SARS-CoV-2の再感染のリスクは、人口統計学的特徴、ワクチン接種歴、曝露リスクに基づいて個々に異なり、また、これらは相互に関連している。しかし、再感染の臨床的影響はまだ完全には理解されていない。CDCが再感染についての分析結果を報告しているので紹介する1)。
調査
- 2021年9月5日から2022年12月31日までの期間に米国18の管轄区域[註1]から報告されたSARS-CoV-2の再感染者、全感染者、それに関連する入院と死亡の週ごとの人数を、「全体」「年齢層別」「SARS-CoVの変異株(デルタおよびオミクロン[BA.1、BA.2、BA.4/BA.5、BQ.1/BQ.1.1])の5つの期間別」に分析した。
- SARS-CoV-2 再感染は「同一人物の前回のCOVID-19(確定例または可能性例)から90日超を経過して採取された呼吸器検体に実施したSARS-CoV-2 RNA または抗原検査が陽性である」として定義された。
結果
[COVID-19症例の全感染者における再感染者の割合][図1-A]
- 再感染者は、2021年後半のデルタ期ではSARS-CoV-2感染者全体の2.7%を占めた。この割合は、オミクロンBA.1期では10.3%であったが、BA.2期では12.5%、BA.4/BA.5期では20.6%、BQ.1/BQ.1.1期では28.8%に増加した。
- SARS-CoV-2感染者全体のうちの再感染者の割合は18~49歳で最も高く、デルタ期では3.0%であったものが、オミクロンBQ.1/BQ.1.1期では34.4%に増加した。50~64歳では、全感染者に占める再感染者の割合は2.1%(デルタ期)から29.0%(オミクロンBQ.1/BQ1.1期)に増加し、65歳以上では再感染者が2.0%(デルタ期)から18.9%(オミクロンBQ.1/BQ.1.1期)に増加した。
[COVID-19関連入院の全感染者における再感染者の割合][図1-B][註2]
- COVID-19関連入院(および死亡)における再感染者の割合の増加は、COVID-19症例と同様であったが、その規模は縮小した。COVID-19関連入院(および死亡)における再感染者の割合は、デルタ期の1.9%(および1.2%)から、オミクロンBQ.1/BQ.1.1 期の17.0%(および12.3%)に大幅に増加した。
- COVID-19関連入院において、特に2022年後半は、高齢者と比較して18~49歳で再感染者が多かった。BQ.1/BQ.1.1期では、再感染者は18~49歳では入院の24.8%(死亡の20.2%)を占めた。これに比較すると、65歳以上では再感染者が入院の13.3%(死亡の11.6%)を占めていたに過ぎない。
[週ごとの再感染者の割合][図2]
- 17の管轄区[註釈3]では、週ごとの感染間隔(前回感染と再感染の間隔)の日数(中央値)は2021年9月の269日から、BA.1期の終わり近くの2022年2月中旬の411日のピークまで増加した。「再感染までの日数(中央値)」はBA.4/BA.5期の始まり頃の2022年6月中旬には335日まで大幅に減少し、BA.4/BA.5が優勢な残りの期間はそのレベル近くを維持した。
- 2022年12月31日までの週(BQ.1/BQ.1.1期)に、「再感染までの日数(中央値)」は367日に増加した。
- 2021年9月に再感染した人のうち、90.5%は祖先株が優勢だった時期に前回感染しており、9.5%はアルファ期に前回感染していた。2022年6月時点(BA.2からBA.4/BA.5への移行時)の「再感染までの日数(中央値)」の大幅な減少は、祖先株の時期に前回感染した人の割合が50%未満に減少したときに発生した。逆に、最近の変異株期(つまり、アルファ、デルタ、オミクロン)に前回感染した割合は50%超に増加した。
- 2022年末までのBQ.1/BQ.1.1期に、再感染者の51.3%がオミクロン期の初期に前回感染していたことが判明し(BA.1=37.6%、BA.2=7.0%、BA.4/BA.5=6.6%)、残りは祖先株(31.7%)、デルタ(15.0%)、アルファ(2.0%)が優勢だった期間に前回感染していた。
考察
- 感染力または免疫回避特性が強化された新しいオミクロン系統が出現するにつれて、また、最初の感染者の数が時間の経過とともに増加するにつれて、SARS-CoV-2再感染およびそれに関連する入院および死亡の症例が相対的な頻度で増加した。
- 週ごとの「再感染までの日数(中央値)」は269~411日の範囲であり、BA.4/BA.5期の始まりのころに急激な低下が観察された。これは再感染の 50%以上がアルファ期以降に前回感染した人で発生した。
- 2022年後半には、COVID-19症例における再感染とそれに伴う入院や死亡の割合が高齢者と比較して若年層で高かった。
- 若年層での割合が高いのは、初感染の累積発生率が高いこと、その後のワクチン接種の適格性、ワクチン接種率の低下、曝露リスクの増加、最初の感染がそれほど重篤ではないための生存バイアスなど、複数の要因に起因している可能性がある。
- 入院した人や死亡した人での再感染者の割合は、COVID-19症例に比べて低かった。このことは、前回感染によって誘発された免疫が、その後の感染に対してよりも重篤な結果に対して良好な防御を提供するというエビデンスと一致している。
[註1]
カリフォルニア、コロラド、コロンビア特別区、ジョージア、インディアナ、ケンタッキー、ルイジアナ、マサチューセッツ、ミネソタ、ネブラスカ、ニュージャージー、ニューヨーク、ニューヨーク市、ノースカロライナ、オレゴン、フィラデルフィア、テネシー、ワシントン
[註2]
図1-Bは入院のみのデータが示されている。死亡については原本では表で提示されている。
[註3]
註釈1の管轄区からテネシーを除く
文献
-
- Ma KC, et al. Trends in Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Reinfections and Associated Hospitalizations and Deaths Among Adults Aged ≥18 Years — 18 U.S. Jurisdictions, September 2021–December 2022
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/wr/pdfs/mm7225a3-H.pdf
- Ma KC, et al. Trends in Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Reinfections and Associated Hospitalizations and Deaths Among Adults Aged ≥18 Years — 18 U.S. Jurisdictions, September 2021–December 2022
矢野 邦夫
浜松市感染症対策調整監
浜松医療センター感染症管理特別顧問