは高温に弱いため、仕上げに高温の乾燥機を使うとより効果的です。
●色柄物の洗濯手順
色落ちしやすい色柄物を消毒する場合は、高温消毒という方法がオススメです。ノロウイルスは85℃以上の高温で1分以上加熱すると死滅するので、以下のいずれかの方法で高温消毒をしましょう。
・スチームを当てる
スチームアイロンを使って、スチームを当てます。布についた嘔吐物を取り除いた後、汚れた箇所の周囲を含む、広い範囲にスチームを当てましょう。生地の厚さによって差がありますが、95℃の設定で1分以上スチームを当てれば効果があると考えられています。
・衣類を熱湯に漬ける
シンクに二重にしたごみ袋の口を広げ、衣類を入れた後、85℃以上の熱湯をかけて1分以上漬け置きます。
いずれの方法も、嘔吐物をしっかり取り除いてから行うよう注意してください。嘔吐物は高温にさらされると固くなるため、衣類に残っているとこびりつき、余計に取れにくくなってしまいます。また高温消毒の場合、色落ちは軽減されますが、生地の種類によっては縮みが生じたり、風合いが損なわれたりすることがあります。洗濯表示を必ず確認してから行いましょう。
ノロウイルスが潜む、調理器具やドアノブなどの消毒方法
ノロウイルス感染者は、嘔吐や下痢などの症状が治まった後も、1週間から長い場合は1カ月ほど便からウイルスを排出し続けるといわれています。家庭内で感染を広げないためには、よく手に触れるものやウイルスが付着しそうなものなどを、確実に消毒することが大切です。消毒する物や場所に合わせて次亜塩素酸ナトリウム消毒液の濃度を調整したり、煮沸消毒やスチーム殺菌などを選んだりして、それぞれに適した消毒方法を使い分けましょう。
・調理器具
一般的な食器用洗剤で洗浄したあと、次亜塩素酸ナトリウムを0.02%の濃度に調整した消毒液をペーパータオルなどに含ませて、浸すように拭きます。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは金属をサビさせる作用があるため、金属性の調理器具を消毒する際は煮沸する方がよいでしょう。この場合は、お湯を沸かした鍋の中に食器を入れ、1分以上煮沸してください。
・ドアノブや手すり
ドアノブや手すりは多くの人が触れるので、特に菌がつきやすい場所。消毒する際は、次亜塩素酸ナトリウムを0.02%~0.05%の濃度に調整した消毒液で浸すように拭きます。仕上げに消毒液が残らないよう、清潔なペーパー類で十分に拭き上げましょう。なお、サビやすい金属部分は、次亜塩素酸ナトリウムの希釈液の代わりにアルコール消毒をするのがオススメです。
・トイレ・浴槽
次亜塩素酸ナトリウムを0.02%の濃度に調整した消毒液で浸すように拭きます。その後、仕上げに水を流したり、クリーナーで拭いたりしてください。
まとめ
次亜塩素酸ナトリウムは手軽に入手できる消毒剤ながら、優れた殺菌効果を発揮してくれる、頼もしいアイテムです。使う場所や物によって適切な濃度が異なり、ほかの消毒方法の方がよいケースもあるため、今回紹介した内容を参考に、用法・用量を守って実践しましょう。
監修者
医師:木村眞樹子
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。
木村医師よりコメント
次亜塩素酸にはノロウイルスを殺菌する作用がありますが、直接触れると手が荒れるケースもある強い薬です。せっかくの消毒も使い方を間違うと効果がないばかりか、毒になりかねません。正しい使い方と対処法を身につけ頭に入れておくことで、いざというときに素早く対処できるはずです。ノロウイルスだけでなく、他にもさまざまな使い方がありますので、賢く普段の生活に取り入れてみてください。