背景
ICU患者における中心静脈カテーテル挿入部位の適切な選択により、カテ関連感染症の低減につながる。鎖骨下部位が最も適切な場所と考えられているが、ICU患者においてその部位の使用は一般的とは限らず、様々な研究において結果が一致していない。更に、鎖骨下部位が禁忌の際に選択すべき部位に関するデータも一致してない。
方法
鎖骨下・内頸・ソケイの3部位に関するカテ関連感染症やカテ保菌のリスクを比較検討した。文献検索を行い、無作為化比較試験と観察研究を抽出した。
結果
20の観察研究/無作為化比較試験が対象となった。メタ解析の結果、内頸部位はソケイ部位よりカテ関連血流感染のリスクが有意に低く(相対リスク0.55、95%信頼区間0.34~0.89)、鎖骨下部位よりソケイ部位は有意に高かった(2.44、1.25~4.75)。内頸部位は鎖骨下部位に対してリスクが高い傾向にあったが、有意差はなかった(1.16、0.57~2.35)。カテ保菌のリスクに関しては、内頸部位はソケイ部位に対してほぼ同等であった(0.89、0.71~1.12)。
結論
ICU患者においては、内頸または鎖骨下部位はソケイ部位に比べて有意にカテ関連血流感染のリスクを低減させる。しかし保菌をアウトカムとした場合、ソケイ部位の劣勢は絶対的ではなく、場所の選択に議論の余地がある。一方、鎖骨下部位は適切な場所であると思われるが、その優位性は絶対的ではなく、内頸部位もまた考慮すべきである。
監修者コメント
中心静脈カテーテル挿入部位による感染リスクの相違に関する研究では、評価一次項目がカテの保菌かカテ関連感染症かによって、その結果が異なって来る。さらに、カテーテル挿入期間(ソケイ部位が内頸部位に比べて短いなど)、また、研究間で患者の疾患背景の相違(がん患者や腎不全患者など)もみられ、リスク比較における多様性を考慮すると、容易に結論を引き出すことはできないと考えられる。CDCのカテーテル関連血流感染ガイドラインは、ソケイ部を避けつつも、様々な要因も考慮して最終的に挿入部位を選択すると述べており、本研究はまさにその通りの解析結果になっていると感じる。