消毒薬の選び方
各種微生物に対する消毒薬の選び方
真菌 ‐白癬菌‐
水虫の原因になる。トリコフィトン、ミクロスポルム、エピデルモフィトンなどの菌種が含まれる。ヒトからヒト、およびペットなどの動物からヒトへの感染がある。
(1)感染経路
環境で長期間生存でき1、2)、ヒトからヒトへの感染が生じやすい。靴やスリッパ、足浴バケツ、足拭きマット、座布団および爪切りなどを介して感染する。
感染対策として、入浴などによる体の清潔保持や、スリッパやバケツの共用を避けることなどがあげられる。
(2)有効な消毒法
次亜塩素酸ナトリウムやアルコール、および熱水が有効である3)。
共用スリッパ
共用スリッパに対しては、使用のつどの洗浄が望ましい。用手法やスリッパ洗浄機(図1)での洗浄を行う。また、洗浄が行えない場合には、アルコール清拭を行う。2度拭きで対応する。
図1. スリッパ洗浄機
スリッパの清潔保持に有用である。
足浴バケツ(タライ)
足浴バケツには使用のつどの洗浄を行う。また、水虫に感染していることが判明している場合には、その患者の専用とする。
足拭きマット
足拭きマットは洗濯が行いやすいものを用いて、すくなくとも1日1回の洗濯を行う(図2)。70~80℃・10分間などの条件で熱水洗濯を行う。また、熱水洗濯機がなければ、洗濯工程のすすぎ後に次亜塩素酸ナトリウム消毒を行う。
なお、個人持ちのタオルを足拭きマットに代用する方法がもっとも望ましい。
図2. 足拭きマット
洗濯が行いにくいマット(奥側)の使用は避けて、洗濯が行いやすいマット(手前)を用いる。
爪切り
爪切りには家庭用食器洗浄機での熱水処理がもっとも望ましい。ただし、熱水によりプラスチック部分が変形する場合がある。
また、アルコール清拭でも対応可能である。十分量のアルコールで清拭する。ただし、構造的にアルコール清拭が行いにくい爪切りに対しては、アルコールへの10分間浸漬を行う。
できれば爪切りは個人専用とするのが望ましい。
浴槽
入浴や足浴では、患者ごとの湯の張替えが必要である。患者ごとに湯の張替えが行えない場合には、塩素系消毒剤を湯へ投入する方法で対応する。ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム(ミルトン®タブレット、レジオハンター®ミニタブレットなど)を浴槽などに入れて用いる。1ppm程度の残留塩素を含む湯にする。
引用文献
- 丸山隆児、 他: 白癬の感染予防。 Jpn J Med Mycol、 44: 265-268、 2003
- 加藤卓朗: 皮膚真菌症と環境。 Jpn J Med Mycol、 47: 63-67、 2006
- Scott EM、 Gorman SP、 McGrath SJ: An assessment of the fungicidal activity of antimicrobial agents used for hard-surface and skin disinfection。 J Clin Hosp Pharm、 11: 199-205、 1986