消毒薬の選び方

各種微生物に対する消毒薬の選び方

結核菌

はじめに

結核は、B型肝炎、C型肝炎およびHIV感染症とともに重要な職業感染の1つである。結核菌の消毒には、高水準消毒薬(グルタラール、フタラール、過酢酸)のほかに、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール、ポビドンヨードおよび両性界面活性剤などを用いる。

(1)感染経路

結核は空気感染で伝播する。したがって、その感染防止にはN95マスクの着用が大切である。また、排菌者がサージカルマスクを着用することは、菌の飛散防止に有用である。

(2)有効な消毒法

高水準消毒薬(グルタラール、フタラール、過酢酸)、中水準消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム、アルコール、ポビドンヨード)および低水準消毒薬の両性界面活性剤が有効である。

内視鏡

使用後の気管支ファイバースコープなどには、高水準消毒薬(過酢酸、グルタラール、フタラール)による消毒が必要である1-3)

環境

結核菌は空気や飛沫により伝播するので、環境が結核感染の原因になる可能性は小さいと推定される。しかし、空気の舞い上がりなどを考慮すると、環境から感染する可能性はある。排菌がある場合には(治療開始後14日までは)、環境消毒も必要である。

オーバーテーブル、床頭台、ベッド柵およびドアノブなどの手の触れる箇所には、消毒用エタノール清拭を行う(図1)4.5)。消毒用エタノールの代わりとして、0.5%両性界面活性剤(サテニジン®など)や0.01%(100ppm)次亜塩素酸ナトリウム(ピュリファン®Pなど)を用いてもよい6)。天井や壁などの消毒は通常不要であるが、喀痰などの汚れが付着した場合には、0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。

床の清拭消毒には、消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムに比べて抗菌力は劣るものの、引火性の心配がなくてかつ材質を傷めにくい消毒薬である0.5%両性界面活性剤を用いる。この際、床が乾くまでは、すべりやすくなることに留意する。

図1. 結核患者の周辺環境の消毒

図1. 結核患者の周辺環境の消毒

オーバーテーブル、床頭台、ベッド柵、およびドアノブなどの
手の触れる箇所の消毒には、消毒用エタノールを用いる。

引用文献

  1. Agerton T, et al: Transmission of a highly drug-resistant strain (strain W1) of Mycobacterium tuberculosis. Community outbreak and nosocomial transmission via a contaminated bronchoscope. JAMA,278: 1073-1077, 1997
  2. Michele TM, et al: Transmission of Mycobacterium tuberculosis by a fiberoptic bronchoscope. Identification by DNA fingerprinting. JAMA, 278: 1093-1095, 1997
  3. 消化器内視鏡の洗浄・消毒マルチソサエティガイドライン作成委員会(日本環境感染学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器内視鏡技師会): :消化器内視鏡の洗浄・消毒マルチソサエティガイドライン, 2008.
  4. Rutala WA, Cole EC, Wannamaker NS, et al: Inactivation of Mycobacterium tuberculosis and Mycobacterium bovis by 14 hospital disinfectants. Am J Med, 91(3B): 267S-271S,1991
  5. Griffiths PA, Babb JR, Fraise AP: Mycobactericidal activity of selected disinfectants using a quantitative suspension test. J Hosp Infect, 41: 111-121, 1999
  6. Ascenzi JM, Ezzell RJ, Wendt TM: A more accurate method for measurement of tuberculocidal activity of disinfectants. Appl Environ Microbiol, 53: 2189-2192, 1987