現在、日本においてもCOVID-19ワクチンが始まり、医療従事者から接種が開始されることとなった。このワクチンの接種開始が早かったイスラエルからの報告がCDC週報(MMWR)に記載されているので紹介する1)。
COVID-19ワクチンは世界的大流行を緩和する機会を与える。集中的な予防接種キャンペーンによって高い予防接種率を達成することは、COVID-19関連の罹患率と死亡率を大幅に減らす可能性がある。既に、臨床試験では軽症および重症のCOVID-19を予防するCOVID-19ワクチンの有効性が実証されている。しかし、臨床試験は、現実世界でのワクチン接種の人々への影響を評価するために設計されていない。そのため、人口レベルでの重症COVID-19の発生に対するCOVID-19ワクチン接種の影響を評価するために生態学的研究を実施した。
接種
- 2020年12月、イスラエルはPfizer-BioNTechワクチンを使用して全国的な予防接種キャンペーンを開始し、60歳を超える人、医療従事者、および基礎疾患のある人を優先して接種した。2021年2月の時点の2回接種率は70歳以上、60-69歳、50-59歳、50歳未満はそれぞれ、84.3%,69.0%,50.2%,9.9%であった(図1)。
- 重症のCOVID-19の代替として、人工呼吸器を必要とする患者が使用された。そして、人工呼吸器を必要とする70歳以上(2回のワクチン接種率が最も高い、84.3%)のCOVID-19の患者数が50歳未満(2回のワクチン接種率が最も低い、9.9%)と比較された。
結果
- 2020年10月2日~2021年2月9日の期間に、人工呼吸器を必要とした50歳未満および70歳以上のCOVID-19患者数(中央値)は15人(範囲=6-63)および84人(範囲=45-127)であった(図2)。
- 2021年1月の最後の週では、70歳以上の人工呼吸器患者の一日平均数は減少し始めていたが、50歳未満の人工呼吸器患者の一日平均数はまだ増加していた(図2)。
- COVID-19ワクチンの2回接種のキャンペーンが実施されて以降、人工呼吸器を必要とする70歳以上の患者を50歳未満の患者に比較すると、7日間の移動平均数は2020年10~12月の「5.8:1」から、2021年2月の「1.9:1」まで67%減少した(図2)。
討論
- これらの調査結果は、イスラエルでの全国的なCOVID-19ワクチン接種キャンペーンによって、人工呼吸器を必要とする重症のCOVID-19が減少したことを示唆している。
- 2020年10~12月の期間は、70歳以上の人工呼吸器を必要とするCOVID-19患者の割合は変動したが、高齢者を優先とした接種キャンペーンの実施後は一貫して減少した。
- 人工呼吸器を必要とする70歳以上の50歳未満に対する割合の低下は2回目接種の開始時点(2021年1月10日)から始まった。これは、初回接種の効果を反映している可能性があり、初回接種後に部分的な有効性を示したPfizer-BioNTechワクチンのフェーズ3の結果と一致する観察結果である。
- Pfizer-BioNTechワクチンの接種後の人工呼吸器の必要性によって明らかにされたように、この研究は重症のCOVID-19のリスクの減少に関する予備的な証拠を人口レベルで提供している。
- これらのデータは、ワクチン接種を受けていない人と比較して、ワクチン接種を受けた人のCOVID-19症例と重症例の減少、およびワクチン接種された人のウイルス量の減少を示す報告と一致している。すなわち、ワクチン接種後の重症COVID-19の発生率の低下を示唆している。
結論
この研究結果は、イスラエルの全国レベルでのCOVID-19の重症例の予防におけるワクチンの有効性の重要な証拠を提供した。COVID-19ワクチンはCOVID-19の蔓延を抑え、重症例の発生を減らす可能性がある。
文献
- Rinot E, et al. Reduction in COVID-19 patients requiring mechanical ventilation gollowing implementation of a national COVID-19 vaccination program̶ Israel, December 2020‒February 2021
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7009e3-H.pdf
矢野 邦夫
浜松医療センター院長補佐
兼 感染症内科部長
兼 衛生管理室長