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124号 オミクロン株の世帯内感染について
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オミクロン株は世帯内感染を頻繁に引き起こしている。CDCが、2021年11月から2022年2月までのオミクロン株の世帯内感染について調査しているので紹介する1 )

調査

[調査に参加する世帯の適格性]

  • 2021年11月から2022年2月までの期間に、シークエンスで確認されたオミクロン株の感染者が、米国の4つの管轄区域(イリノイ州シカゴ、コネチカット州、ウィスコンシン州ミルウォーキー及びユタ州)で特定され、調査に参加する世帯の適格性を評価するために電話で連絡した。
  • 発端患者が密集環境に住んでおらず、発端日(発端患者のSARS-CoV-2核酸増幅検査または抗原検査の結果が陽性となった日、もしくは、発症日のどちらか早い方)の2日前から10日後として定義される感染性期間の殆どで、少なくとも1人以上とともに生活していれば、その世帯は適格とした。

[定義]

  • 発端患者は「COVID-19に一致する症状を最近経験した各世帯内での最初の人」または「SARS-CoV-2検査結果が陽性となった各世帯内での最初の人」として定義された。
  • 世帯内接触者は「感染性期間に発端患者と一緒に1泊以上住居で過ごした人」と定義された。
  • 世帯内接触者の確定例は「発端日から14日以内に、SARS-CoV-2核酸増幅検査結果または抗原検査結果が陽性の人」として定義された。
  • 世帯内接触の可能性例は「発端日から14日以内に、COVID-19に一致した症状はみられたが、SARS-CoV-2検査による確認はなされていない人」として定義された。
  • 予防接種の状況は「ブースター接種を受けた」「ワクチン完全接種された(発端日の5か月未満または5か月以上前)」「ワクチン部分接種された」「ワクチン接種されていない」として分類された。

[調査法]

  • 発端患者と世帯内接触者は、任意の電話インタビューに参加し、人口統計学的特徴、SARS-CoV-2検査、症状、COVID-19ワクチン接種歴、SARS-CoV-2感染歴、発端患者の隔離(常時または感染の可能性のある期間中の任意の時点で、室内に自己隔離すると定義される)、発端患者のマスクの着用(感染性期間に自宅でマスクを着用することと定義される)についての情報が収集された。

結果

  • 合計3,558人が調査への参加資格があると見なされ、その中の1,461人(41.1%)に連絡が試みられた。連絡に成功した562世帯のうち、175世帯(31.1%)が参加を辞退し、204世帯(36.3%)が除外された。そして、183世帯(32.6%)が登録された。登録された世帯には183人の発端患者と439人の世帯内接触者が含まれた。
  • 発端日は、2021年11月21日から2022年2月3日までの期間に発生した。発端患者のうち、172人(94.0%)がSARS-CoV-2検査結果が陽性(COVID-19確定例)であり、11人(6.0%)がCOVID-19と一致した症状を示したが、SARS-CoV-2検査の確認がなかった(COVID可能性例)。
  • 439人の世帯内接触者のうち、227人(51.7%)で症例が特定され、そのうち178人(40.5%)が確定例、49人(11.2%)が可能性例であった。残りの世帯内接触者のうち、204人(46.5%)が非COVID-19患者に分類され、8人(1.8%)が不明に分類された。
  • 発端患者の発症日と世帯内接触者の発症日の間隔の中央値は4日(IQR = 2~7日)であった[図1]。
  • SARS-CoV-2感染の有無が判明している人のうち、発端患者181人中11人(6.1%)、COVID-19の確定例もしくは可能性例の世帯内接触者192人中9人(4.7%)にSARS-CoV-2感染の既往があった。

 

図1.発端患者の発症日と世帯内接触者の発症日の間隔*̶ 2021年11月から2022年2月までの米国の4つの管轄区域

 

[世帯内接触者の特徴と発病率]

  • ウイルス伝播は世帯の67.8%(183世帯中124世帯)で発生し、世帯内接触者の全体的な発病率は52.7%(431人中227人)であった[図2]。同様の発病率は、世帯内接触者おいて年齢層を超えて観察され、それには0~4歳(51.2%、41人中21人)が含まれた。
  • 発病率は、ブースター接種を受けた人(47.8%、113人中54人)または発端日の前5か月以内にワクチン完全接種された人(50.0%、28人中14人)で最低であった。
  • SARS-CoV-2感染既往のある世帯内接触者の発病率は40.9%(22人中9人)であったが、感染既往のない世帯内接触者の発病率は59.8%(306人中183人)であった(p値= 0.08)。

図2.症例の状況が判明している世帯内接触者(N=431)におけるSARS-CoV-2感染の発病率、世帯内接触者の特徴別、発端患者の特徴と感染対策別、接種状況の組み合わせ別-米国の4つの管轄区域、2021年11月~2022年2月

 

[発端患者の特徴/感染対策と発病率]

  • 発端患者が5~11歳の場合に、世帯内接触者の発病率は最低(47.5%: 40人中19人)であり、発端患者が0~4歳の場合に最高(72.0%: 25人中18人)であった。
  • 431人の世帯内接触者のうち、227人がCOVID-19症例に分類された(発病率=52.7%)。「ブースター接種済の発端患者」「過去5か月以内に一次接種シリーズを完了したワクチン完全接種の発端患者」「ワクチン未接種の発端患者」の世帯内接触者の発病率はそれぞれ、42.7%(110人中47人)、43.6%(39人中17人)、63.9%(108人中69人)であった。
  • 「隔離しなかった発端患者(67.5%、166人中112人)」よりも、「隔離した発端患者(41.2%、240人中99人)」の方が世帯内接触者の発病率が低かった(p値<0.01)。
  • 感染性期間に「自宅でマスクを着用したことのある発端患者の世帯内接触者(39.5%、223人中88人)」の方が、「自宅でマスクを着用したことがない発端患者の接触者(68.9%180人中124人)」よりも、発病率は低かった(p値<0.01)。

討論

  • オミクロン株は世帯内接触者で高い発病率を示し、特にワクチン接種を受けていない発端患者、または予防措置を実施しない発端患者(自宅で隔離またはマスクを着用したことがない)と一緒に住んでいた世帯内接触者で高い発病率をもたらした。
  • 発病率は、全年齢層の世帯内接触者および発端患者で一貫して高く、これには0~4歳が含まれた。この年齢層は現在ワクチンの接種資格がなく、隔離やマスク着用などの予防戦略を実施するのが困難または非現実的な集団である。
  • これらの調査結果は、SARS-CoV-2の世帯内感染に対する幼児の潜在的な寄与、およびSARS-CoV-2が世帯内に入り込んだ場合の感染に対する彼らの継続的な感受性を強調している。

文献

  1. Baker JM, et al. SARS-CoV-2 B.1.1.529 (Omicron) Variant Transmission Within Households ̶ Four U.S. Jurisdictions, November 2021‒February 2022
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/pdfs/mm7109e1-H.pdf

矢野 邦夫

浜松市感染症対策調整監
浜松医療センター感染症管理特別顧問