目的
成人における中等症および重症のCOVID-19に対するmRNAワクチンの有効性を、2回目・3回目・4回目の接種からの期間、年齢、免疫不全状態別に推定すること。
デザイン
検査陰性症例対照研究。
施設と期間
2021年1月17日~2022年7月12日、アメリカの10州の病院・救急部・緊急ケア診療所。
参加者
SARS-CoV-2の検査を受け、COVID-19の症状を呈して261の病院・272の救急部・119の緊急ケア診療所のいずれかに入院した18歳以上の成人893,461人。
主なアウトカム評価項目
主要評価項目は、BNT162b2(Pfizer-BioNTech)またはmRNA-1273(Moderna)ワクチンによる、オミクロン株流行期とデルタ株流行期およびデルタ株流行以前の効果の減衰とした。年齢、人種、民族、地域のウイルス循環、免疫不全状態、接種可能性を調整し、暦週と地域を条件としたロジスティック回帰により検討した。
結果
COVID-19で病院に入院した45,903人(症例)を、COVID-19の症状を呈してSARS-CoV-2検査陰性であった213,103人(対照)と比較した。また、COVID-19で救急部または緊急ケア診療所に入院した103,287人(症例)を、COVID-19の症状を呈してSARS-CoV-2検査陰性であった531,168人(対照)と比較した。オミクロン株流行期において、病院に入院を要するCOVID-19に対するワクチンの効果は、3回目の接種後2カ月以内には89%(95%信頼区間:88%~90%)であったが、4~5カ月までには66%(63%~68%)に減衰した。救急部や緊急ケア診療所の受診に対する3回接種のワクチン効果は、当初83%(82%~84%)であったが、4~5カ月までに46%(44%~49%)に減衰した。減衰は、若年成人や免疫不全でない人を含むすべてのサブグループで明確であったが、免疫不全の人の方がより大きかった。ワクチンの効果は、ブースターが推奨されるほとんどのグループにおいて、4回目の接種後に増加した。
結論
中等症および重症のCOVID-19に対するmRNAワクチンの効果は、接種後時間が経つにつれて減衰した。この結果は、2回接種後のブースター接種の推奨と追加ブースター接種の検討を支持する。
訳者コメント
今回もCOVID-19ワクチンの効果に関する論文を紹介した。本研究のコホートは、100万人近い一般市民であり、主にアメリカの医療グループであるKaiser Permanenteの関連施設を受診した患者であると思われる。ワクチンの予防効果を推定するために最も信頼性が高い方法の一つである検査陰性症例対照研究として実施された。CDCが主導し、大学の公衆衛生研究者も参画し、大規模な研究となっている。
入院(比較的重症なCOVID-19感染)と外来受診(それよりは軽症)の2つのアウトカムに対するワクチンの有効性で評価しているが、いずれにおいてもオミクロン株流行以前はワクチン接種直後の有効率が非常に高く、6ヶ月が経過してもおよそ80%以上の有効率を保っている。ところがオミクロン株の流行になってからは、接種直後でも60~70%程度の有効性に留まり、しかも4ヶ月を過ぎると50%を下回る。これはブースター(3回目接種)でも同様のことが言える。
本研究は、ある程度の期間が経過した後のブースター(3回目接種)および追加ブースター(4回目接種)の必要性を明確にしている。一方、リアルワールドでは4回目接種にオミクロン株への免疫強化が期待される2価のワクチンが使い始められており、これらの効果によっては4回目接種の効果が長引くことも期待される。今後の研究に期待したい。