ケンエー海外論文 Pickup

vol.22 集中治療ユニットの一般的なエリアにおける2種類の手指消毒薬の抗菌効果比較:無作為化比較試験
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目的

医療者の汚染された手指は医療関連感染の重要な伝播源である。アルコールベースの手指消毒薬は有効であるが、持続抗菌活性を持たない。この研究の目的は、集中治療ユニット(ICU)において使用される2種類の手指衛生製品(1.0%クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)添加61%エタノールと、70%エタノールのみ)の使用直後および持続的な活性を比較することである。

方法

前向き無作為化二重盲検交差研究。1つの大規模教育病院における3つのICUで実施。患者ケアに直接従事する合計51人の医療者が研究対象となった。全員がいずれかの製品に1対1に無作為に割り付けられた。手指消毒を行った直後、および患者の部屋に入る前の一般エリアで4~7分過ごした後の2つのタイミングで、手のスタンプが採取された。2群において、好気性菌のコロニー数(CFU)をログ変換してから比較した。各参加者は3日間のウオッシュアウト期間ののち、もう一方の製品に対する試験を実施した。全員がこの研究を完遂した。

結果

CHG添加エタノールの方が、使用直後、およびICUの一般エリアで過ごした後のいずれのタイミングにおいても、有意に小さい好気性菌CFU数を認めた。なお、両方の消毒薬とも、医療者の受忍性は良好であった。

ケンエー海外論文Pickup vol.22-001

結論

エタノールのみの製剤と比べてCHG添加エタノール製剤は、使用直後およびICUの一般エリアで過ごした後のいずれにおいても、医療者の手指から検出される好気性菌の数を有意に小さくした。

監訳者コメント

手指衛生における考慮事項には様々あるが、主な関心事は遵守率を高めることにある。しかし、手指消毒薬の種類も重要な考慮事項であり、本研究で示されたように手指消毒薬の効果には種類によって大きな相違がある。CHG含有製剤による残留活性は、手指衛生の遵守率が低下している局面において重要な補足的役割を果たすことも期待できる。一方、残留活性があることを強調しすぎて、医療者に対して手指衛生をあまり頻繁に実施しなくてよいという誤った考えを持たせないように気をつけなければならない。