背景
長期療養施設の入居者はCOVID-19の感染リスクが特に高い。感染拡大の早い段階において、アメリカ疾病対策センターの検査に関する勧告では、典型的な症状に基づいて入居者やスタッフを検査するとされた。しかし、アメリカでは高い致死率を伴う長期療養施設でのアウトブレイクが全土で発生していた。
方法
メリーランド州の11カ所の長期療養型施設で普遍的スクリーニングを実施した。それらの施設では、個々の入居者の症状に基づいた検査を地域公衆衛生当局の指導のもと実施し、施設内で陽性例が既に発生していた。鼻咽腔ぬぐい液を採取し、SARS-CoV-2のRNAを検知するためにRT-PCR検査が実施された。普遍的スクリーニングの実施時点で、37.2℃以上の発熱、咳、下痢、呼吸困難、その他の急性臨床症状変化、といった臨床症状の情報を収集した。
結果
本調査を実施する前の時点で、施設内で陽性例が発生してから20日以内に、症状に基づいた検査による陽性者が153名同定されていた。普遍的スクリーニングを実施された893人の入居者のうち、354人(39.6%)がSARS-CoV-2のRNA陽性であった。従って、普遍的スクリーニングを実施することによって、検知されたCOVID-19症例を153例から507例に増加させた。そのうち、281例(55.4%)が無症状であった。
結論
長期療養施設は世界的にCOVID-19感染と死亡のホットスポットとして注目されている。症状に基づいた検査のみで入居者のCOVID-19症例を同定するのは、症例負荷や集団発生制御の評価を行う上で不十分である。長期療養型施設におけるCOVID-19の真の負荷を明らかにし、感染伝播を制御するためには、更なる検査リソースが必要である。
監修者コメント
COVID-19は高齢者において罹患リスクが高いだけでなく、重症化リスクも高い。長期療養型施設の特性として、大勢の高齢者が様々なアクティビティを自由に営む場であり、マスクを常時着用する状況では必ずしもないことなどが、COVID-19の集団発生のリスク要因であると言える。この研究では、無症状者に対する普遍的スクリーニング検査で40%近い人がSARS-CoV-2陽性と判定されており、この感染症の伝播力の強さを改めて実感させられる。改めて、長期療養型施設にはコロナを持ち込まないことの重要性が強調される。