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135号 ワクチン未接種者とワクチン接種者における COVID-19の発生と死亡について
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一価および二価ワクチンがCOVID-19の発生と死亡にどのような影響を与えてい るか興味のあるところである。CDCが詳細を報告しているので紹介する1)

はじめに

  • 2022年9月1日、CDCは最新(二価)のCOVID-19ワクチンのブースター接種を推奨した。これは12歳以上(その後、6カ月以上に拡大)の人において、以前のワクチン接種によって得られた防御の低下を回復し、新たな変異株に対する防御を拡大するのに役立つ。
  • オリジナル(一価)ワクチンと二価ワクチンのブースター接種の影響を評価するために、デルタ株およびオミクロン亜系統(BA.1、BA.2、前期BA.4/BA.5、後期BA.4/BA.5)が優勢な期間において、ブースター接種(一価もしくは二価ワクチン)および接種からの時間によって、12歳以上のワクチン未接種者とワクチン接種者を比較して、発生および死亡の率比(RR:rate ratio)を推定した。

結果

[症例数と死亡数]

  • 米国の24の管轄区域の12歳以上のうち、合計21,296,326件のCOVID-19症例(2021年10月3日から2022年12月24日まで)と115,078件のCOVID-19関連死亡(2021年10月3日から2022年12月3日まで)が報告された。

[発生率と死亡率]

  • 年齢調整された週平均の発生率と死亡率(12歳以上の人口10万人あたりの症例数と死亡数)は、オミクロン株BA.1期間(2021年12月19日~2022年3月19日)に大幅に増加したが、初期BA.4/BA.5期間(2022年6月26日~9月17日)にはそれほど増加しなかった (図1)。・すべての期間で、年齢調整された週平均の発生率と死亡率は、一価ワクチンのみのワクチン接種者よりも、ワクチン未接種者において一貫して高かった。そして、後期BA.4/BA.5期間(2022年9月18日~12月24日)の週平均発生率と死亡率は、二価ワクチンのブースター接種者で最も低かった。
  • ワクチン未接種者の全体的な死亡率は、二価ワクチン接種者の死亡率の14.1倍であった。そして、後期BA.4/BA.5期間における、一価ワクチンのみの接種者の死亡率は、二価ワクチン接種者の死亡率の2.6倍であった(図2)。
  • 高齢者では、ワクチン未接種者の死亡率は、二価ワクチンのブースター接種した人(65~79歳のRR=23.7、80歳以上のRR=10.3)または一価ワクチンのブースター接種した人(65~79歳のRR=8.3、80歳以上のRR=4.2)よりも有意に高かった。

図1. 年齢で調整された毎週のCOVID-19発生率およびCOVID-19関連死亡率、ワクチン接種状況および2価ワクチンのブースター接種別ー24の米国管轄区、2021年10月~2022年12月 図2.最新のCOVID-19ワクチンは生命を救う

[発生の率比](図3上)

  • 「ワクチン未接種者」と「2週間から2カ月前に一価ワクチンのブースター接種したワクチン接種者」の層別比較では、発生RRはデルタ株期間(RR=7.0)、BA.1期間(RR=3.4)、BA.2期間(RR=2.4)、前期BA.4/BA.5期間(RR=2.8)、後期BA.4/BA.5期間(RR=2.8)のように漸次低下していった。
  • 二価ワクチンのブースター接種の2週間~2カ月後の発生RR(RR=2.8)は、後期BA.4/BA.5期間での一価ワクチンのブースター接種の発生RR(RR=2.8)と同じであった。
  • 後期BA.4/BA.5期間のワクチン接種後3~5カ月での一価ワクチンのブースター接種(RR=2.0)と3カ月での二価ワクチンのブースター接種(RR=1.7)の両方で、発生RRの同様の減少が観察された。

[死亡の率比](図3下)

  • 「ワクチン未接種者」の「2週間から2カ月前に一価ワクチンのブースター接種された人」と比較した死亡RR は、デルタ期間のRR=50.7 からBA.1 期間のRR=21.4、BA.2期間のRR=7.9、初期BA.4/BA.5期間のRR=7.4に漸次減少した。
    これは粗ワクチン有効性(VE)が98%(デルタ期間)から87%(BA.4/BA.5期間)に減少したことを表す。
  • 前期BA.4/BA.5期間は一価ワクチンのブースター接種から6~8カ月(RR=4.6)、9~11カ月(RR=4.5)、12カ月(RR=2.5)のように死亡RRの低下が観察された。対照的に、2週間から2カ月前に接種した二価ワクチンのブースター接種は後期BA.4/BA.5期間は死亡に対して防御を改善した(RR=15.2)。

図3. ブースター接種者と比較したワクチン未接種者における年齢調整された週平均の症例および死亡の率比(95%信頼区間)、変異株期間および最後のブースター接種からの時間別ー23の米国管轄区域、2021年10月-2022年12月

まとめ

  • 後期BA.4/BA.5期間においては、ワクチン未接種者は、二価ワクチン接種者に比較してCOVID-19 の死亡率と発生率が高く(死亡RR=14.1および発生RR=2.8)、一価ワクチンのみの接種者との比較では、程度は少なくなるものの、やはり死亡率と発生率が高かった(死亡RR=5.4および発生RR=2.5)。
  • ワクチン未接種者に比べて、二価ワクチンのブースター接種者は、一価ワクチン接種または一価ワクチンのブースターよりも死亡に対する追加の保護を提供した。
  • COVID-19 の重篤なアウトカムに対する新たな変異株のワクチン有効性への影響を継続的に監視する必要がある。
  • 重症COVID-19に対する最善の防御のために、すべての人は、推奨されるCOVID-19ワクチン接種を最新の状態(接種資格者への二価ワクチンのブースター接種を含む)に保つ必要がある。

 

[註釈]
変異株の優勢期間
 ・デルタ株(2021年10月3日~12月18日)
 ・オミクロン株BA.1(2021年12月19日~2022年3月19日)
 ・オミクロン株BA.2(2022年3月20日~6月25日)
 ・前期BA.4/BA.5(2022年6月26日~9月17日)
 ・後期BA.4/BA.5(2022年9月18日~12月24日)

 

文献

  1. Johnson AG, et al. COVID-19 Incidence and Mortality Among Unvaccinated and Vaccinated Persons Aged 12 Years by Receipt of Bivalent Booster Doses and Time Since Vaccination ̶ 24 U.S. Jurisdictions,October 3, 2021‒December 24, 2022
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/wr/pdfs/mm7206a3-H.pdf

矢野 邦夫

浜松市感染症対策調整監
浜松医療センター感染症管理特別顧問