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【医師監修】子どもはノロウイルスに感染しやすい? 子ども特有の感染経路や症状について

2022.11.28| 感染症・消毒

子どものいる家庭にとって、冬場はいつも以上に感染症予防に気を使う季節。なかでもノロウイルスは、子どもの突然の嘔吐に始まり、その後家族も立て続けに同じ症状に見舞われるケースが多いといわれます。そこで今回は、子どもならではの感染経路や症状についてみていきましょう。

子どもならではのノロウイルス感染経路

指をなめる子ども

インフルエンザやRSウイルスと並んで、冬の3大感染症に挙げられるノロウイルス。子どもだけでなく幅広い年齢層で感染しますが、学校や幼稚園、保育園などでのノロウイルスの集団感染をニュースで耳にする機会が多いため、子どもがかかりやすいというイメージがあるかもしれません。
一般的に子どもは大人に比べて免疫力が弱いとされ、特に乳幼児は、生後6カ月頃を過ぎると母親から胎盤を通して受け取っていた免疫が減少してくるため、感染症にかかりやすいといわれています。さらに、子ども特有の感染経路も多いと考えられています。

●集団生活での濃厚な接触
長い時間を集団で過ごす学校や園は、食事や遊び、昼寝を通して子ども同士が濃厚に接触する機会が多く、嘔吐物の飛沫や、ウイルスが付着した手を介してノロウイルスに感染しやすい環境だといえます。例えば、感染している子どもがウイルスの付いた手でおもちゃを触り、そのおもちゃで遊んだ他の子どもの手にウイルスが付着して、手から口や鼻にウイルスが入ることで感染が引き起こされます。

●「なめなめ期」「ハイハイ期」特有の行為
6カ月~2歳くらいまでの乳幼児は好奇心が旺盛で、目や手と合わせて口でモノの形や感触を判別しようとします。おもちゃや文房具、時にはスリッパなど、何でもなめたり口に入れたりしてしまうため、ウイルスが体内に入るリスクが高くなるのです。
また、この年齢の子どもは床をハイハイしたり、床の上でおもちゃ遊びをしたりするため、ウイルスが床に飛び散っていると手指に付着しやすくなります。そのため指しゃぶりをする子どもも感染しやすいと考えられるでしょう。

●衛生対策がおろそかになりがち
手に付いたノロウイルスを洗い流すには、しっかりと泡立てた石けんで指のすき間や手首までていねいに洗い、流水で十分にすすぐ必要がありますが、子どもは見た目に汚れがなければ手洗いをおろそかにしがちです。ウイルスが手に取り残されたまま、手づかみでものを食べたり、なめたりすることで感染してしまうのです。
またノロウイルスは、症状が治まった後も2週間~1カ月間は便にウイルスが排出され続けます。子どもは排便時にトイレを汚すことが多く、手洗いも不十分になりがちなため、学校や園ではトイレが集団感染の感染源となりやすいのです。

●子どもは大人より嘔吐しやすい
ノロウイルス感染症にかかると、子どもは嘔吐することが多く、大人は下痢をすることが多いという傾向があります。嘔吐物や便には大量のウイルスが含まれているため感染源になりやすいうえ、特に嘔吐は突然起こることが多いのでトイレに間に合わず、床や衣類、壁にまで飛び散ってしまうことも少なくありません。飛沫が周囲に飛び散ったり、きちんと処理できずに取り残されたウイルスが乾燥して舞い上がったりすると、それを吸い込んだり手に付着したりして、最終的に体内に入ることで二次感染してしまうのです。

子どもが注意したいノロウイルスの症状とは

ノロウイルスに感染すると、1、2日の潜伏期間を経て、突然の吐き気や嘔吐、水様性の下痢、腹痛、軽度の発熱などの症状が現れます。通常は発症から2日ほどで症状が治まり、後遺症は残らないとされていますが、免疫力の弱い子どもは重症化しやすいので注意が必要です。特に子どもが注意したい症状には次のようなものがあります。

●脱水症状
子どもは、大人に比べて体内の水分量が多く、1日に必要とする体重当たりの水分量も多いとされています。しかし、体内の水分量を調節する機能が未熟なために、少しの嘔吐や下痢でも脱水症を起こす可能性があります。さらに、子どもは上手に自分の症状を説明できないことが多いので、周りの大人が注意深く見守る必要があります。
例えば、「泣いても涙があまり出ていない」「口の中がベタベタしている」「おしっこの回数やおむつを替える回数が減った」といった症状は脱水症状のサイン。さらに重症化してしまうと、「泣いても涙が出ない」「目が落ちくぼむ」「口の周りや口の中が乾いている」「ぐったりして元気がない」「嘔吐物に緑色の部分がみられる」「顔色が悪い」「体重が約1割減る」といった症状が現れます。

