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vol.41 SARS-CoV-2の発症前の伝播:2020年1月23日~3月16日、シンガポール
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要旨

コロナウイルス2019(COVID-19)を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2の発症前の伝播は、疾患の制御に対して大きな困難をもたらす。シンガポールでは、最初のCOVID-19の症例は2020年1月23日に検知され、3月16日までに243症例が確認されており、うち157例が国内で感染した。3月16日までのシンガポールの全てのCOVID-19症例の臨床および疫学的所見を調査し、発症前伝播が発生したかどうかを検証した。発症前伝播の定義は、「感染源の患者が症状を呈する前にその患者から次の患者にSARS-CoV-2が伝播したことを曝露と発症日で確認できた事例」、かつ、「次の患者がCOVID-19のその他の患者に曝露されていないことを確認できた事例」、とした。

発症前伝播が発生したと思われる7つのCOVID-19の疫学的クラスターが同定され、そのクラスターの中の10症例が、157例の地元での感染症例の6.4%を占めていた。曝露日が確定できた4つのクラスターでは、発症前の感染源患者において症状出現の1~3日前に伝播していた。このような発症前伝播の可能性を考慮に入れるため、接触者追跡手順を作成する公衆衛生当局は発症前の期間を含めることを十分に検討すべきである。SARS-CoV-2の発症前伝播のエビデンスは、密集した状況を避けることを含む社会的距離の確保がCOVID-19の大流行を制御する上で果たす決定的な役割を、強調するものである。

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監修者コメント

この綿密な疫学調査に基づく伝播推定日と発症日の関係は、感染源患者が発症する前に感染性を持っていたことを明確に示している。クラスターC・D・Eは家族内感染のため、伝播日を特定することができなかった。クラスターBとFはコーラスグループでの、Gは個人的会合での感染であり、伝播日を特定できている。B・F・Gでは、感染源の発症前日か前々日に感染伝播が発生したと考えられる。

執筆時点(2020年4月19日)では、日本における接触者疫学調査は、発症日以降に接触した人の中から濃厚接触者を同定している。一方、今回紹介した報告が掲載されたMMWRを発行するアメリカ疾病対策センターの疫学調査指針は、今回紹介するシンガポールからの報告を考慮に入れ、発症48時間前からの感染者との接触をリスクとしている。

発症する前に他人を感染させるCOVID-19の制御は、非常に困難であると言わざるを得ない。執筆時点で実施されている、極力外出せず家に留まる対策が有効ではある。一方、それが長期化した場合に社会に与える負の影響は計り知れない。