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109号 子どもと青年のCOVID-19の要因
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2020年12月14日の時点で、米国で報告されたCOVID-19患者の10.2%が18歳未満の子どもと青年であった。子どもと青年のCOVID-19に関して、学校、地域社会、濃厚接触者への曝露を評価することを目的として、「RT-PCR検査にてSARS-CoV-2感染が確認された18歳未満の子どもおよび青年(症例患者)」と「RT-PCR検査が陰性の18歳未満の子どもおよび青年(対照参加者)」の親または保護者によって報告された曝露を比較するために症例対照研究が実施された1)。これによって、子どもや青年がCOVID-19に罹患する要因がみえてきた。[図1]
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研究

  • この調査には、2020年9月1日から11月5日までに、外来患者の検査医療センター(ドライブスルー検査を含む)またはミシシッピー大学病院に関連する救急部門において、鼻咽頭拭い液のRT-PCR検査を受けた18歳未満の子どもおよび青年が含まれた。そのうち、53%は症状がみられたために検査された。
  • COVID-19は、SARS-CoV-2のRT-PCR検査の結果が陽性であることによって診断された。
  • 研究対象として適格な子ども896人(SARS-CoV-2検査の陽性者290人および陰性者606人)が特定され、SARS-CoV-2検査の平均32日後に電話インタビューが行われた。そのうち、494人の親または保護者は連絡できないか、回答を拒否した。5人がCOVID-19で入院したため除外された。その結果、154人の症例患者(SARS-CoV-2検査結果が陽性)および243人の対照参加者(SARS-CoV-2検査結果が陰性)を含む397人の参加者が残った
  • 397人の参加者のうち、82人(21%)は4歳未満、214人(54%)は女性、217人(55%)は非ヒスパニック系黒人、145人(37%)は非ヒスパニック系白人であった。

学校・保育園での曝露[図2]

  • 調査された397人の子どもと青年のうち、SARS-CoV-2検査前の14日以内に学校または保育園で対面出席したのは症例患者の62%および対照参加者の68%であり、出席したことはSARS-CoV-2感染には関連しなかった(調整オッズ比 [aOR:adjusted odds ratio]=0.8、95%信頼区間[CI]=0.5‒1.3)。
  • SARS-CoV-2検査前の14日以内に保育園や学校に出席した2歳以上の子ども236人のうち、症例患者の64%および対照参加者の76%の親が「自分の子どもと全てのスタッフが施設内ではマスクを着用していた」と報告した(aOR=0.4、95%CI=0.2‒0.8)。
  • SARS-CoV-2検査前の14日間に学校や保育園に対面出席しても、SARS-CoV-2検査結果が陽性になる可能性は高くなかった。

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濃厚接触・社会活動・来訪者・家庭での曝露

  • SARS-CoV-2検査前の14日以内は、症例患者は対照参加者に比較して、「COVID-19患者と濃厚接触した(aOR=3.2、95%CI=2.0‒5.0)」「家族外の人々との集まり(他の子どもたちとの社会活動(aOR=2.4、95%CI=1.1‒5.5)を含む)に参加した」「自宅に来訪者が来た(aOR=1.9、95%CI=1.2‒2.9)」がみられる傾向にあった。
  • 症例患者は、対照参加者よりもCOVID-19患者との濃厚接触が多かった(aOR=3.2、95%CI=2.0‒5.0)。
  • 症例患者の濃厚接触者の64%と対照参加者の濃厚接触者の48%は家族であった(p=0.02)。一方、学校または保育園の同級生はそれぞれ15%と27%で濃厚接触者として報告された(p=0.04)。
  • 社会的集まりに参加した子どもの親の27%は「参加者すべてがマスクを着用していた」と報告しており、親の46%は「社会的距離が確保されていた」と報告した。一方、「訪問者が家にいるときにマスクを着用していた」「社会的距離が確保されていた」と報告したのは、それぞれ16%と39%であった。
  • 症例患者は対照参加者に比較して、COVID-19患者は家族である可能性が高く、学校や保育園の同級生である可能性が低かった。
  • ほとんどの濃厚接触者の曝露は家族からのものであり、SARS-CoV-2の家庭内感染によるものであった。SARS-CoV-2検査の結果が陰性の子ども(42%)では、COVID-19患者との濃厚接触を報告した人は少なかった。

感染対策

  • SARS-CoV-2の蔓延を遅らせるために、COVID-19患者に曝露した人は、マスクを着用し、社会的距離を維持し、頻繁に手を洗うという推奨事項に加えて、外出を自粛する必要がある。
  • 家族や他の濃厚接触者が病気ならば、マスクを着用し、食事や器具の共有を減らし、家を掃除/消毒するなど、追加の予防策を実施する。
  • 家族の集まりやグループ活動など、人々がマスクを着用したり、社会的距離を維持することが難しい活動は、子どもや青年がSARS-CoV-2に感染する重要な危険因子である。

文献

  1. Hobbs CV, et al. Factors associated with positive SARS-CoV-2 test results in outpatient health facilities and emergency departments among children and adolescents aged <18 Years - Mississippi, September‒November 2020
    https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/pdfs/mm6950e3-H.pdf

矢野 邦夫

浜松医療センター院長補佐
兼 感染症内科部長
兼 衛生管理室長