目的
COVID-19患者におけるウイルス消失(鼻咽頭スワブでの最初の陰性RT-PCR)のタイミングとウイルスクリアランス確認(2回連続の陰性スワブ)の確率を決定し、関連する決定要因を特定すること。
方法
保存されたデータを用いた人口ベースの前向きコホート研究。
場所
イタリア北部のレッジョ・エミリア県の予防サービスと病院ケア。
参加者
レッジョ・エミリア県において鼻咽頭スワブでRT-PCR陽性でCOVID-19と診断され、2020年4月22日までに少なくとも30日間の追跡調査が行われた1162人全てを対象とした。
主要アウトカム指標
診断や発症からウイルス消失までの日数の中央値であり、カプランマイヤー推定量を使用して評価された四分範囲(IQR)を使用して、含まれる特性によって層別化されたもの。多変量ロジスティック回帰モデルを使用して評価された診断および推定決定要因からの時間によって層別化された、ウイルス消失確認の確率。
結果
ウイルス消失は、患者の60.6%(704/1162)によって達成され、その中央値は診断から30(IQR 23–40)日および症状発現から36(IQR 28–45)日であった。陰性で再検査されたもののうち、78.7%(436/554)がウイルス消失を確認されたので、5回に1回の検査が偽陰性であったことが示唆された。症状の発症からウイルス消失までの日数は、年齢とともにわずかに増加し、50歳未満の35(IQR 26–44)日が80歳以上の38(IQR 28–44)日になり、疾患の重症度では入院していない対象者の33(IQR 25–41)日が入院している患者の38(IQR 30–47)日になった。ウイルス消失確認の確率は、症状の発症から34日後に86.8%に達し、年齢と性別を調整した場合でも時間とともに増加した(OR 1.16 95%CI 1.06〜1.26 /日、診断から)。
結論
臨床的に回復したCOVID-19患者の追跡検査を延期すると、検査プロトコルの効率とパフォーマンスが向上する可能性がある。ウイルス排出期間を理解することは、無症候性の被験者の封じ込め対策にも影響を及ぼす。
監修者コメント
このコホートでは、COVID-19の発症から中央値で一ヶ月以上経たないとウイルス陰性とならなかった。つまり、ウイルスの排出は長時間続いていることとなり、現在日本で退院基準となっている「症状消失後3日間かつ発症後10日間が経過している場合」の妥当性に疑問符がつく。ただし、本研究では症状消失の有無に関するデータが解析されていないことには留意が必要である。次に、陰性結果を得た症例のうち20%以上がその後の再検査で陽性となっており、1回の陰性検査で隔離解除することは不十分だと言える。この点は、陰性結果を示す症例の中には排出するウイルス量が少なくなっており、再検査で陽性となる者がある程度いてもおかしくないという推論が成り立つ。また、日本の退院基準でPCR検査を実施する場合には連続2回の陰性を条件としている点は、妥当であると言えよう。
このように、SARS-CoV-2の挙動は、まだまだ不明な点が多い。今後も更にこのような研究が行われ、その本態が明らかになってくるのだろう。