消毒薬の選び方

消毒剤の毒性、副作用、中毒

2.イソプロパノール(Isopropanol)

毒性

(単位:mg/kg)

    LD50 LC50 MLD LCL0
ヒト 経口     571mL/kg  
マウス 吸入       12800ppm/3時間
  53000mg/m3    
腹腔 4477      
静脈 1509      
経口 3600      
皮下     6000  
ラット 吸入   72600mg/m3    
  16000ppm/8時間    
腹腔 2735      
静脈 1088      
経口 5000      
ウサギ 腹腔 667      
静脈 1184      
経口 6410      
皮膚 12800      
イ ヌ 静脈     1024  
経口     1537  
  • ・ヒト最低中毒量(TDL0):223mg/kg(経口)
  • ・ヒト最低中毒濃度(TCL0):35ppm/4時間(吸入),150ppm/2時間(吸入)

吸入毒性

エタノールに比べて約2倍強い(中枢抑制作用など)。

  1. モルモットに400及び5500ppmイソプロパノールの吸入曝露による鼻・中耳粘膜の障害を起こした。
  2. モルモットに400及び5500ppmイソプロパノールの吸入曝露による気管粘膜の線毛運動と上皮形態の障害を認めた。
  3. イソプロパノール400ppmの4時間吸入曝露により、ラットの鼻及び眼瞼部に発赤を認め、流涙・流涎に加え、鼻汁漏出、ついで曝露開始120分後に眼瞼部の出血を認めた。
  4. イソプロパノール8000ppmの1日8時間週5日の曝露により、開始20週目においてラットの神経伝導速度の遅延を認めた。
  5. 高熱の女児の熱を下げる目的で、母親がイソプロパノールを浸し込ませたタオルを女児の腰部に4時間にわたりまいて使用したところ、昏睡が生じた。

致死量

ヒト経口致死量(大人)
120~240mL(70%液)

副作用

接触皮膚炎

皮膚塗擦後、皮膚炎を生じることがあり、濃厚液により脱脂による皮膚荒れを起こすことがある。

中毒症状

(エタノール中毒の症状に類似している)

少量を経口した場合

  • 嘔吐、悪心、心窩部痛、胃炎、血便
  • 顔面潮紅、運動失調、めまい、頑固な頭痛、血圧低下

大量に経口した場合

  • 急速な血圧低下(ショック)、低体温、時に重篤な循環不全
  • 吐血、錯乱、麻痺
  • 催眠作用 → 知覚消失 → 昏睡状態
  • 代謝性アシドーシス、肝・腎障害、低血糖
  • 吸引性肺炎
  • 死因(呼吸中枢麻痺・心臓麻痺)

処置法

大量に経口した場合

  1. 催吐又は胃洗浄(2時間以内。洗浄の開始が遅れても大量のイソプロパノールが除去できる)
    1%炭酸水素ナトリウム液で行う(直ちに使用できない場合は微温湯でも可)
  2. 下剤投与
    硫酸マグネシウム(30g → 水200mL)又は、マグコロール®P(50g → 水200mL)
  3. 輸液投与
  4. アシドーシスの補正
    炭酸水素ナトリウム注(メイロン®)など
  5. 呼吸管理(酸素吸入、人工呼吸など)
  6. 対症療法
    脱水、電解質バランス、ショックの改善......
    ブドウ糖、生理食塩水の静注
    血圧低下.........
    ドパミン注(イノバン®)、ノルアドレナリン注(ノルアドリナリン®)など
    消化管出血......
    氷水で胃洗浄
  7. 重症の場合
    血液透析(HD)を行う(イソプロパノール及び代謝物のアセトンの体外除去に有効)