消毒薬の選び方
消毒剤の毒性、副作用、中毒
17.アクリノール水和物(Acrinol Hydrate)
毒性
(単位:mg/kg)
LD50 | MLD | ||
---|---|---|---|
マウス | 腹腔 | 70 | |
皮下 | 120 | ||
ウサギ | 静脈 | 20 | |
皮下 | 100 |
経口投与では消化管からの吸収が極めて悪く、大部分は糞中に排泄されるため、毒性が低い。
亜急性毒性
64,320,1600mg/kgのアクリノール水和物をラットに30日間経口投与して亜急性毒性を検討した結果
- 320及び1600mg/kg群で投薬直後に一過性の流涎がみられた。また1600mg/kg群では自発運動の減少、黄色軟便の排泄も観察された。
- 1600mg/kg群の雄で体重増加の抑制と摂餌量の減少がみられた。一方飲水量の増加傾向が雄では1600mg/kg群、雌では全投薬群で認められた。
- 臓器重量では、盲腸重量の増加が320mg/kg群の雄、1600mg/kg群の雄・雌で、胸腺重量の減少が1600mg/kg群の雄・雌で認められた。
- 病理学的には、主として1600mg/kg群の小腸上部、盲腸、胸腺、副腎に変化が認められた。
副作用
接触皮膚炎
塗布や貼布により、アレルギー性接触皮膚炎(潰瘍、壊疽など)が生じたとの報告がある。
- 56歳、男性。手背部虫刺による腫脹治療のためアクリノール液による消毒を行ったところ、皮疹が手背から前腕部へと急速に広がった。左上肢全体に浮腫性、浸潤性紅斑が出現し、その上に小水泡及び小丘疹が多発集簇していた。
- 43歳、男性。指末節裂傷に対し、縫合処置後にアクリノール湿布を受けたところ、指末節掌側全体が黒色壊死に陥り、創部は離開していた。
- 46歳、男性。足白癬に対し、約10日間足をアクリノール液で消毒していたところ皮疹が悪化した。再びアクリノール湿布を数日したところ趾間部に皮膚壊死を生じた。
- 41歳、男性。右肘頭部の擦過傷に対しアクリノール液を1ヶ月間外用していたところ、右上肢全体に拡がる接触皮膚炎にひき続き著明な好酸球増多、肝機能異常を伴う全身性多形紅斑様皮疹の発症をみた。
- 47歳、男性。右第5指に外傷を受け、アクリノール液を使用したところ、創部が徐々に拡大した。右第5指背に黒褐色の壊死物質に覆われた潰瘍とその周囲の紅斑性腫脹、右手背に集簇性小丘疹が見られた。
- 25歳、男性。右下腿にムカデ咬傷を受け、1ヶ月後に同部が発赤、腫脹したので連日アクリノール湿布を続け、1ヶ月後に潰瘍を生じた。その後も2年以上にわたり再発を繰り返し、難治のため入院した。
腐骨形成
54歳、男性。抜歯窩の洗浄に使用したアクリノール液により、腐骨を形成した。
中毒症状
経口投与で中毒に至ることは少ない
大量に経口した場合
悪心、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢
肝機能障害が現れるおそれがある
処置法
通常の誤飲程度では経過観察のみ
大量に経口した場合
過多量、高濃度液でない限り生命に別状はない
- 催吐又は胃洗浄
- 吸着剤投与
薬用炭(40~60g → 水200mL) - 下剤投与
硫酸マグネシウム(30g → 水200mL)又はマグコロール®P(50g → 200mL) - 輸液投与(肝保護剤を加える)
- 対症療法
肝機能の経過観察