要旨
2017年8月6日、イスラエル防衛軍公衆衛生支部(IDFPHB)は2例の麻疹疑いの症例の報告を受けた。IDFPHBは疫学調査を行い、非常に高率にワクチン接種を受けている集団において9人の麻疹症例を発見した。全ての麻疹患者は修飾麻疹(より軽度な発疹・発熱・その双方を伴い、その他の典型的な麻疹の症状を伴う場合とそうでない場合とがある、全体的に軽症の麻疹)に該当する症状を呈していた。全部で1,392人の接触者が同定され、うち162人が麻疹・ムンプス・風疹(MMR)ワクチンによる曝露後予防を受け、残りの人々は21日間(潜伏期)の経過観察を受けた。三次感染者は発見されなかった。
監修者コメント
患者AとBが最初に発見され、次いでCが報告された。その共通の感染源として7月24日のクリニック受診が浮上し、同日の同クリニック受診者の診療録調査により発端者が同定された。発端者に対する接触者の調査・監視を続けたところ、潜伏期経過までに14人の疑い患者が同定され、そのうち5人(D, E, F, G, H)が麻疹と診断された(Eは確定診断ではない)。全員が2回以上のワクチン接種記録または記憶を持っており、記憶に頼った1人(A)を除いてIgGが陽性であった。このうち発端者を除く7人は急性期(発症3日以内)に採血されており、ワクチン接種記録や記憶は確実と考えられた。
結論として、発端者は2回以上の麻疹ワクチン既接種者を8人も感染させたことになる。公衆衛生当局者および医療従事者は、2回のワクチン接種を受けた人でも麻疹を発症しうることを十分念頭に置く必要がある。一方、これらの二次感染者の他者への感染性は低く、三次感染者は発見されなかったことから、公衆衛生施策としてのワクチン接種回数を2回とすることにはある一定の妥当性が認められよう。