背景
病院の床は頻繁に病原体で汚染されるが、そこが医療関連感染の発生源になりうるかどうかは知られていない。
方法
著者らは、非病原性のウイルス(バクテリオファージMS2)を床に播き、清掃も含めた通常の運用を伴う医療環境において3日間観察した。患者の手や部屋の高頻度接触面から同ウイルスが分離されるか否かを調査した。
結果
主な部位および時間経過ごとに、ウイルスが分離された検体数と総採取検体数、および総採取検体数に占めるウイルス分離検体数の割合をカッコ内にパーセントで示した。
結論
病院の部屋の床に播いた非病原性ウイルスは迅速に患者の手や病室内高頻度接触面に移動することが明らかになった。隣の部屋やスタッフステーションといった離れた所の高頻度接触面でも汚染が見られた。
監修者コメント
床は医療従事者が触らない環境表面であり、日常の清掃を実施していれば特別な感染対策上の考慮事項はない、と信じられてきた。本論文は、床に対する日常清掃を行っていても、高頻度接触面や患者エリアの外(スタッフステーション多数患者の共有する場所など)での感染の機会があり得ることを示唆する重要な論文である。近年、蒸気化過酸化水素や紫外線を用いる部屋の環境制御が話題になっているが、この論文によってその重要性が更に増してきていると言える。