背景
2017年3月、ニュージャージー州保健局は、ニュージャージーの同一個人クリニックにおいて変形性膝関節症の疼痛に対する関節内注射後の敗血症性関節炎を発症した3人の患者の報告を受けた。関節内注射の結果発生する敗血症性関節炎のリスクは低い。しかし、外来医療現場で安全でない注射手技に関連した敗血症性関節炎のアウトブレイクが報告されている。
方法
公衆衛生上のリスクが今も存在することが考えられたため、当該施設の実務に対する感染防止の評価が実施された。評価内容として、施設の環境監査、スタッフへの聞き取り、感染防止実務の観察、医療記録や事務書類のレビューなどを行った。当該施設で関節内注射を受けた後に敗血症性関節炎を発症した患者を同定するために、ニュージャージーの医療機関に対して事例報告の呼び掛けが行われた。
結果
関節内注射に関連する敗血症性関節炎を伴う、41人の患者が同定された。41人のうち15人の滑液・滑膜の培養から、口腔内常在菌が分離された。施設の感染防止に関する評価では、不適切な手指衛生、安全でない注射手技、貧弱な清潔・消毒実務といった、推奨される感染防止実務に関する多くの破綻が明らかになった。当該施設が感染防止の推奨を導入したのちは、更なる関節炎の症例は発生しなかった。
考察
細菌汚染を防ぐために、注射薬を取り扱い準備し注射する際の無菌操作が欠かせない。
結論
この調査により、感染防止の推奨に従うことの重要性が改めて示された。注射薬を準備・取扱・投与する全ての医療従事者は、感染防止と安全な注射手技の訓練を受けるべきである。
監修者コメント
クリニックにおける感染対策にはまだまだ多くの課題がある。管理者である医師等の意識が低く、知識も十分でない場合には本論文で紹介されたようなアウトブレイクが起こりうるし、実際にB型肝炎の伝播など様々な問題が発生している。当局による監査も、数多く存在するクリニックのすべてをカバーすることは困難であり、管理者に生涯教育を義務づけるなどの強制力を持った対策をとらないと、状況は好転しないのではないだろうか。