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vol.72 COVID-19に対するオミクロン含有2価ブースターワクチン
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背景

 2価のオミクロン含有mRNA-1273.214ブースターワクチンの安全性と免疫原性は不明である。

研究方法

 現在進行中のこの第2-3相試験で、50μgの2価ワクチンmRNA-1273.214(初期に流行した株であるWuhan-Hu-1とオミクロン株B.1.1.529[BA.1]のスパイク蛋白のメッセンジャーRNA各25μg)ブースターを、以前に認可された50μgのmRNA-1273ブースターと比較した。mRNA-1273接種を最初の2回(合計100μg)および1回目のブースター(50μg)の計3回を受けてから3ヶ月以上経過した成人を対象に、mRNA-1273.214またはmRNA-1273を2回目のブースターとして投与した。主要目的は、ブースター後28日目におけるmRNA-1273.214の安全性、反応原性、免疫原性を評価することであった。

結果

 中間結果を報告する。参加者の連続したグループに、2回目のブースターとして50μgのmRNA-1273.214(437人)またはmRNA-1273(377人)が投与された。1回目と2回目のブースターの間隔の中央値は、mRNA-1273.214が136日、mRNA-1273が134日で同程度であった。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染歴のない参加者において、オミクロンBA.1変異株に対する中和抗体の幾何平均力価は、mRNA-1273.214ブースター後2372.4(95%信頼区間[CI]:2070.6~2718.2)、mRNA-1273ブースター後1473.5(95%CI:1270.8~1708.4)であった。さらに、50μgのmRNA-1273.214および50μgのmRNA-1273は、オミクロンBA.4およびBA.5(BA.4/5)に対して、それぞれ727.4(95%CI:632.8~836.1)および492.1(95%CI:431.1~561.9)の幾何平均力価中和抗体を惹起させた。そして、mRNA-1273.214ブースターは他の複数の変異体(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)に対してもmRNA-1273ブースターより高い結合抗体反応を示した。安全性と反応原性は、2つのブースターワクチンで同様であった。本試験ではワクチンの有効性は評価されなかったが、探索的解析では、mRNA-1273.214ブースター後に11人、mRNA-1273ブースター後に9人の参加者にSARS-CoV-2感染が発生した。

 

結論

 オミクロン含有2価ワクチンであるmRNA-1273.214は、オミクロン株に対する中和抗体反応がmRNA-1273に伴う反応よりも優れており、しかも明らかな安全性の懸念はなかった。

訳者コメント

 2022年に接種可能となったオミクロン株対応ワクチンは、接種後3ヶ月ほどで感染予防に関する有効性がゼロに近くなる現在のワクチンと比べて、より高い感染予防有効率やより長期間持続する効果が期待されている。しかしこれらの効果は、大規模なリアルワールドデータを長期間収集することで初めて明らかにすることができる。それまでは、接種後の中和抗体価などの指標で評価するしかない。
 本研究は、モデルナのmRNAワクチンであるmRNA-1273の改良形であるmRNA-1273.214の臨床試験で得られたデータを元に作成されている。対象者は3回の従来型ワクチン接種を済ませており、4回目の接種に2価ワクチン(オミクロン株対応と従来型の混合)または1価ワクチン(従来型)を使用した。4週間後に得られたオミクロン株に対する中和抗体価には大きな差があり、2価ワクチンの有効性が期待できる結果となっている。
 2022年11月に入り、日本ではCOVID-19の流行が再び大きくなりつつあるが、一方で2価ワクチンの接種も進みつつある。このワクチンが社会全体の免疫を高め、流行を制御する方向に作用することが期待される。