●低ナトリウム血症
便や嘔吐物があると、ナトリウムやカリウムなどの電解質も一緒に体の外に排出されてしまいます。そのため、下痢や嘔吐がある間は、水分だけでなく塩分不足にも注意が必要です。食事が取れない状態で下痢嘔吐が続くと、低ナトリウム血症を発症しやすくなり、頭痛を引き起こしたり、意識がもうろうとしたりします。さらに重症化すればひきつけを起こし、最悪の場合は死に至るケースもあります。

ほかにも、子どもが感染した場合は、嘔吐物を喉に詰まらせて窒息してしまったり、けいれんや脳重責、脳症などの合併症を併発したりすることがあります。特にけいれんは、軽度の胃腸炎でも引き起こされる場合があるので、周りの大人が注意して見守ってあげてください。

ノロウイルスの検査・治療について

眠る子ども

今のところ、ノロウイルスを失活化させる特効薬はなく、対症療法を行うのが一般的です。症状がさほどひどくなければ、水分や栄養を補給しながら自宅で療養して回復を待つことも可能です。ただし、先にも述べたように子どもは脱水症状を引き起こしやすいため、嘔吐や吐き気がひどく、水分の補給がままならない場合や、下痢の回数が多い時は、病院で点滴を受けるなどの治療が必要になります。

●診断や検査の内容
医師による問診では身体観察と合わせて、症状の経過、学校や園での流行情報、家族の感染状況を確認しながら、ノロウイルスの感染を総合的に判断します。その際、ノロウイルス感染症と診断を確定させる場合には、便中ノロウイルス有無検査します。

通常の医療機関でできる簡易検査は15~30分程度で結果が判明する「ノロウイルス抗原検査」で、保険適応となるのは重症化のリスクが高い「3歳未満・65歳以上・特定の疾患を持つ人」のみとなります。時間で結果が分かるメリットがある一方で、感染していても陽性反応がみられないケースもあります。また、ノロウイルスだと分かったとしても治療法に変わりはないため、基本的には確定診断は行わないことが多いです。

より確実に判別するためには、専門機関での高感度な検査を行うことになりますが、日数がかかり高額なため、主に施設での集団感染の疑いがある場合や、調理従事者が利用するケースが多いです。

●治療法
子どもは脱水症状を引き起こしやすいため、適切な水分補給を行うことが大切ですが、嘔吐して吐き気が治まらないのに水を飲ませてしまうと、かえって症状が悪化してしまうことにもなりかねません。子どもが欲しがるままに飲ませたり、水分補給しなければと焦ってやみくもに与えたりせずに、症状をみながら量やタイミングを調整して、少しずつ補給するようにしましょう。脱水時には、水分だけでなく多量の塩分も失われているので、塩分や糖質がバランスよく配合された経口補水液を与えるのがオススメです。
なお、乳幼児がノロウイルスと診断された場合、発症後1、2週間経っても下痢が治まらないことがあります。このような場合、腸管が弱って母乳やミルクに含まれている乳糖を分解できなくなる「乳糖不耐症」を引き起こしている可能性が考えられます。医療機関で乳糖分解酵素剤を処方してもらえるので、母乳を与える前に飲ませたり、ミルクの場合には一緒に調整したりして飲ませることで、乳糖消化の助けになります。

まとめ

学校や園などで長時間を過ごす子どもは、集団生活の中でノロウイルスと接触する機会が多く、感染しやすくなります。なかでも乳幼児は、免疫力が弱いうえに、ウイルスが付着したおもちゃをなめたり、床で遊んだりするため、日頃から親子で手洗い・消毒を徹底することが大切です。万が一感染してしまった時は、周りの大人が症状を注意して見守ってあげましょう。

木村医師よりコメント

子どもは集団生活に入ると、すぐに熱を出すイメージがあるのではないでしょうか。ノロウイルスは特に感染力が強く、おもちゃを共有しているような環境の場合、簡単に移ってしまうのです。また、子どもは大人にくらべて体の水分の割合が多く、下痢嘔吐が続くとすぐに脱水になってしまいます。ノロウイルス感染症を治す薬はありません。できるだけならないように、なってしまった場合には、根気よく水分を摂取させてあげてください。

監修者

医師:木村眞樹子

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格。

 

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