ノロウイルスの潜伏期間ってどのくらい?感染の拡大を予防するためにできることとは?
2022.11.28| 感染症・消毒
ノロウイルスに感染すると、一定の潜伏期間を経て嘔吐や下痢などの特徴的な症状が出てきます。重症化するケースもあるため、迅速に対処する必要がありますが、もうひとつ注意したいのが、潜伏期間中でも他者へ感染を拡大させる恐れがあるということです。今回は、ノロウイルスの潜伏期間と感染拡大を防ぐためにできることについて紹介します。
潜伏期間とは
潜伏期間とは体内に病原体が侵入してから、症状が出るまでの期間のこと。一般的に何らかの病原体に感染した際は、症状が出るまでに時間がかかると言われています。この潜伏期間は病原体の種類によって異なりますが、はしかは10~12日、風疹や水ぼうそう、おたふくかぜでは2、3週間ほどウイルスが体内に潜伏しています。また、潜伏期間の長いものでは結核などがあり、6カ月~2年もの間ウイルスが体内に潜伏し、その後症状が出現します。
ノロウイルスの潜伏期間
ノロウイルスの場合、感染から発症までの期間はおよそ24~48時間と、潜伏期間がかなり短いのが特徴です。微細で感染力が強いため、いつの間にか感染してしまっていることが少なくありません。ノロウイルスが流行する冬場に、突発的に嘔吐したり、下痢が続く場合には、感染している可能性が高いと考えられます。
潜伏期間中にノロウイルスに感染したことは分かる?
感染してはいるものの、症状が出ていない潜伏期間。下痢や嘔吐といった具体的な症状がみられないため、感染したかどうか自分では分からないのが実情です。
ノロウイルスに感染したかどうか分かる検査
症状が出ていない潜伏期間であっても、病院を受診すれば感染したかどうかを検査することができます。その検査は「ノロウイルス抗原検査」と呼ばれ、キットを使って便中のノロウイルス抗原を検出するものです。綿棒に付着させた便をチューブ内で緩衝液と混ぜ、デバイスに滴下し、反応を見ます。陽性反応が出たらノロウイルスに感染していることになります。一般的には、医師が医学的に必要と判断した場合にのみ行われるこの検査。手軽に行うことができ、かつ結果も早く出るというメリットはありますが、簡易的な検査であるため、感染していても陽性反応が出ない場合があります。そのため、あくまでも診断の補助として用いられています。なおこの検査は、病状の重症化が懸念される3歳未満の乳幼児、65歳以上の人を対象に健康保険が適用されます。具体的な症状はなくても、ノロウイルスが流行している、身近に感染者がいるなど感染の疑いがある場合には医療機関に問い合わせてみましょう。
潜伏期間が終わるとノロウイルスの症状が出始める
ノロウイルスの症状
ノロウイルスに感染すると1、2日の潜伏期間を経て、吐き気、嘔吐、下痢などが起こり始めます。特に突発的に起こる吐き気が強く、嘔吐や下痢は1日中続きます。発熱を起こす場合もありますが、大半は37度程度の微熱です。そのほかに腹痛や頭痛、悪寒、体の痛み、咽頭痛、倦怠感などを伴うことがあります。まれにノロウイルスに感染しているのに症状がみられない「不顕性感染」というケースもあります。
これらの症状はほとんどの場合、2、3日で回復し大事に至ることはありませんが、嘔吐や下痢を繰り返す中で脱水症状にならないよう、しっかりと水分補給を行うことが重要です。なお、症状が回復しても、一度体内に入ったノロウイルスは2週間ほど(長い人は1カ月ほど)体内に存在しており、便としてウイルスが排出され続けます。そのため二次感染にも注意が必要です。
感染を拡大させないために気をつけること
ノロウイルスは感染力が強いため、すでに感染している人の周囲では二次感染を起こさないための対策が必要です。感染者が嘔吐を起こしてしまった場合は、適切に迅速な対処で感染源を除去します。また、手指を介してウイルスが広がるため、感染者はもとより周囲の人も手洗い・うがいを徹底しましょう。
●嘔吐物の処理は慎重に
ノロウイルスは微細なものでも感染源になるため、床に飛び散った嘔吐物は適切な処理をして感染拡大を防止することが大切です。特に嘔吐物には大量のノロウイルスが含まれているので、処理は慎重に徹底的に行いましょう。
<嘔吐物の処理方法>
まずは窓を開けて部屋の換気を行います。嘔吐物の周囲には人を近づけないようにし、処理する人はマスクや手袋をして拭き取りの際に起こる飛沫を防御できるようにしましょう。嘔吐物は外側から内側に向けて、拭き取り面を折り込みながら静かに拭き取ります。使用した雑巾はビニール袋に入れて、密封してからゴミ箱へ。嘔吐物が付着していた床とその周辺は、塩素系漂白剤を50倍程度に希釈した消毒液を浸した布で拭き取り、最後に水拭きを行いましょう。
また、嘔吐で汚れた衣類も感染源になります。洗濯機に入れる前にマスクと手袋をした状態で水洗いし、消毒してから洗濯します。衣類の消毒は塩素系漂白剤を使うか、85度以上の熱湯で1分以上煮沸しましょう。処理後はすぐにせっけんで手洗いを。しっかり洗い流したら、手にアルコール消毒を行ってください。処理後もしばらくは換気しておきましょう。
●手洗い・うがいの徹底
手洗い・うがいも効果が期待できる予防法のひとつ。学校や職場などから帰宅後、食事の前にはせっけんによる手洗いとうがいを徹底しましょう。特に、トイレ後の手洗いは徹底して行ってください。感染した人の便には大量のノロウイルスが含まれ、それらは便座だけでなく、レバーやドアノブなどにも付着している可能性があります。そのため、トイレの掃除・除菌もさることながら、手洗いで十分にウイルスを洗い流すことが大切です。
また、感染者においても同様に手洗いうがいを行い、二次感染が起こらないようにしましょう。特に感染者の排便時に手が汚染されてしまうと、その手で触れた場所が次々に汚染されることになります。その汚染された場所を感染していない人が触ることで、二次感染につながるため、感染者の手洗いも重要なのです。
なお、手洗いの際にはせっけんを使用してください。せっけんにウイルスを殺す力はありませんが、付着しているウイルスを取り除きやすくします。また、手洗い用のブラシを使って爪の間を洗うとより効果的です。さらに衛生的な状態を目指すなら2度洗いがおすすめです。
まとめ
感染力の強いノロウイルスは、汚染したものに触れなくても、飛沫や空気などによって体内に侵入してきます。そして1、2日の潜伏期間を経て、嘔吐や下痢などの症状が出始めます。潜伏期間中でも行える検査があるので、ノロウイルスを早期発見できる可能性があります。早期に発見することができれば、会社や学校を休むなど、感染拡大の防止にも有効です。とはいえ、まずは一人ひとりが体内にウイルスを取り込まないことが重要です。まだ感染していない人は予防のために、感染者は感染拡大を防止するために、徹底した手洗いうがいを心がけましょう。