研究計画
無症候性細菌尿(ASB)に対する抗菌薬治療を減らすために企画された検査室報告介入の無作為化並行非盲検優越性試験を実施した。
方法
2つの都市部急性期ケア病院における入院患者からの連続110名の陽性尿培養結果を、標準的な報告(対照)と改変報告(介入)に無作為化した。標準的な報告は、細菌数、細菌同定、抗菌薬の量とコストも含めた感受性情報などであった。改変報告では以下のように記述した:「この陽性尿培養は、ASBまたは尿路感染症(UTI)を表しています。もし臨床的にUTIが疑われるなら、微生物検査室に電話して菌種同定および感受性結果についてお問い合わせ下さい」。以下の患者は研究から除外した:18歳未満、妊娠、尿道留置カテーテル、既に抗菌薬を投与されている患者、好中球減少症、集中ケアユニット在室。一次有効性アウトカムは、適切な抗菌薬治療処方の割合とした。
結果
Intention-to-treat解析で、適切な治療(UTIは治療され、ASBは治療されなかった)の割合は、標準報告群に比べ改変報告群において高かった。すなわち、改変報告群55例中44例(80%)、標準報告群55例中29例(52.7%)であった(絶対相違、-27.3%;リスク比、0.42;p=0.002;1件の適切な治療のために必要な報告数、3.7)。
結論
改変報告は、不適切な抗菌薬治療を有意に減少させ、有害事象を増加させなかった。本法の実践の前には、大規模な有効性試験において安全性を更に評価する必要がある。
監訳者コメント
ASBに対する抗菌薬投与は、一般に不要である。しかし、陽性尿培養結果に反応して抗菌薬を投与してしまうケースが後を絶たず、不適切な抗菌薬投与となり、耐性菌を生み出すなどの問題を抱えている。本研究ではこういった現状を打破すべく、ASBに対する抗菌薬投与が安易に行われないようハードルを設けた結果、ASBに対する抗菌薬非投与(=適切な治療)の割合を大きく上昇させることに成功した。課題としては、本研究の対象となった患者集団に占めるASBの割合が高く(69%)、施設の尿培養検査の提出方針そのものに問題がある可能性も否定できず、また他の施設に本研究結果を適応できるとは限らない。いずれにせよ、検査報告に関する本研究における介入は有望であり、より再規模な研究でその有効性が検証されるべきであろう。