消毒薬の選び方
各種微生物に対する消毒薬の選び方
プリオン蛋白質(クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体)
クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体は、以前はスローウイルスと考えられていたが、プリオン蛋白であることが判明してきた。このプリオンは物理化学的抵抗性が異常に高く、通常の方法では病原性をなくすことはできない1-4)。121℃・20分間のオートクレーブなどの条件では不活化できない。
(1)感染経路
ヒト硬膜の使用、ヒト成長ホルモンの投与、角膜移植、およびクロイツフェルト・ヤコブ病患者に使用した深部脳波電極の再使用などに起因する感染例がある。
また、狂牛病のウシに起因する感染例(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)もある。
図1. プリオンは中枢神経系に高濃度に存在する
(2)有効な消毒法
脳神経外科、眼科および整形外科などの手術時や、脳脊髄液などの取扱い時に、とくに注意が必要である。
クロイツフェルト・ヤコブ病患者に用いた手術器具類の処理は、次の①または②で行う7)。
- 「アルカリ洗剤を用いたウオッシャーディスインフェクタによる洗浄(90~93℃)」+「真空脱気プリバキューム式高圧蒸気滅菌134℃、8~10分」
- 「適切な洗剤による十分な洗浄」+「真空脱気プリバキューム式高圧蒸気滅菌134℃、18分」
一方、汚染した内視鏡の処理は、「アルカリ洗剤洗浄」+「過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌2サイクル(NXタイプでは1サイクル)」で行う。また、「捨てる前の内視鏡を使用する」などの方法も提案されている8)。
なお、クロイツフェルト・ヤコブ病の感染は、夫婦間でも生じない。したがって、排泄物は通常の方法で処理して差し支えない。ただし、気管内吸引は閉鎖式で行うのが望ましい。また、曝露対策が十分であれば、血液は下水に流しても差し支えない。
引用文献
- Tamai Y, Taguchi F, Miura S: Inactivation of the Creutzfeldt-Jakob disease agent. Ann Neurol, 24: 466-467, 1988
- Taguchi F, et al: Proposal for a procedure for complete inactivation of the Creutzfeldt-Jakob disease agent. Arch Virol, 119: 297-301, 1991
- Steelman VM: Creutzfeld-Jakob disease: recommendations for infection control. Am J Infect Control, 22: 312-318, 1994
- Spencer RC, Ridgway GL; vCJD Consensus Group: Sterilization issues in vCJD--towards a consensus: meeting between the Central Sterilizing Club and Hospital Infection Society. 12th September 2000. J Hosp Infect, 51: 168-174, 2002
- American Neurological Association: Precautions in handling tissues, fluids, and other contaminated materials from patients with documented or suspected Creutzfeldt-Jakob disease. Ann Neurol, 19: 75-77, 1986
- Fishman M, Fort GG, Mikolich DJ; Prevention of Creutzfeldt-Jakob disease in health care workers: a case study. Am J Infect Control, 26: 74-79, 1998
- プリオン病感染予防ガイドライン完全版(2008年版)
http://prion.umin.jp/guideline/cjd_2008all.pdf - Rey JF, et al: WGO-OMGE and OMED Practice Guideline: Endoscope Disinfection, 2005.
http://www.omed.org/downloads/pdf/guidelines/wgo_omed_endoscope_disinfection.pdf - Keeler N, et al: Investigation of a possible iatrogenic case of Creutzfeldt-Jakob disease after a neurosurgical procedure. Infect Control Hosp Epidemiol, 27: 1352-1357, 2006