背景
MRSAを保菌した入院患者は、退院後にMRSA感染症を発症するリスクがある。
方法
多施設無作為化比較試験を実施した。MRSAを保菌した患者に対して、退院後の衛生教育と、2週間ごとにクロルヘキシジン口腔洗浄と全身洗浄およびムピロシン鼻腔塗布を6ヶ月間実施することの効果を比較した。フォローアップ期間は1年間であった。主要アウトカムはMRSA感染症であり、CDCの判定基準に拠った。二次的アウトカムは、臨床的診断によるMRSA感染症、あらゆる原因の感染症、感染症関連入院であった。
結果
MRSA感染症は、教育群1,063人中98人(9.2%)に、除菌洗浄群1,058人中67人(6.3%)に認められた。MRSA感染のハザードは教育群に比べると除菌洗浄群において有意に低く、MRSA感染による入院のリスクやあらゆる原因の感染症のリスクやそれによる入院のリスクも有意に低かった。
結論
教育のみに比べて、クロルヘキシジンとムピロシンによるMRSA除菌はMRSA感染症のリスクを30%低減させた。
監修者コメント
MRSAは医療関連感染症としても重大であるが、市中感染症に占める割合も決して小さくない。その低減には様々な介入が必要であるが、退院後の患者には医療者として比較的容易に介入が可能である。本研究はそこに着眼し、やや手間のかかる介入を長期間実施した。その効果はかなり明確であり、また入院を減らすことで医療費を低減させることにも成功している。有用な介入として実践が期待される。ただし、本研究において介入の遵守状況は決して高くなく、完全に遵守したのは全体の66%、部分的遵守が20%であったことに注意が必要である。