背景
中心ライン関連血流感染(CLABSI)を戦略的に減少させるために、中心ラインの挿入時およびその後の管理時に遵守すべきいくつかの感染対策をまとめた「バンドル」が有効であるとされている。施設レベル、あるいは共同研究でその有効性は検証され、導入する施設も増えている。しかし、導入した施設での遵守状況やそれとCLABSIとの関連を検証した研究は無い。
方法
全米医療安全ネットワーク(NHSN)のサーベイランスに参加している施設を対象に研究への参加を呼びかけ、バンドルの5つの要素の遵守率を調査してもらった。各要素において、実施が必要な場面・機会の95%以上(=ほぼ常時)において実施されている場合、その要素について「遵守」とみなした。CLABSI発生状況はサーベイランスによってデータ収集されている。
結果
632施設の984箇所のICUの参加を得た。ICUのベッド数は平均14.0±8.3であった。ほとんどのICUにおいてバンドルが導入されていたが、5つの要素のうち1つも「遵守」していなかったICUが全体の31%を占める一方で、5つとも「遵守」していたICUが全体の20%を占めた。CLABSI率との関連でみると、「遵守」0個に対し、1個のICUは有意にCLABSI率が低く、2-4個はそれよりさらに低く、5個(全部)のICUは更に低かった。
結論
バンドルの5要素のうち1つでも常時実施するとCLABSI率が低下した。その効果は常時実施項目数が増えるとより顕著となり、5個とも常時実施するとCLABSI率が最低になった。アメリカのICUにおけるCLABSI率はまだまだ低減の余地がある。
監修者コメント
バンドルの5要素は、『挿入前の手指衛生、マキシマルバリアプリコーション、消毒にクロルヘキシジングルコン酸塩を使用、適切なカテ挿入部位の選択(ソケイ部を避けること)、ラインの必要性を毎日評価すること』である。バンドルは10年以上前に提唱された概念で、他にも尿路感染や手術部位感染対策などに対するバンドルが提唱されている。重要な数項目に絞って確実に実施することは、複雑な要因で発生する医療関連感染を手っ取り早くしかも確実に減少させる方策として、注目を集めている。