重要性
SARS-CoV-2オミクロン株に感染した人の中には、ウイルスが活発に伝播している状況で自分の感染状態に全く気づいていない人がいたかもしれない。
目的
ロサンゼルス郡の多様で人口の多い都市部における最近のオミクロン株流行拡大時の個人の感染状態に関する認識を検証すること。
デザイン、設定、参加者
このコホート研究は、カリフォルニア州ロサンゼルス郡のCOVID-19血清学的縦断研究に登録された学術的医療機関(訳者註:Cedars-Sinai Medical Center)の成人職員と患者の記録を分析したものである。これらの参加者は、少なくとも1カ月間隔で2回以上の抗ヌクレオカプシドIgG(IgG-N)抗体の連続測定を行い、最初の測定は地域でのデルタ株流行拡大の終了(2021年9月15日)より後、次の測定は地域でのオミクロン株流行拡大の開始(2021年12月15日)より後であった。2022年5月4日までのオミクロン株流行拡大期間に新たにSARS-CoV-2に感染した証拠を持つ成人が、今回の研究サンプルに含まれた。
曝露
SARS-CoV-2抗体陽転によって証明される最近のオミクロン株感染。
主な結果および測定法
最近のSARS-CoV-2感染の認識は、自己申告の健康情報、医療記録、およびCOVID-19検査データの監査によって確認された。
結果
血清学的に最近のオミクロン株感染の証拠を有する210名(年齢中央値[範囲]51(23~84)歳、女性136名[65%])のうち44%(92名)が最近のオミクロン株感染を認識しており、56%(118名)が自分の感染状態に気づいていないと回答した。また、感染に気づかなかった者のうち10%(118名中12名)が何らかの症状があり、その原因が通常感冒などSARS-CoV-2以外の感染によると考えたと回答している。人口統計学的および臨床的特徴を考慮した多変量解析では、医療機関の医療従事者は非医療従事者よりも最近のオミクロン株感染に気付いている可能性が高かった(調整オッズ比2.46、95%信頼区間1.30~4.65)。
結論と意義
本研究の結果から、最近オミクロン株に感染した成人の半数以上が自分の感染に気づいていないこと、医療従事者は非医療従事者よりも気付く人が多いが、全体としては少ないことが示唆された。感染に気付かないことは、地域社会における迅速な人から人への感染に関連する非常に一般的な要因である可能性がある。
訳者コメント
本研究のコホートは210人とそれほど大きくないが、無症状も含めたSARS-CoV-2感染の有無を明確にするヌクレオカプシド抗体価を少なくとも2回測定された、最近のSARS-CoV-2感染が証明されている人を対象としている。初回の測定で抗体価陰性、2回目の測定で陽性となった人を、最近SARS-CoV-2オミクロン株に感染したと定義している。
感染に気付かなかった118名のうち106名は無症状であったと考えられ、更に感染に気付いた人の中にも何らかの理由で検査を受けてはじめて感染を自覚した無症状者が6名いた。つまり、この研究コホートでは全体の半数を超える124名が無症状であり、オミクロン株感染者の半数以上が無症状者であることを示唆している。
大規模な血清疫学調査は他にも多数行われているが、流行に合わせて2回の抗体価測定を行うことによりはじめて無症状の感染者の割合を推定することができる。本研究の意義は大きい。