消毒薬のQ&A

消毒薬のQ&A

消毒薬の基礎知識

消毒薬綿球の調製後の使用期限は?

ポビドンヨード

ポビドンヨード原液(イオダイン®、イソジン®Mなど)の含浸綿は比較的安定でかつ微生物汚染を受けにくいので、14日間程度まで使用可能です。

アルコール

アルコールは揮発性を示すので、容器の気密度によって使用期限が異なってきます。たとえば、万能つぼ内のアルコール含浸綿球の使用期限は、揮発を考慮して7~14日間程度とします1,2)

低水準消毒薬

ベンザルコニウム塩化物(ザルコニン®、オスバン®)やクロルヘキシジン(ステリクロン®、ヒビテン®)などの低水準消毒薬を含浸した綿(ガーゼ)は細菌汚染を受けやすいです。
表1には、万能つぼ内の消毒薬綿球の微生物汚染について示しました。ポビドンヨードや消毒用エタノールの含浸綿では汚染はみられなかったものの、ベンザルコニウム塩化物含浸綿やクロルヘキシジン含浸綿では医療スタッフが取り扱っていた場合で12~13%、患者が取り扱っていた場合で67.7%もの汚染率でした3-5)
したがって、これらの低水準消毒薬の含浸綿(ガーゼ)の調製後の使用期限は、24時間とする必要があります。また、低水準消毒薬の含浸綿(ガーゼ)は細菌汚染を受ける可能性があるので3-6)、決してアンプルやバイアルの消毒に用いてはなりません7-8)。アンプルやバイアルの消毒には、アルコール含浸綿(ガーゼ)を用います。アルコールは殺菌力が強くかつ速乾性で、細菌汚染を受ける可能性がないからです(チリやホコリなどの混入による芽胞汚染を除く)。
なお、低水準消毒薬の含浸綿球は細菌汚染を受けやすいので、これらの含浸綿球を自施設で調製することは勧められません。滅菌済みの個包装製品(ザルコニン®0.025%綿球、ステリクロン®0.05%綿球など)の使用が勧められます。
表2に、消毒薬の含浸綿球の使用期限をまとめました。

表1.万能つぼ内の消毒薬含浸綿球の微生物汚染
消毒薬(使用状況) サンプル番号 生菌数/mL おもな汚染菌 使用日数
ポビドンヨード
(病棟で使用)
1~200 0 7
消毒用エタノール
(病棟で使用)
1~200 0 7
0.02% ベンザルコニウム塩化物
(病棟で使用)
1 2.5×107 Pseudomonas putida >30
2 4.9×106 Pseudomonas putida >30
3 2.5×106 GNGB* >30
4 1.2×106 Alcaligenes xylosoxidans >30
5 1.0×106 Pseudomonas aeruginosa >30
6 8.5×105 GNGB 7
7 7.4×105 Stenotrophomonas maltophilia >30
8 7.0×105 Stenotrophomonas maltophilia >30
9 1.2×105 Pseudomonas aeruginosa >30
10 1.0×105 Burkholderia cepacia >30
11 2.6×104 Pseudomonas chlororaphis >30
12 2.0×104 GNGB >30
13~100 0 7
0.02% ベンザルコニウム塩化物
(患者が在宅で使用)
1 1.5×108 GNGB 不明
2 6.4×107 Pseudomonas fluorescens
3 4.0×107 Serratia marcescens
4 3.5×107 Serratia marcescens
5 3.5×107 Comamonas acidovorans
6 2.4×107 Pseudomonas aeruginosa
7 1.8×107 Enterobacter agglomerans
8 1.6×107 Aeromonas hydrophila/caviae
9 1.2×107 Pseudomonas aeruginosa
10 1.1×107 Pseudomonas spp.
11 1.0×107 Serratia marcescens
12 7.8×106 Alcaligenes xylosoxidans
13 7.6×106 Pseudomonas spp.
14 6.0×106 Pseudomonas aureofaciens
15 3.1×106 GNGB
16 5.5×105 Pseudomonas aeruginosa
17 5.0×105 GNGB
18 4.5×105 Alcaligenes xylosoxidans
19 2.0×105 Pseudomonas spp.
20 1.5×105 Pseudomonas fluorescens
21 9.0×103 GNGB
22~31 0 -
  1 6.8×106 Sphingobacterium spiritivorum 7
2 5.0×106 GNGB
3 4.5×106 GNGB
4~23 0
2. 消毒薬の含浸綿球の使用期限(室温)*
消毒薬 使用期限
ポビドンヨード
アルコール*
7~14日間
ベンザルコニウム塩化物
ベンゼトニウム塩化物
クロルヘキシジン
両性界面活性剤
アクリノール
24時間

*密封容器内では,より長期間使用できる。

引用文献

  1. 弥山秀芳, 他: 消毒用アルコール綿におけるアルコール濃度の経時的変化. 日病薬誌, 37: 917-920, 2001.
  2. 佐藤 征, 他: 消毒用アルコール綿作製後における殺菌力の経時的変化. 環境感染, 6: 35-39, 1991.
  3. Oie S, et al: Microbial contamination of antiseptic-soaked cotton balls. Biol Pharm Bull 20: 667-669, 1997.
  4. Oie S, et al: Microbial contamination of antiseptics and disinfectants. Am J Infect Control 24:389-395, 1996.
  5. 大槙昌文, 他: 0.025%塩化ベンザルコニウム綿の微生物汚染とその対策. 環境感染, 19: 491-493, 2004.
  6. Oie S, et al: Bacterial contamination of commercially available ethacridine lactate (acrinol) products. J Hosp Infect 34: 51-58, 1996.
  7. Olson RK, et al: Cluster of post injection abscesses related to corticosteroid injections and use of benzalkonium chloride. West J Med 170: 143-147, 1999.
  8. Nakashima AK et al: Survival of Serratia marcescens in benzalkonium chloride and in multiple-dose medication vials: relationship to epidemic septic arthritis. J Clin Microbiol 25: 1019-1021, 1987.