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vol.50 医療従事者におけるSARS-CoV-2抗体の状態と感染発生頻度
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背景

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する抗体の存在と、それに引き続く再感染のリスクの関係は、明確でない。

方法

連合王国のオックスフォード大学病院の無症状および有症状のスタッフで検査を行われた抗体陽性・陰性の医療従事者において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にて確認されたSARS-CoV-2感染の発生頻度を調査した。ベースラインの抗体価は抗スパイク(主要評価)および抗ヌクレオカプシドIgGアッセイにより決定された。スタッフは最長31週間フォローされた。年齢・性別・発生頻度の経時的変化を調整し、抗体の状態によるPCR検査陽性と新たな有症状感染の相対的発生頻度を評価した。

結果

12,541人の医療従事者が参加し、抗スパイクIgG抗体価を測定された。11,364人が抗体価陰性、1,265人が抗体価陽性(追跡期間中に抗体価陽性転化した88人を含む)で追跡された。223人の抗スパイク抗体陰性医療従事者がPCR検査陽性となり(10,000リスク日あたり1.09)、そのうち100人は無症状の間のスクリーニングで、123人は有症状の際であった。一方、抗スパイク抗体陽性医療従事者の内2人がPCR検査陽性となった(10,000リスク日あたり0.13)が、2人とも検査陽性時点で無症状であった(調整発生頻度比0.11、95%信頼区間0.03~0.44、p=0.002)。抗スパイク抗体陽性の医療従事者に有症状の感染者はいなかった。ベースラインの抗体価を決定する際に抗ヌクレオカプシドIgGアッセイを単独で使用した際と、それと抗スパイクIgGアッセイを併用した際で、割合は同程度であった。

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結論

抗スパイク・抗ヌクレオカプシドIgG抗体の存在は、引き続く6ヶ月間のSARS-CoV-2再感染のリスクを十分に低下させることと関連していた。

監修者コメント

抗体陽性者のSARS-CoV-2再感染のリスクは十分低いことが本研究から明らかになった。ただし観察期間がおよそ半年間なので、SARS-CoV-2に対する免疫あるいは抗体陽性状態がそれ以上長く続くかどうかはわからない。それが明らかになるまでは、新型コロナウイルスに罹患した人(=抗体陽性者)がSARS-CoV-2ワクチンを接種しても意味が無いとは言い切れない。CDCも抗体陽性・罹患既往のある人に対してSARS-CoV-2ワクチン接種を推奨している。