消毒薬のQ&A
消毒薬のQ&A
手洗い・手指消毒
速乾性手指消毒薬を患者が誤飲した時の対応は?
速乾性手指消毒薬の誤飲では、含有されるエタノール、ベンザルコニウム塩化物(第4級アンモニウム化合物)およびクロルヘキシジンなどの含有成分が問題になります。
消毒用エタノール(約80%エタノール)の危険量(30分以内に服用)は成人で300mL、幼小児で7.5~37.5mLです。また、ベンザルコニウム塩化物のヒト経口推定致死量は50~500mg /kgです1)。したがって、成人が速乾性手指消毒薬(0.2%ベンザルコニウム塩化物含有の消毒用エタノール)を500mLほど誤飲したと仮定すると、エタノールが致死量を超えますし、ベンザルコニウム塩化物が致死量の半分程度の危険な量(1g)になります。なお、クロルヘキシジンは消化管からほとんど吸収されないので、全身への毒性は低いです1)。
これらの成分の誤飲による中毒症状と治療法は次のとおりです2)。
エタノール
中毒症状(急性アルコール中毒)
運動失調、視力障害、判断力喪失、悪心・嘔吐、振戦、嗜眠、低体温、低血糖(特に小児)、昏迷、昏睡、呼吸抑制、心臓ミオパチー、高血圧・低血圧、心血管虚脱、吐物の肺吸引による死。治療
胃洗浄、呼吸管理、患者の保温、輸液の投与、血液透析。ベンザルコニウム塩化物
経口毒性は高い(消化管から吸収されて、脱分極性の筋弛緩作用)。
中毒症状
悪心・嘔吐、口腔浮腫、食道粘膜の浮腫・壊死、呼吸筋麻痺による呼吸困難・チアノーゼ、中枢神経抑制、低血圧、昏睡、肺炎.致死量→1~3g(10%液で10~30mL)。治療
牛乳、生卵の投与、活性炭+ソルビトール(いずれも1g/kg、活性炭の5倍量以上の水に懸濁)の投与、粘膜保護薬、ステロイド剤の投与.催吐・胃洗浄は避ける(特に高濃度では)。クロルヘキシジン
経口毒性は低い(吸収されにくい)。
中毒症状
大量(20%液を150mL)で、咽頭浮腫・食道粘膜の壊死・肝障害・溶血。治療
胃洗浄.粘膜保護薬の投与.溶血に対して交換輸血。引用文献
- 森 博美, 山崎 大(編): 急性中毒情報ファイル 第4版, pp. 249, 506, 509, 廣川書店, 2008.
- 神谷 晃, 尾家重治: 前川和彦, 相川直樹(総編集): 今日の救急治療指針, 消毒・外用薬中毒, pp. 384-387, 医学書院, 1996.