目的
2011年に導入された公的報告制度以来、尿道カテーテル留置とカテーテル関連尿路感染(CAUTI)の頻度が変わってきたかどうか、不明である。
方法
国家的な医療情報要約システムであるMPSMSのデータを解析した。心不全、急性心筋梗塞、肺炎、大侵襲の手術を受ける外科患者を対象とした。尿道カテを留置されている患者の頻度と、リスク調整したCAUTI頻度を、2009年から2014年までの期間で評価した。
結果
尿道カテ留置頻度は、肺炎患者を除き有意に低減していた。CAUTI率は、全ての患者群で低減していたが、急性心筋梗塞患者および外科患者のみ有意な変化であり、その減少割合は年あたり、急性心筋梗塞患者で9.7%、外科患者で9.1%であった。
結論
2009年から2014年にかけて、今回調査した患者集団において尿道カテ留置頻度と調整CAUTI頻度が有意に低減していた。
監修者コメント
デバイス関連感染のデータベースといえば、CDCが運営する全米医療安全ネットワーク(NHSN)が有名である。しかしNHSNは、サーベイランスの判定基準を頻繁に変更しており、そのデータによって感染発生頻度の年次推移を評価することができない。また、2013年を最後に尿道カテ留置率のデータを公開しておらず、こちらの年次推移に関しても不明である。本研究はその点を補う意味で、アメリカの医療関連感染の発生状況に関する新たな知見を我々にもたらすものである。留置率に関しては肺炎患者で減少が見られなかったが、肺炎患者ではもともと留置率が低かった可能性もある。そして何よりも、感染率が経時的に低減していることは、アメリカのCAUTI対策が功を奏していることを示している。なお、この論文のCAUTIは医師の診断によるものであり、NHSNなどのサーベイランスと異なること、また、率はカテーテル使用日数あたりではなく、全患者中CAUTIを発症した患者の割合として示されていることに留意する必要がある。