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vol.12 患者退室後清掃強化と、多剤耐性菌とC. difficile の保菌・感染(「患者退室後消毒強化の効果」研究):無作為化多施設交差試験
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目的

入院患者は、不適切に清掃された環境表面から多剤耐性菌やC. difficileを獲得しうる。本研究において、患者退室から次の患者の入室までの間に実施する環境清掃(消毒)に関する3つの方法の効果を検証した。標的病原体はMRSA、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、C. difficile、および多剤耐性アシネトバクターであった。

方法

アメリカ南東部の9つの病院で集団的無作為化比較交差試験を実施した。標的病原体に保菌または感染している患者の退室後の清掃を以下の4つのうちいずれかの方法で実施した:四級アンモニウム塩のみ、それに加えて紫外線、次亜塩素酸ナトリウムのみ、それに加えて紫外線。主要アウトカムは、次に入室した患者が標的病原体を保菌・感染獲得する頻度であった。

結果

21,395人が研究対象となった。四級アンモニウムに紫外線を追加することにより、有意な保菌・感染頻度の低減が得られた(相対リスク0.70、95%信頼区間0.50-0.98)。次亜塩素酸による清掃と比較して、紫外線の上乗せ効果は見られなかった。vol.12図

結論

患者退室後の清掃強化は、患者の環境からの病原体獲得のリスクを低減させる。

監修者コメント

紫外線照射装置による環境清掃は、ここ数年のトレンドである。本研究は、昔から実施されている四級アンモニウム塩による清拭清掃に比べて、様々な新たな清掃方法が効果を有するのかどうかを検証した。通常清掃に比べて、UVを追加したものにておいて同病原体獲得の相対リスクが30%低減されていた。その一方で、次亜塩素酸とUVの両方を加えたものでは、相対リスクが9%しか低減せず、有意差もなかった。UVの効果を含むこの領域での更なる研究が望まれる。